ホーム > グルメ > 『SIGNATURE 今月の一皿』 No.96 一粒で二度おいしい

ダイナースクラブ会員様にお送りしている会員誌「SIGNATURE」より、選りすぐりの一品をご紹介します

WEB限定 今月のもう一皿

東京・日本橋の水天宮駅の近くに面白い店がある。

なんと寿司と天ぷらを両方楽しめる店だ。というと、なんだか食堂みたいだが、同じ空間にそれぞれに本格的なカウンターがある新しい感覚の不思議な店だ。

シンプルな入り口から地下に階段を下りていくと、お洒落なバーに行くような錯覚に陥る。まず目の前に飛び込んでくるのは白木の寿司カウンターだ。そしてその奥に進むと今度は天ぷらのカウンターが広がる。このありそうでなかった豪華な組み合わせについて、先代のご主人・瀬高明雄さんに伺うと、「もともと寿司屋だったんですが、本郷からここに移転した時、『山の上ホテル』の天ぷら処で腕をふるったことのある従業員の希望があり、現・主人の息子と話して同じ場所で両方を食べてもらおうと決めたんですよ!」と教えてくれた。

この『あき』は天ぷらカウンターで天ぷらを、寿司カウンターで寿司をいただくのではつまらない。寿司カウンターで寿司を食べつつ天ぷらを注文したり、またはその逆を楽しむのが王道だ。ということで、この日は天ぷらカウンターに陣取ってみた。海老、雲丹、アスパラ、玉ねぎとお好みでいただく。胡麻油100%で中心まで火が通りながらもジューシーな揚げ方は素材の味を十分に楽しむことができる。旬の野菜のくわいは塩で食べるのがおすすめ。天ぷらにすることで引き出される甘みが、くわい本来のほんのりとした苦みと混じり合い、口の中で広がる。

先代に「ちょっとお寿司でもいかがですか?」と絶妙のタイミングで気さくに話しかけられる。ここからは現・ご主人の伸光さんの出番だ。おつまみでカワハギの肝あえを食べた後、旬の鯖と鯛を握ってもらう。天ぷらの後の酢飯は、食がすすむ。そして最後は大間のマグロの鉄火巻だ。「シンプルだけど最も贅沢な食べ方です」とご主人。天ぷらから寿司へ、そして最後は天バラでしめた。いいとこ取りのこんなお店も、たまにはいいものである。

写真・瀧岡健太郎 文・下谷友康

すし 天ぷら あき

夜のおすすめは、あきコースのいちばん(8,000円)、にばん(10,000円)、さんばん(12,000円)。いずれもてんぷらとにぎり寿司が含まれている。寿司と天ぷらのカウンター席のほか、個室も3室あり。有名になる前に知人を介して入手したという平山郁夫画伯の絵は、一見の価値あり。

※価格はすべて税抜です。

住所 東京都中央区日本橋人形町2-1-9 B1F
電話 03-3662-5555
営業時間 昼11:30~13:30(L.O.)、夜17:00~21:30(L.O.)
定休日 日曜・祝日無休

WEB限定 今月のもう一皿
天丼

ご飯がまったく見えない。天丼は、お店によっていろいろなスタイルがあるようだが、ここ『あき』の天丼(3,500円)は、たくさんの天ぷらがこんな風にぎっしりと、賑やかに盛りつけられている。でも器は小ぶりなので、寿司をたくさんいただいてからでも案外食べられてしまうだろう。そして、天ぷらにかける天つゆは、ちょっと濃いめ。出汁のよくきいたこの天つゆが、幸か不幸かまた食欲を増進させてくれるのだ。
『あき』は、水天宮に移転する前は、水道橋で寿司屋として長らく営業をしていた。水道橋という場所がら、野球選手、それももちろん巨人の選手が多く訪れたという。先代のご主人・瀬高昭雄さんのきさくな人柄も手伝って、きっととても賑やかなお店だったのではないかと想像できる。移転した今でも、時々著名人が訪れるそうで、シーズンオフを利用して帰国した日本人大リーガーも、つい先日訪れたのだとか。
寿司と天ぷらは、日本人にとってなくてはならない日本の味の象徴。その両者が一級の腕をもつ職人によって供されるここ『あき』は、一流の大リーガーをも満足させる、とっておきのお店なのだ。

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