ホーム > グルメ > 『SIGNATURE 今月の一皿』 No.65 オーダーメイドのレトロな酒場

ダイナースクラブ会員様にお送りしている会員誌「SIGNATURE」より、選りすぐりの一品をご紹介します

WEB限定 今月のもう一皿

昭和初期に建てられたという古い民家に「1と8」という小さな看板。
知る人ぞ知るこの穴場は、客の願いをあれこれと叶えてくれるオーダーメイドの酒場だ。

東京・月島で待ち合わせ、商店街から裏通りに入る。絶対に一人では辿り着けない路地を進み、古い民家の引き戸を開けると鮮やかな真っ赤なカウンターに目が眩む。月島といえば「もんじゃ焼き」だが、「1と8」は超がつくほど異次元な空間だ。戸惑いながらカウンターに座ると、店長の勘川さんが笑顔で迎えてくれる。

メニューはあって無いようなものがここの特徴だ。好きなものを好きなだけ、好きな調理方法でオーダーするのが通。カウンターに並ぶ大皿から2~3品、おばん菜を選んでつまみながら、季節の野菜の茄子は焼いて、舞茸はソテーで頼む。また、その間に今日のオススメの大間のマグロを3枚としめ鯖を2枚お願いする。ちょっと少ない気もするが、色々食べたい時はこのくらいがちょうどいい。

そしてここで絶対に食べるのが「玉ねぎステーキ」。淡路島産の玉ねぎはなによりも甘みがある。分厚く贅沢に切った玉ねぎは、時間をかけてゆっくりと焼かれる。ジューシーなその味は、奥が深く何回食べても飽きがこない。勘川さんにレシピを教えてもらったが、家では絶対に再現できない味だ。小さな店だから隣のオーダーも気になってしようがない。ついつい「あ、僕も同じものをください」と言ってしまう。それがオムライスや焼飯だったりするとなんだかホッとしている自分がまた嬉しい。

カウンターの背中越しには急な階段があり、秘密の2階席に通じているのだが、この続きはデジタルシグネチャーで。ディープな月島をぜひ楽しんでほしい。

写真・岡村昌宏 文・下谷友康

1と8Ichi to hachi

メニューはその日の仕入れによって変わるが、初めて訪れるならばお任せコース6,000円がおすすめだ。予算に応じてフレキシブルに用意してくれるので、2回目以降は勘川さんに色々と相談してみるのが楽しいだろう。焼酎は1杯1000円~。日本酒は1杯7000円~。カウンター8席、4人掛けテーブル1卓のみなので、予約を入れてから訪問したい。

※この記事に掲載の金額は取材当時の消費税率込の料金です。

住所 東京都中央区月島3-8-8
電話 03-3536-1815
営業時間 17:00~23:30(L.O.)
定休日 日曜・祝日

WEB限定 今月のもう一皿
二階の隠れ家

「もう一皿」、というには語弊があるだろう。なぜならば今回ご紹介するのは、「料理」ではなくて、「空間」なのだから。本編最後でほのめかしたように、カウンター席の後ろには小さな階段があって、二階へと続いている。

上がっていくと、なんとそこには怪しげなライトに包まれたバーが登場する。棚にはシャンパンやワイン用のグラスが並べられ、けっして大きくはないがちゃんとワインセラーもある。スピリッツ系のお酒のボトルなんかも並んでいる。階下の純和風の酒場から一変、西麻布や広尾界隈で飲んでいるかのような錯覚に一瞬陥ってしまう(ワイワイと賑やかな声が下から聞こえてくるのは別にして……)。

オーナーの趣味なのだろうが、これはちょっと粋な計らいだ。月島という土地柄、食事の後で飲みなおしたくても、ちょうどよいバーがなかなか見つからない。そんな折、場所を一階から二階へと移すだけで、気分も、飲むお酒もあっという間にチェンジできるのだから。帰宅前にあと一杯シャンパンが飲みたい、なんてことはよくあるものだ。ということで、今号の「今月のもう一皿」は、この「バー空間」とさせていただいた。

最後に一つだけ。お酒が入りすぎた時は、ちょっとお気をつけ願いたい。幅の狭い急な階段で足を取られると、かなり厄介だから。
※この記事に掲載の金額は取材当時の消費税率込の料金です。

バックナンバー

※内容は全て掲載時のものです。その後、変更されていることもございますので、あらかじめご了承ください。

最新号はこちら