ホーム > グルメ > 『SIGNATURE 今月の一皿』 No.66 黄金炒飯の秘密

ダイナースクラブ会員様にお送りしている会員誌「SIGNATURE」より、選りすぐりの一品をご紹介します

WEB限定 今月のもう一皿

蒸す・揚げる・煮込む・炒める――。
中華の基本の調理法でバランスよく仕立てられた『春秋』のコース。
その締めに登場するのはごくシンプルな炒飯。でもその中身は?

東京・広尾の中国料理『春秋』。初めて来店したときから、オーナーシェフ夫妻にとても親しく話しかけていただき、2回目からは勝手に常連になってしまった(笑)。間違いなく最高の料理とオーナー家族の最高の笑顔で、夜のひと時を〝喜びの時空〟へと導いてくれる店だ。

中国料理は上海、北京、四川、山東、広東など地域によって大きく異なるが、『春秋』の料理は伝統的な上海料理をベースにしながら新中華料理(ヌーベル・シノワ)の枠を超え、いまや宮内シェフが作り出す「宮内ワールド」といえよう。お任せコース1本のみだが、何度来てもなぜか飽きない。その秘密は季節ごとに最高の素材を惜しみなく、そしてさりげなくアレンジしているからだと思う。宮内シェフ曰く「メニューは最初の頃はあったけど、お客様の注文を聞きながら『蒸す・揚げる・煮込む・炒める』と、バランスを大切にして料理を出しているうちに自然にお任せになったなぁ」とのことだ。

さて、迷った揚げ句、「今月の一皿」に選んだのはコースの最後を飾るシェフ渾身&マダム推薦の「炒飯」。満足で胃も心も満杯だけど、「ぜひ!」とのマダムの一言で必ず食べるこの料理、なぜかすっと食べてしまう。その秘密はネギ。自家製の特製ネギ油と岩塩で同量のご飯と長ネギを炒めている。だから満腹なのについついお代わりしてしまう、恐るべき締めの一品なのである。もちろん前菜もすごい。特筆すべきは半熟の「ピータン」。通常の半分の熟成期間で仕上げることで独特の深みを味わえる。ピータンの概念を覆すこと間違いなし。見た目は春巻きの「牡蠣の湯葉揚げ」はオリジナル料理。叩いてトロトロになった牡蠣と湯葉の新しい組み合わせも素晴らしい。

まだまだ書ききれない料理は、包丁ドアノブを開けて自ら体験してほしい。きっと満足と喜びがマダムの笑顔と一緒に待っているはずだ。

写真・有光浩治 文・下谷友康

春秋Shun Ju

この地に店を構えて25年。『春秋』は多くのファンに支持され続けている。ドアノブがわりの包丁は、店をリニューアルした際に役目を終えたシェフの包丁を使ったのだとか。15,000円のコースだけだが、希望にはきめ細かく応えてくれるので、予約の際に相談することをお薦めしたい。

※この記事に掲載の金額は取材当時の消費税率込の料金です。

住所 東京都港区南青山7-14-5
電話 03-3407-4683
営業時間 18:00~21:30(L.O.)
定休日 日曜日
備考 完全予約制

WEB限定 今月のもう一皿
杏仁豆腐

『春秋』のコースは、8品前後で構成されている。お客の好みやその日の仕入れ状況によって品数が変わるが、くだんのチャーハンを食べ終わると、いつもお腹ははち切れそうになっている。「もうだめだ、何も入らない」と、降伏寸前になったところにトリとして出てくるのがデザート、杏仁豆腐だ。

器の中を見ると、やさしげな姿の杏仁豆腐がシロップの中に浮かんでいる。杏仁の甘い香りに誘われてスプーンを入れてみると、適度な硬さが保たれているのに驚く。そっと口に運ぶ。と、とたんにほろっと溶けてなくなってしまった――。三温糖のあっさりとした甘味がここちよく口中に残る。

アンズの種の中の白い部分を取り出して、一日乾燥。それを水につけて、ミキサーにかけて、搾って、生クリームと交ぜて……。人工の香料は一切なしの純粋な杏仁豆腐。そのやさしい味わいに、シロップまでぐびぐびと飲んでしまって、さらにお代わりを所望される男性客も多いのだとか。
※この記事に掲載の金額は取材当時の消費税率込の料金です。

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