ホーム > グルメ > 『SIGNATURE 今月の一皿』 No.67 一味違う、『野じま』のマグロ

ダイナースクラブ会員様にお送りしている会員誌「SIGNATURE」より、選りすぐりの一品をご紹介します

WEB限定 今月のもう一皿

西麻布でこだわりの寿司を握り続けてきた職人が、昨年6月、満を持して銀座へ進出。
自らの舌を信じて探し求めたネタを、伝統の街で披露している

かつてこの連載で紹介した、和フレンチの『銀座Miyagawa』で食事した後、エレベーターを降りると、地下へと続く階段の先が今夜は明るい。なんだか宝物でも探すかのように先に進むと、新しいお店に出会った。店内に入るときりっとした空気と白木のカウンター、そう、そこはお寿司屋さんであった。ご主人の野島さんは西麻布で立派な店を構えていたが、昨年6月に銀座に移転。6席だけのまるでプライベートなお店を奥様と始めたのだ。

そんな『野じま』の一押しが「マグロ」。マグロといえば大間が有名だが、『野じま』の「マグロ」は大間を凌ぐ美味しさだ。ご主人曰く、マグロが食べる餌の違いで味が変わるそうだ。確かに旨み、酸味ともに完璧だ。特に大トロ独特のサシがしつこくなく肉質が上品でしまりがある。大トロを一度に2貫食べるのは久しぶりだ。この日のマグロは岩手県久慈から届いた100キロ未満のマグロ。定置網で獲れるこのサイズのマグロが、美味しさの秘密らしい。もちろん、中トロや赤身も抜群に美しく、そして美味しい。相方のシャリは、赤酢2種類のブレンドでとてもまろやかに感じる。聞くと西麻布時代はもっとシャープだったそうで、「銀座に合わせてシャリも進化した」とのこと。確かにネタとよく合う。

僕にとっては、大事な大事なおつまみも豊富だ。「自家製カラスミ」はお餅で挟む。なんとも不思議な組み合わせだが、癖になる味だ。鮑の酒蒸しも豪快で繊細。冬季限定の茶碗蒸しは豊後水道の鯛で出汁をとり、上にはたっぷりの餡とウニがかかっている。壁にかけてある某有名写真家の縁起のいい、奇跡の写真をながめながら、黒龍限定の日本酒で、冬の夜をゆっくりと楽しみたい。

写真・有光浩治 文・下谷友康

野じまNojima

品書きは「おまかせコース」21,000円(税込)のみ。写真の茶碗蒸しをはじめ、お刺身などのおつまみ6品とにぎり12貫が含まれている(内容は季節やその日の仕入れによって異なる)。11月から出まわるという黒龍の大吟醸「しずく」や「八十八」は、グラスで2,100円。カウンター6席のみなので必ず事前に予約を。

※この記事に掲載の金額は取材当時の消費税率込の料金です。

住所 東京都中央区銀座7-3-16 東五ビルB1
電話 03-6280-6703
営業時間 17:00~24:00(L.O.)
定休日 日曜・祝日
備考 要予約

WEB限定 今月のもう一皿
昆布森海域で獲れた、牡蛎のお吸い物

野島さんの食材へのこだわりは、マグロだけではない。それは、「今月のもう一皿」としておすすめする、お吸い物の牡蛎にも表れている。シンプルな昆布だしのおつゆに入っている大粒の牡蛎は、北海道は釧路町、厚岸湾の先端にある仙鳳址(せんぽうし)から直送されたもの。昆布の産地として有名でもある「昆布森海域」で獲れる牡蛎は、潮の流れが強いため、身が引き締まって大振りだ。

まずはおつゆをそっと飲む。見た目通りの上品なお味だ。そして、牡蛎を口に運んでそっと噛む。プリッとした歯ごたえを感じたその途端、この上なく濃厚な甘みが口の中をあっという間に占拠する。プリプリ感と甘さとの強烈な対比!この牡蛎が育った海は、さぞかし栄養が豊富なのだろう。今まで体験したこともないような見事な味の牡蛎だ。

マグロといい、牡蛎といい、野島さんは、本当に自らの舌だけを信じて食材を探している。それは決して有名な産地からのものばかりではない。でも野島さんの味覚にあう人は、店にいながらにして各地の良品をご相伴に預かれる――。この幸福感は、なかなか忘れられそうもない。
※この記事に掲載の金額は取材当時の消費税率込の料金です。

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