ホーム > グルメ > 『SIGNATURE 今月の一皿』 No.68 春を探して

ダイナースクラブ会員様にお送りしている会員誌「SIGNATURE」より、選りすぐりの一品をご紹介します

WEB限定 今月のもう一皿

料理の醍醐味は、お客様との一期一会を楽しむこと」と、静かに語るご主人。
春はもうすぐそこまで来ている。旬の筍をいただきに、『喜作』へと出かけよう。

名店との出合いは、偶然にやってくる。数年前、仕事仲間とふらっと麻布十番の路地を歩いていると、ふと目に飛び込んできた灯籠があった。なぜか気を引かれて、吸い込まれるように店内に入ると、白木の香りが気持ちよく漂う空間が待ち受けていた。突然の一見客をご主人の森さんが笑顔で迎え入れてくれたことが、今も忘れられない。そんな『喜作』は人と料理の出合いをとても大切にする温かい場所だ。一期一会の心を大切にするご主人は、季節ごとの素材と料理の相性を誰よりも愉しみながら、魂をこめて作っている。ご主人の手にかかるとどんな食材も変幻自在、だから続けて訪問しても全く違う料理を食することができる。飽きがこないというのは素晴らしい。

今月号が届く頃は、京都の筍がまさに「旬」。食べる前から美味そうな「木の芽と筍の焼き物」は、炭火で静かに焼き上げ、ベストのタイミングで登場する。客とご主人との距離がとても近い分、お酒を楽しんで料理は一休み、みたいな「間」の時間もちゃんと感じ取ってくれる。一瞬たりとも気を抜かない一流のもてなしだ。そして筍に合わせるお酒は「秋鹿」の純米大吟醸雫酒・おりがらみ。まろやかな味の中に旨みが凝縮していて、優しい香りが漂う微発泡のお酒だ。それもそのはず、酒蔵の秋鹿酒造は、酒造りを米作りから始めるシャトー型で、このお酒は中でも手作りの無農薬の山田錦を使った特別なもの。筍との相乗効果はお代わりの進み具合で一目瞭然だ。ご主人のセレクトは凄い。

最後の楽しみは絶品抹茶プリン。抹茶の苦味と黒蜜の甘味がサラッ、フワッと喉を通る。偶然の出合いは衝撃となった。優しい森さんの奥に潜む料理への強い思いが、次回訪問への期待に繋がる。

写真・阿部昌也 文・下谷友康

割烹 喜作Kisaku

夜は、11,550円、15,750円、18,900円の3コース。先付けが2~3品、お椀、お造り、焼き物、八寸、旬の魚、食事、デザートという構成になっている。20時半以降は、アラカルトの注文も可能。その日に仕入れた食材によって森さんが考案する一品料理も楽しみだ。「秋鹿」の純米大吟醸雫酒・おりがらみは、1合3,500円。

※この記事に掲載の金額は取材当時の消費税率込の料金です。

住所 東京都港区麻布十番3-3-9 COMS AZABUJUBAN 5F
電話 03-5419-7332
営業時間 11:30~13:30(L.O.)、17:00~22:00(L.O.)
定休日 日曜・祝日
備考 要予約

WEB限定 今月のもう一皿
春いっぱいのお椀

その上品なお椀の蓋をそっと開けたとたんに、春の香りが一気に私の鼻腔をくすぐった。真っ白に輝くアイナメの切り身に、たっぷりと添えられた木の芽。青々としたその葉から立ち上がるスパイシーな香りがその正体だ。アイナメの傍らには、翡翠色に透き通るフキも添えられている。そう、このお椀も、ご主人の森さんが届けてくれた春の味だ。
アイナメは晩春にかけて旬を迎え、これからが一番おいしくなる季節だ。森さんはこのタイミングを決して逃さない。澄み切った出汁の中に泳がせたその白身は、見た目にも大変美しい。口に運ぶとふっくら、でも確かな歯ごたえが残っている。かみしめるほどに甘みと旨みをほんのりと感じた。
このお椀と相性抜群の、森さんのおすすめの日本酒は、喜久粋の特別純米酒(1合1,000円/税込)。木の芽の強い味の邪魔にならない、ふくよかな飲み口がぴったりなのだとか。たしかに木の芽とアイナメを引き立て、椀全体をまろやかに包み込むようだ。
ああ、ニッポンの春の旬の味は、本当に素晴らしい!
※この記事に掲載の金額は取材当時の消費税率込の料金です。

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