ホーム > グルメ > 第十二回 西麻布「レフェルヴェソンス」 <山本益博の料理エッセイ> この店、私のお気に入り

<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第十二回 西麻布「レフェルヴェソンス」

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慶應大学法学部卒。職業フレンチシェフ。

「レフェルヴェソンス」、一度では覚えきれず、しかも舌を噛みそうな店名。
「泡が弾ける」といった意味合いのフランス語である。

この店のシェフは生江史伸(なまえしのぶ)さんで慶応大学法学部の出身である。私の知るところ、慶應大学出身のシェフは生江さんひとりではなかろうか。彼との出会いは、ロンドン郊外にあって現在世界最先端のレストランと言われている「ザ・ファット・ダック」でだった。食事が終わった段になって、私が厨房に挨拶にゆくと、そこに日本人の料理人がいた。その彼が生江さんで、料理の感想を述べた後、名刺を渡した。

"かぶ"に凝縮された可能性。

翌年の夏、生江さんから新しいレストランのシェフに就くとの案内があり、その店が西麻布の「レフェルヴェソンス」だった。私はオープニングのパーティにはまず出席しないので、この店には3日目に出かけた。料理は「ザ・ファット・ダック」仕込みのものもあったが、シンプル極まりない「かぶ」の一皿に魅了された。見た目はかぶがまるごと1個あるだけでパセリの緑鮮やかなソースが直線的に流されているだけなのだが、その味わいの豊かなこと。日本料理では表現されたことのなかった「かぶ」の一皿だった。ところが、客は私たち3人組のほかカップルがいただけで、あとのテーブルは空いたままだった。開店3日目で、これではいけない。それから半年、どのくらい仲間を誘っては「レフェルヴェソンス」へ出かけたことだろう。

NYで運命の1冊に出逢う。

生江シェフは大学を卒業してからは寄り道をせずに料理の道を進んだのだが、なかなか自分が作りたい料理のイメージが掴めなかった。たまたま、店側のツテでニューヨークへ派遣されていたとき、街の本屋で一冊の本の野菜料理の表紙に目が釘付けになった。「自分が作りたいのはこれだ!」。

それは21世紀のフランス料理界を代表するといわれている「ミッシェル・ブラス」の料理本だった。その本はいま「レフェルヴェソンス」のサロンのガラスのテーブルに収まっているが、表紙を飾っているのは、ミッシェル・ブラスを世に知らしめた「野菜のガルグイユー」である。 彼は「ミッシェル・ブラス」が唯一日本に支店を出していることを知り、ニューヨークから戻り、間髪を入れずに北海道の洞爺湖「ウィンザーホテル」内にある「ミッシェル・ブラス」へ飛んでいった。そこで、みっちりとミッシェル・ブラスの料理哲学を学んだ後、もう1軒、料理を学ぶ店として選んだのがロンドンの「ザ・ファット・ダック」だったのだ。

「レフェルヴェソンス」の料理には、その2軒のレストランのシェフ、ミッシェル・ブラスとヘストン・ブルメンタールの料理哲学とエッセンスが継承されている。だが、あの「かぶ」の一皿をいただくと、それがたんなるコピーではなく、生江シェフの自分の料理であることがよく分かる。いま、フランス料理を作っている日本人シェフは大勢いるが、「自分とは何者か?」を問い詰めて厨房に立っている料理人はわずかである。生江シェフが生み出す一皿もまた、昨日でも明日でもない「今日の料理(キュイジーヌ・ドージュルドゥルイ)」ではなかろうか。

文 山本益博

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

ダイナースクラブカード会員限定特典

  • ●ウェルカムドリンクとして、1名様につきシャンパンをグラス1杯ご提供。

優待期間 : 2013年7月18日~2014年3月31日ご利用分まで

  • ※ご予約時に、ダイナースクラブカード会員である旨をお伝えください。
  • ※ご予約なしでご来店いただいた場合には、ダイナースクラブカードをご提示ください。
  • ※ご予約は、お店に直接ご連絡ください。
  • ※特典はディナータイムのみご利用いただけます。

L'Effervescence レフェルヴェソンス

〒106-0032
東京都港区西麻布2-26-4
03-5766-9500

営業時間
ランチ : 12:00~16:00 (L.O.13:30)
ディナー : 18:00~23:30 (L.O.20:30)
定休日 月曜日(祝日は営業)を中心に月6日 
  • ※別途サービス料10%をいただきます。
  • ※個室のみ、未就学児童ご同伴でご利用できます。
  • ※男性・女性ともに帽子着用でのご入店・お食事はお断りしています。
  • ※男性のショートパンツ・サンダル履きでのご入店はお断りしています。
    男性はジャケットの着用をお奨めします。
  • ※全館禁煙
  • ※イベント等、貸切の際は特典対象外となります。あらかじめご了承ください。
  • ※お支払いにはダイナースクラブカードをご利用ください。

バックナンバー

  • 第一回 六本木「イマカツ」
  • 第二回 XEX 愛宕 グリーンヒルズ/サルヴァトーレ クオモ ブロス
  • 第三回 福臨門酒家 銀座店
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  • 第五回 六本木「Restaurant Ryuzu」
  • 第六回 神谷町「ダ オルモ」
  • 第七回 「NINJA AKASAKA」
  • 第八回 日比谷「レ セゾン」
  • 第九回 六本木「厲家菜(レイカサイ)」
  • 第十回 銀座「ESqUISSE(エスキス)」
  • 第十一回 「新ばし笹田」
  • 第十二回 西麻布「レフェルヴェソンス」
  • 第十三回 「青空」(はるたか)
  • 第十四回 みかわ 是山居(みかわぜざんきょ)
  • 第十五回 フレンチファインダイニング「シグネチャー」
  • 第十六回 アルヴェアーレ
  • 第十七回 すきやばし次郎
  • 第十八回 白金台「TIRPSE(ティルプス)」
  • 第十九回 銀座「流石Le蔵」
  • 第二十回 六本木「エディション・コウジ シモムラ」
  • 第二十一回 南青山「鮨ます田」
  • 第二十二回 広尾「はしづめ」
  • 第二十三回 五代目 野田岩 麻布飯倉本店
  • 第二十四回 銀座「馳走啐啄(そったく)」
  • 第二十五回 五反田「ヌキテパ」
  • 第二十六回 日本橋室町「LA BONNE TABLE」
  • 第二十七回 麻布十番「ケ・パッキア」
  • 第二十八回 東銀座「ムッチーニ」
  • 第二十九回 銀座「ル・ブール・ノワゼット トウキョウ」
  • 第三十回 築地「和光」
  • 第三十一回 銀座「Furuta」
  • 第三十二回 神楽坂「山さき」
  • 第三十三回 銀座「ときとう」
  • 第三十四回 六本木「BLT STEAK ROPPONGI」
  • 第三十五回 麻布台「SUGALABO」
  • 第三十六回 家全七福酒家 銀座店
  • 第三十七回 三田「コート・ドール」
  • 第三十八回 四ッ谷「後楽寿司 やす秀(みつ)」
  • 第三十九回 上野・御徒町「ぽん多本家」
  • 第四十回 西麻布「マルゴット・エ・バッチャーレ」
  • 第四十一回 銀座「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」
  • 第四十二回 根津「釜竹」
  • 最終回 丸の内・パレスホテル東京「クラウン」
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