ホーム > グルメ > 第十四回 みかわ 是山居(みかわぜざんきょ) <山本益博の料理エッセイ> この店、私のお気に入り

<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第十四回 みかわ 是山居(みかわぜざんきょ)

バックナンバー

分析、研究、実行。料理は科学。

1996年に出版された「みかわ是山居」主人、早乙女哲哉の「天ぷら道楽」(講談社刊)は料理人が書いた本としては屈指の一冊である。その中から一節を引かせていただこう。

「かつてNHKのテレビで料理番組を担当したときも、私は『天ぷらを科学する』という見地からお話をさせていただきましたが、揚げ物で一番重要なのは、油の力です。では、油の力とはなんでしょう。揚がった天ぷらを見ると、水で溶いたはずの衣に、なにも水分が残っていないことがわかります。つまり、油には脱水する力があるわけです。この脱水力を意識すると、仕事がどんどんよく見えてきて、天ぷらとして利用できるものが続々と浮かんできます。一方、この油の力を意識しなければ、なにも変わりません。ですから、天ぷらの説明をする場合、この脱水作用について解説しなければ、話はまったく先に進まないわけです。 普通、ものから水分が抜ければ、しぼんでしまいます。ところが、天ぷらの種は、脱水してもしぼみません。入れたそのままの状態で、揚がるのです。なぜでしょう?油の作用を考えれば、簡単にわかりますね。油が入った分だけ、水が出る。すなわち、水と油が入れ替わったからなのです。これを私は、『交換現象』と呼んでいます。このように、自らに『なぜ』という問いを繰り返すことが必要です。『昔から、そうしていたから』といって、漫然と同じことを続けていたのでは、成長はありません」

天ぷらの秘術とは?

私が早乙女さんから「天ぷらは魚の脱水作業」という言葉を聞いたのが、いまから30年ほど前のこと。以来、従来の型に収まらない料理人、というより稀に見るアーティストとして敬意を払い続けてきたてんぷらの天才である。

その天才ぶりをほんの少しだけご紹介しよう。
例えば、アスパラガスのてんぷら。早乙女さんは、アスパラガスを二つ切りにして揚げる。上半分は香りを引き立て、下半分からは甘みを引き出す。フランス料理のシェフで、このようにアスパラガスから二つの美味しさを生み出す料理人は皆無である。

車海老も頭と身と二つを揚げて見せる。頭は香ばしく、身は驚くほど甘い。アスパラガスのヒントはこの車海老から得たのではなかろうか。例は、あと一つで足りるだろう。穴子のてんぷらは、どこの店より香り高く揚げてみせる。穴子が焦げる寸前と言ってもいいほどである。

本人いわく「衣に水分がある以上、100度に近い温度で蒸しているんですね。衣に水分がなくなった途端に、今度は焼くという調理が始まるわけです。つまり、蒸すと焼くの二つの調理があるのが天ぷらなんです」
私は「みかわ是山居」の穴子のてんぷらを「秘術を尽くした離れ業」と称しているのだが、この穴子、まさに夏場が旬である。そうして、暑さが少しおさまりはじめると、「松茸」の一本揚げの季節となる。これまた松茸料理の最高傑作と呼びたい。

文 写真 山本益博

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

ダイナースクラブ会員限定特典

  • ●是山居のご主人 早乙女さんの直筆デッサンつきメニュー

優待期間 : 2013年9月19日~2013年10月23日ご利用分まで

  • ※ご予約は、お店に直接ご連絡ください。
  • ※ご予約時に、ダイナースクラブ会員である旨をお伝えください。

みかわ 是山居(みかわ ぜざんきょ)

〒135-0032
東京都江東区福住1-3-1 乙ビル
03-3643-8383

営業時間
ランチ :11:30 ~ 13:30
ディナー :17:00 ~ 21:30
定休日 水・祝日
  • ※お料理のご案内。
    ランチ :コース10,500円(税込)、おまかせ16,800円(税込)
    ディナー:おまかせのみ16,800円(税込)
  • ※サービス料はございません。
  • ※未就学児童同伴については直接店舗にお問い合わせください。
  • ※1階のカウンターは全席禁煙、2階の個室は喫煙可となります。
  • ※サンダル・短パンでのご入店はお断りしております。
  • ※イベント等、貸切の際は特典対象外となります。あらかじめご了承ください。
  • ※お支払いにはダイナースクラブカードをご利用ください。

バックナンバー

  • 第一回 六本木「イマカツ」
  • 第二回 XEX 愛宕 グリーンヒルズ/サルヴァトーレ クオモ ブロス
  • 第三回 福臨門酒家 銀座店
  • 第四回 神楽坂 東白庵かりべ
  • 第五回 六本木「Restaurant Ryuzu」
  • 第六回 神谷町「ダ オルモ」
  • 第七回 「NINJA AKASAKA」
  • 第八回 日比谷「レ セゾン」
  • 第九回 六本木「厲家菜(レイカサイ)」
  • 第十回 銀座「ESqUISSE(エスキス)」
  • 第十一回 「新ばし笹田」
  • 第十二回 西麻布「レフェルヴェソンス」
  • 第十三回 「青空」(はるたか)
  • 第十四回 みかわ 是山居(みかわぜざんきょ)
  • 第十五回 フレンチファインダイニング「シグネチャー」
  • 第十六回 アルヴェアーレ
  • 第十七回 すきやばし次郎
  • 第十八回 白金台「TIRPSE(ティルプス)」
  • 第十九回 銀座「流石Le蔵」
  • 第二十回 六本木「エディション・コウジ シモムラ」
  • 第二十一回 南青山「鮨ます田」
  • 第二十二回 広尾「はしづめ」
  • 第二十三回 五代目 野田岩 麻布飯倉本店
  • 第二十四回 銀座「馳走啐啄(そったく)」
  • 第二十五回 五反田「ヌキテパ」
  • 第二十六回 日本橋室町「LA BONNE TABLE」
  • 第二十七回 麻布十番「ケ・パッキア」
  • 第二十八回 東銀座「ムッチーニ」
  • 第二十九回 銀座「ル・ブール・ノワゼット トウキョウ」
  • 第三十回 築地「和光」
  • 第三十一回 銀座「Furuta」
  • 第三十二回 神楽坂「山さき」
  • 第三十三回 銀座「ときとう」
  • 第三十四回 六本木「BLT STEAK ROPPONGI」
  • 第三十五回 麻布台「SUGALABO」
  • 第三十六回 家全七福酒家 銀座店
  • 第三十七回 三田「コート・ドール」
  • 第三十八回 四ッ谷「後楽寿司 やす秀(みつ)」
  • 第三十九回 上野・御徒町「ぽん多本家」
  • 第四十回 西麻布「マルゴット・エ・バッチャーレ」
  • 第四十一回 銀座「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」
  • 第四十二回 根津「釜竹」
  • 最終回 丸の内・パレスホテル東京「クラウン」
  • ※バックナンバーでご紹介しているメニュー、料金、時間などの内容は取材した時点での情報であり、予告なく変更となる場合があります。また店舗の都合により予告なく閉店している場合もありますのであらかじめご了承ください。

SIGNATURE SIGNATUREでも料理評論家、山本益博氏おすすめの銀座のお店をご紹介しています。料理の楽しみ方や食卓の流儀を学ぶ食事会もご案内。 今すぐアクセス