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<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第十九回 銀座「流石Le蔵」

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日本で一番有名なそば屋の並び

いまから、25年ほど前、神田の「やぶそば」の並びに1軒のそば屋が店を開いた。
店の名を主人の名前をとって「いし井」と名乗った。そば粉100パーセントでつなぎを使わないそばだから、細く長く切るのは至難の業なのに、「いし井」のそばは、極く極く薄く、そして極めて細かった。
しかも、その1本1本が見事なまでに切り揃えてあり、今流の言い方でいえば、そばのエッジが立ったそばきり。

手繰れば、土や草の香りのするそばだった。そばつゆの美味さも天下一品。
甘さを控えて、辛口ながら、凛とした品格があった。

あまりの仕事の良さに感心した私は、思い切って、そば好きの「すきやばし次郎」の小野二郎さんをこの店にお連れすると、やはり、感心しきり、そばはもちろんだが、そばつゆは「東京一じゃないか」とまでおっしゃった。

そのときだったと思う。私が店主でそば職人の石井さんに問いかけた。
「何でまた、よりによって、日本で一番有名なそば屋の並びに店を開いたのですか?」と。
それについての彼の言葉がふるっていた。

「日本で一番有名なそば屋の並びにそば屋を開けば、すぐに知られるのじゃないかと思って」。

そば職人は、わがままでなりふり構わず我が道を往く人が多いが、なかでも石井さんはとりわけユニークな職人気質のそば打ちだったといえる。
この「いし井」はほどなくして、修善寺へ移転し、名旅館「あさば」のすぐ近くに店「朴念仁」を開いた。

「流石」という店名

この店で修業し、石井さんからそば打ちの技術を伝達された若い職人さんたちが東京で開いた店が「流石」で、「さすが!」とみずから自慢しているのではなく、「いし井」の流れを汲むところから「流石」と名付けられた。
そして、店主の藤田さんは、神田の「いし井」で配膳を手伝っていた女性だった。

藤田さんは自分の店でさらにそば職人を育て、店を増やし、昨年暮れには銀座8丁目にそばと炭火焼きの店をオープンした。それが「流石Le蔵」である。
そばを手繰る前に、酒を飲むときのつまみを「そば前」というのだが、清酒ばかりかシャンパーニュが揃っていて、シャンパン片手にさくら海老のかき揚げなどを楽しむ客が大勢いる。

初めて訪れるのなら「流石コース」がいい

初めて訪れるのなら「流石コース」がいい。その途中に出てくるのが「そばがき」。

従来の硬いそばがきと違い、優れた現代の「そばがき」は空気をたくさん含んで、ムースやスフレのような舌触りと質感が身上である。
そば粉をお湯で溶きながら掻き混ぜるだけなのだが、その技によって個性が出る。この店の「そばがき」はムース系マシュマロ種とでも形容できようか。

メインが魚か肉の炭火焼、先日、いただいたのは「名もない鳥の炭火焼」で、歯ごたえ十分の筋肉質の鶏の炭火焼だった。

「ひやかけ」

最後は、ざるそばかひやかけ。初めての方には「ひやかけ」をお薦めしたい。

冷たいつゆの中で、香りの失せていないそばが堂々と横たわっている。

薬味の梅おろしを途中で加えると、味わいに酸味が添えられ、一段と滋味深くなること請け合いだ。

文 写真 山本益博

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

ダイナースクラブ会員限定特典

  • ●「日替わりデザート小皿1品」をダイナースクラブ会員様と同伴者様にサービス

優待期間 : 2014年2月15日~2014年3月31日まで。

  • ※ご予約は、お店に直接ご連絡ください。
  • ※ご予約時に、ダイナースクラブ会員である旨をお伝えください。

流石Le蔵

〒104-0061
東京都中央区銀座8-7-7 JUNOビル6階
03-6228-5586

営業時間
月~土:17:30~26:00(閉店)
(炭火焼のみL.O. 24:00)
定休日 日曜日・祝日
  • ※店内は全席禁煙です。
  • ※個室、半個室の予約をご指定の場合のみ、室料(サービス料)として代金の10%をいただきます。
  • ※ドレスコードはありません。
  • ※定休日、貸切の際は特典対象外となります。あらかじめご了承ください。
  • ※お支払いにはダイナースクラブカードをご利用ください。

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  • 第二回 XEX 愛宕 グリーンヒルズ/サルヴァトーレ クオモ ブロス
  • 第三回 福臨門酒家 銀座店
  • 第四回 神楽坂 東白庵かりべ
  • 第五回 六本木「Restaurant Ryuzu」
  • 第六回 神谷町「ダ オルモ」
  • 第七回 「NINJA AKASAKA」
  • 第八回 日比谷「レ セゾン」
  • 第九回 六本木「厲家菜(レイカサイ)」
  • 第十回 銀座「ESqUISSE(エスキス)」
  • 第十一回 「新ばし笹田」
  • 第十二回 西麻布「レフェルヴェソンス」
  • 第十三回 「青空」(はるたか)
  • 第十四回 みかわ 是山居(みかわぜざんきょ)
  • 第十五回 フレンチファインダイニング「シグネチャー」
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  • 第十七回 すきやばし次郎
  • 第十八回 白金台「TIRPSE(ティルプス)」
  • 第十九回 銀座「流石Le蔵」
  • 第二十回 六本木「エディション・コウジ シモムラ」
  • 第二十一回 南青山「鮨ます田」
  • 第二十二回 広尾「はしづめ」
  • 第二十三回 五代目 野田岩 麻布飯倉本店
  • 第二十四回 銀座「馳走啐啄(そったく)」
  • 第二十五回 五反田「ヌキテパ」
  • 第二十六回 日本橋室町「LA BONNE TABLE」
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  • 第三十六回 家全七福酒家 銀座店
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  • 第四十一回 銀座「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」
  • 第四十二回 根津「釜竹」
  • 最終回 丸の内・パレスホテル東京「クラウン」
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