ホーム > グルメ > 第二十回 六本木「エディション・コウジ シモムラ」 <山本益博の料理エッセイ> この店、私のお気に入り

<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第二十回 六本木「エディション・コウジ シモムラ」

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フランス美食街道

今回の物語のはじまりは1976年にさかのぼる。

当時、私は毎年フランスへ出かけてはレストランを食べ歩いていた。
「ミシュラン」の3つ星を食べ歩くのではなく、リヨンの南30キロにあるヴィエンヌ「ピラミッド」のフェルナン・ポワンとブルゴーニュはソーリュー「ラ・コート・ドール」のアレクサンドル・デュメーヌの弟子たちの店を探しては出かけていた。
二人は20世紀前半を代表するフランス料理の巨匠で、その足跡を辿る旅から、私の「フランス美食街道」を始めようと思ったからである。
「ポール・ボキューズ」「トロワグロ兄弟」「アラン・シャペル」などは「ピラミッド」出身だが、デュメーヌの弟子たちの動向はなかなかつかめなかった。

76年当時、「ピラミッド」はいまだフランスを代表する名店だったが、「ラ・コート・ドール」はデュメーヌ亡きあとは往年の面影はすでになく、すでに忘れ去られた店になっていた。
その76年にパリから都落ちするようにやってきて、厨房を任されたのが、ベルナール・ロワゾーだった。

ロワゾーシェフとの巡り合い

このロワゾーシェフとは、ディゴワンの「オテル・ドゥ・ラ・ガール」で思わぬ巡り合いがあったのだが、そのいきさつを書いていると紙数が尽きてしまう。

かいつまんで言うと、前日「トロワグロ」で食べた私は、兄のジャン・トロワグロからデュメーヌ最後の弟子が「トロワグロ」のあるロアンヌ北50キロのディゴワンにいることを訊きつけ、翌日パリへ戻る前の昼に立ち寄ることにしたのだった。そこに、偶然居合わせたのがロワゾーだった。「今日は昼、夜、客が一人もいないので、やってきた」とのことだった。パリへ戻るなら、ソーリューへ寄って、自分の料理を食べて欲しいという。私は予定を変更して、ディゴワンから200キロ離れたソーリューへ車を飛ばしたのだった。その晩、彼が気合いを入れて作った帆立の前菜とブレス鶏の料理の美味しかったこと!「ラ・コート・ドール」でロワゾーシェフの料理を食べた最初の日本人とのことだった。

その後、彼は革命的な「水のソース」を生み出し、80年代後半、一躍時代の寵児となったのはご存知の通り。神戸のホテルに支店を出し、日本でもよく知られた存在になっていった。

継承されるロワゾーの料理哲学

残念ながら、神戸の大震災でレストランは閉店の憂き目にあってしまったが、私との親交は続いて、その後、彼をしばしば招いては、東京をはじめ関西、北陸、北海道でもロワゾーの料理の賞味会を開いた。
その際に、彼は私に「コウジ」に会わせて欲しいと何度も言っていたのだが、それが下村浩司さんであることが分かったのは、随分と経ってからだった。その時の下村シェフの仕事先が西麻布の「ザ・ジョージアン・クラブ」だった。

そうして先年、独立して開いた店が六本木の「エディション・コウジ・シモムラ」。
自分の店では、下村シェフは存分にロワゾーの料理哲学を継承し、実践しているのだが、その代表的な一品が「牡蠣のポシェ・海水のジュレ」ではなかろうか。この一皿をいただくと、人類の生みの親、母なる海に誘われる感動が打ち寄せてくる。ロワゾーはすでに亡くなったが、彼の「水のソース」を進化させた傑作と言ってよい。

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

ダイナースクラブ会員限定特典

  • ●オリジナルカクテル(食前酒)をダイナースクラブ会員様と同伴者様にサービス

優待期間 : 2014年3月20日~2014年4月30日まで。

  • ※ご予約は、お店に直接ご連絡ください。
  • ※ご予約時に、ダイナースクラブ会員である旨をお伝えください。

エディション・コウジ シモムラ

〒106-0032
東京都港区六本木3-1-1 六本木ティーキューブ1F
03-5549-4562

営業時間
ランチ  :12:00~15:30(L.O. 13:30)
ディナー:18:00~23:30(L.O. 21:00)
定休日 不定休
  • ※店内は全席禁煙です。
  • ※男性はジャケットの着用をお薦めします。
  • ※お子様のご入店は10歳以上、大人と同じメニューの召し上がれる方。
  • ※定休日、貸切の際は特典対象外となります。あらかじめご了承ください。
  • ※お支払いにはダイナースクラブカードをご利用ください。

バックナンバー

  • 第一回 六本木「イマカツ」
  • 第二回 XEX 愛宕 グリーンヒルズ/サルヴァトーレ クオモ ブロス
  • 第三回 福臨門酒家 銀座店
  • 第四回 神楽坂 東白庵かりべ
  • 第五回 六本木「Restaurant Ryuzu」
  • 第六回 神谷町「ダ オルモ」
  • 第七回 「NINJA AKASAKA」
  • 第八回 日比谷「レ セゾン」
  • 第九回 六本木「厲家菜(レイカサイ)」
  • 第十回 銀座「ESqUISSE(エスキス)」
  • 第十一回 「新ばし笹田」
  • 第十二回 西麻布「レフェルヴェソンス」
  • 第十三回 「青空」(はるたか)
  • 第十四回 みかわ 是山居(みかわぜざんきょ)
  • 第十五回 フレンチファインダイニング「シグネチャー」
  • 第十六回 アルヴェアーレ
  • 第十七回 すきやばし次郎
  • 第十八回 白金台「TIRPSE(ティルプス)」
  • 第十九回 銀座「流石Le蔵」
  • 第二十回 六本木「エディション・コウジ シモムラ」
  • 第二十一回 南青山「鮨ます田」
  • 第二十二回 広尾「はしづめ」
  • 第二十三回 五代目 野田岩 麻布飯倉本店
  • 第二十四回 銀座「馳走啐啄(そったく)」
  • 第二十五回 五反田「ヌキテパ」
  • 第二十六回 日本橋室町「LA BONNE TABLE」
  • 第二十七回 麻布十番「ケ・パッキア」
  • 第二十八回 東銀座「ムッチーニ」
  • 第二十九回 銀座「ル・ブール・ノワゼット トウキョウ」
  • 第三十回 築地「和光」
  • 第三十一回 銀座「Furuta」
  • 第三十二回 神楽坂「山さき」
  • 第三十三回 銀座「ときとう」
  • 第三十四回 六本木「BLT STEAK ROPPONGI」
  • 第三十五回 麻布台「SUGALABO」
  • 第三十六回 家全七福酒家 銀座店
  • 第三十七回 三田「コート・ドール」
  • 第三十八回 四ッ谷「後楽寿司 やす秀(みつ)」
  • 第三十九回 上野・御徒町「ぽん多本家」
  • 第四十回 西麻布「マルゴット・エ・バッチャーレ」
  • 第四十一回 銀座「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」
  • 第四十二回 根津「釜竹」
  • 最終回 丸の内・パレスホテル東京「クラウン」
  • ※バックナンバーでご紹介しているメニュー、料金、時間などの内容は取材した時点での情報であり、予告なく変更となる場合があります。また店舗の都合により予告なく閉店している場合もありますのであらかじめご了承ください。

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