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<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第二十一回 南青山「鮨ます田」

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「すきやばし次郎」で10年近く修行した強者

銀座「すきやばし次郎」の小野二郎さんのもとで修業し、独立を果たしたすし職人は何人もいるが、よく知られているのは「水谷」の水谷八郎さん、「青空(はるたか)」の高橋青空さんだろう。それに続くのが、今年の1月に店を開いた「鮨ます田」の増田励さんである。

増田さんは九州出身、地元のすし屋で働いた後、「すきやばし次郎」で10年近く修業した強者である。映画「次郎は鮨の夢を見る」の中にも登場し、お勝手で賄いを食べている場面で「あちこち自分で食べ歩き、一番おいしかったので、『次郎』で働きたいと思った」と述懐しているシーンがあるが、こういう若者はまず間違いない。

小細工を一切しない「すきやばし次郎」の流儀を継承

「すきやばし次郎」が「ミシュラン」で3つ星をとっても、なかなか若い働き手が現れない。店での仕事が半端でなくきついことを知っているからだろうと思われる。この5,6年を見ていても、3か月、半年続くのはいいほうで、また、新しい見習いが入ったかなと思っていると、次に店を訪れた時にはすでに姿が見えなくなっている者がほとんどである。中には1日で辞めてしまう者までいるという。

私は増田さんが「すきやばし次郎」で働き始めたところから知っているが、修業を終えて店を上がるまで、お客に鮨を握る姿を一度も見かけたことがない。「次郎」は土曜日の夜と日曜日が休みなものだから、土曜日の午後、昼の仕事が終わった後、長男で当主の禎一さんの横で残ったすし種を賄い用として握る姿を見たことは何度もあったが、それも1,2年前からのこと。昨今の若者はすぐに客の前に立って鮨を握りたくなるものだが、よくぞ、我慢したものである。

店を開いて3日目に出かけてみると、そのにぎりが江戸前の地紙の形の流線形で美しい。
何かを載せたり、上から絞ったりという小細工を一切しないところまで「次郎」の流儀を継いでいる。小野二郎さんの口癖の「握るなんてのは大して難しいもんじゃない。大事なのは仕込み、鮨の95パーセントはお勝手での仕込みで決まるんです」が本当であることを実感したのだった。

今から通いつめる値打ちがある店

「鮨ます田」はカウンター6席と6名の個室が一つという小さな鮨屋で、いまのところ「おまかせ」ひとコースである。淡白な白身の魚から始まるところは「次郎」と同じで、しかも「たこ」など「次郎」と同じに時間をかけて仕込んだものを握っている。これらがすこぶる美味しい。そうして途中から「きす」やら「かすご」など「次郎」では見かけないすし種も登場する。「きす」も「かすご」も酢締めにして握る昔ながらの江戸前のにぎりだが、「次郎」の薫陶を受けながらも、教わった仕事ばかりを受けつぐのではないところが、なんとも頼もしい。

増田さんのにぎる鮨を食べながら、小野二郎さんの名台詞を思い出した。「教わったことしかやらないのは、見習いとおんなじ」だと。今から通い始める値打ちがある店で、「鮨ます田」の将来が、とても楽しみである。

文 写真 山本益博

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

ダイナースクラブ会員限定特典

  • ●追加の巻物をサービス

優待期間 : 2014年4月15日~2014年5月23日まで

  • ※ご予約は、お店に直接ご連絡ください。
  • ※ご予約時に、ダイナースクラブ会員である旨をお伝えください。

鮨ます田

〒107-0062
東京都港区南青山5-8-11 BC南青山PROPERTY B1F
03-6418-1334

営業時間
ランチ  :11:30~14:00 (Close)
ディナー:17:00~23:00 (Close)
定休日 日曜・祝日
  • ※店内は全席禁煙です。
  • ※個室のみお子様入店可。
  • ※定休日、貸切の際は特典対象外となります。あらかじめご了承ください。
  • ※お支払いにはダイナースクラブカードをご利用ください。

バックナンバー

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  • 第二回 XEX 愛宕 グリーンヒルズ/サルヴァトーレ クオモ ブロス
  • 第三回 福臨門酒家 銀座店
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  • 第五回 六本木「Restaurant Ryuzu」
  • 第六回 神谷町「ダ オルモ」
  • 第七回 「NINJA AKASAKA」
  • 第八回 日比谷「レ セゾン」
  • 第九回 六本木「厲家菜(レイカサイ)」
  • 第十回 銀座「ESqUISSE(エスキス)」
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  • 第十二回 西麻布「レフェルヴェソンス」
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  • 第十五回 フレンチファインダイニング「シグネチャー」
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  • 第二十回 六本木「エディション・コウジ シモムラ」
  • 第二十一回 南青山「鮨ます田」
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  • 第二十三回 五代目 野田岩 麻布飯倉本店
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  • 第二十五回 五反田「ヌキテパ」
  • 第二十六回 日本橋室町「LA BONNE TABLE」
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  • 第四十回 西麻布「マルゴット・エ・バッチャーレ」
  • 第四十一回 銀座「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」
  • 第四十二回 根津「釜竹」
  • 最終回 丸の内・パレスホテル東京「クラウン」
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