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<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第二十四回 銀座「馳走啐啄」

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置き去りにされた「日本料理」

2013年12月に「和食」がユネスコの「世界無形文化遺産」に登録された。
とたんに、あちこちで「和食」が取り上げられるようになり、「日本料理」という言葉が置き去りにされた感がある。今までは「日本料理」は料亭、料理屋の料理、「和食」は家庭のお惣菜という線引きがあったが、これからは境界線をつけずに、私たちの食事の財産を今一度振り返りながら、後世にきちんと伝えてゆかなくてはならない。

外国の料理にない「日本料理」と「和食」の特徴「季節感」

「日本料理」でも「和食」でも、ほかの外国の料理になくて、際立った特徴というのがあるとすれば、それは「季節感」ではなかろうか。四季があり、その季節ならではの食材が豊かで、料理人はその季節を少しばかり早取りして、皿の中に盛り込む。

たとえば、6月の初めに「馳走啐啄」を訪れたとき、「鱧とじゅんさいのお椀」が出た。この季節に「じゅんさい」が出てくると、いつも、いよいよ本格的な夏がやってくると思うのは私だけだろうか。初夏から真夏にかけてのいっときの時季と「じゅんさい」が強く結びついているのだ。「鱧」は梅雨に打たれたあとの鱧が格別といわれているが、その季節を少し早取りして、お椀の中に「鱧」と「じゅんさい」が組み合わされただけで、私たち日本人は、お椀をいただきながら一瞬の季節を愛でることができるのである。

水菓子の「青煮梅」もそう。その鮮やかな「青緑」から、誰でも新緑や根つきのよい稲穂で覆われた日本の風景にまで想いを及ばすことができる。そうして、たっぷりと蜜に包まれて程よい酸味を湛えた「青梅」をいただくと、夏が体中に染み込んでゆく。こういう感性は日本人ならではではなかろうか。

7月ならば「鱧」に加えて「鮎」が季節の真っ只中、「啐啄」では「鰻」も「とうがん」と組み合わされて「お椀」で登場する。

「馳走啐啄」は、銀座の財産

店名の「啐啄」とは、卵から雛が孵ろうとするとき、親鳥が殻をつつくと、卵の中から雛がつつき返す。その様のことを言う。つまり、料理も同じで、料理人が作りっぱなしにするのではなく、その料理を愛でて、「美味しくいただきました」と賛辞を添えて料理を返す。

店はカウンターとテーブル席があり、カウンターの向こうはオープンキッチンである。
ご主人の西塚茂光さんと二人の若手が脇を固めて、見事なチームワークで料理を作ってゆくさまが見てとれる。ということは、調理場の中から、客の食べる姿もよく見えるということである。この両者をつなぐのが、割烹着を着た女将さん。小体だからこそ、料理を挟んで「啐啄」が可能な店である。

雑居ビルの2階で、じつにさりげない店構え。「馳走啐啄」は、銀座の財産といってよい。

文 写真 山本益博

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

ダイナースクラブ会員限定特典

  • ●ダイナースカード会員と同伴者様へビール1杯をサービスさせていただきます。

優待期間 : 2014年7月25日~2014年8月22日まで

  • ※ご予約は、お店に直接ご連絡ください。
  • ※ご予約時に、ダイナースクラブ会員である旨をお伝えください。

馳走啐

〒104-0061
東京都中央区銀座6-7-7 浦野ビル2F
03-3289-8010

営業時間
ランチ 12:00~14:30 (13:30までに入店)
ディナー 18:00~22:30 (20:00までに入店)
定休日 日曜日・祝日
  • ※別途サービス料10%をいただきます。
  • ※店内は全席禁煙です。
  • ※お子様はランチのみ同伴可能です。
  • ※定休日および貸切時は特典対象外となります。あらかじめご了承ください。
  • ※お支払いには、ダイナースクラブカードをご利用ください。

バックナンバー

  • 第一回 六本木「イマカツ」
  • 第二回 XEX 愛宕 グリーンヒルズ/サルヴァトーレ クオモ ブロス
  • 第三回 福臨門酒家 銀座店
  • 第四回 神楽坂 東白庵かりべ
  • 第五回 六本木「Restaurant Ryuzu」
  • 第六回 神谷町「ダ オルモ」
  • 第七回 「NINJA AKASAKA」
  • 第八回 日比谷「レ セゾン」
  • 第九回 六本木「厲家菜(レイカサイ)」
  • 第十回 銀座「ESqUISSE(エスキス)」
  • 第十一回 「新ばし笹田」
  • 第十二回 西麻布「レフェルヴェソンス」
  • 第十三回 「青空」(はるたか)
  • 第十四回 みかわ 是山居(みかわぜざんきょ)
  • 第十五回 フレンチファインダイニング「シグネチャー」
  • 第十六回 アルヴェアーレ
  • 第十七回 すきやばし次郎
  • 第十八回 白金台「TIRPSE(ティルプス)」
  • 第十九回 銀座「流石Le蔵」
  • 第二十回 六本木「エディション・コウジ シモムラ」
  • 第二十一回 南青山「鮨ます田」
  • 第二十二回 広尾「はしづめ」
  • 第二十三回 五代目 野田岩 麻布飯倉本店
  • 第二十四回 銀座「馳走啐啄(そったく)」
  • 第二十五回 五反田「ヌキテパ」
  • 第二十六回 日本橋室町「LA BONNE TABLE」
  • 第二十七回 麻布十番「ケ・パッキア」
  • 第二十八回 東銀座「ムッチーニ」
  • 第二十九回 銀座「ル・ブール・ノワゼット トウキョウ」
  • 第三十回 築地「和光」
  • 第三十一回 銀座「Furuta」
  • 第三十二回 神楽坂「山さき」
  • 第三十三回 銀座「ときとう」
  • 第三十四回 六本木「BLT STEAK ROPPONGI」
  • 第三十五回 麻布台「SUGALABO」
  • 第三十六回 家全七福酒家 銀座店
  • 第三十七回 三田「コート・ドール」
  • 第三十八回 四ッ谷「後楽寿司 やす秀(みつ)」
  • 第三十九回 上野・御徒町「ぽん多本家」
  • 第四十回 西麻布「マルゴット・エ・バッチャーレ」
  • 第四十一回 銀座「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」
  • 第四十二回 根津「釜竹」
  • 最終回 丸の内・パレスホテル東京「クラウン」
  • ※バックナンバーでご紹介しているメニュー、料金、時間などの内容は取材した時点での情報であり、予告なく変更となる場合があります。また店舗の都合により予告なく閉店している場合もありますのであらかじめご了承ください。

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