ホーム > グルメ > 第二十七回 麻布十番「ケ・パッキア」 <山本益博の料理エッセイ> この店、私のお気に入り

<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第二十七回 麻布十番「ケ・パッキア」

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イタリア料理の最難関食材、鰯

イタリア料理店でとてもよく使われる魚に「鰯」がある。
生で皿に盛られることはほとんどないが、パン粉を振りかけて、フライパン焼きにされた料理は定番のメニューのひとつといってよい。

ところが、この鰯料理、美味しかったためしが、かつて一度もないのだ。
調理場へ鰯が届いた時点では、鮮度が高く、飛び切り活きが良かったのかもしれないが、調理するまでに、質を落としてしまい、劣化した鰯に火を通すものだから、どうしても匂いが立ち上ってきて、ナイフとフォークの手が止まってしまう。

鰯は大衆魚ではあるのだが、魚へんに弱いと書くだけに、高級魚以上に素早く手当をしなくてはならない、極めて脆弱な魚なのである。シェフが修業先のイタリアでは匂って当たり前と思っていても、魚は刺身が第一と考える日本では、素材の扱いからして考えなくてはならないのである。

なぜ、こんな書き出しから始めたかというと、いつか魚料理に革命を起こすイタリア料理のシェフが現れないものだろうかと考えていたところに、ついに革命児が登場したからである。

それが麻布十番のイタリア料理店「トラットリア・ケ・パッキア」の岡村シェフである。

魚料理の革命児との出会い

岡村シェフとの出合いは、銀座の「すきやばし次郎」だった。

ある時、開店前に用事があって訪れると、主人の小野禎一さんから「イタリア料理のシェフの岡村さんです!」と紹介された。
すると、彼は「今日は魚の下処理を勉強しに来ました」と挨拶した。時期は初夏だったから、あじ、いわし、かつおなどの下拵えを学びに来て、その日が初めてではないと言った。
その時に、禎一さんから「一度、食べに行ってやってください」と薦められた。

ほとんど期待せずに、夏に出かけてみた。
すると、いきなり最初の一皿に「鮮魚のマリネ」が出た。いわしこそなかったが、あじ、きす、いか、かつおが行儀よく盛り付けられてあった。どの魚も鮮度抜群の上、下拵えと調理が的確なものだから、うまいの、なんの!目の覚めるような美味しさで、イタリア料理店では衝撃的な感動だった!

再び、仲間を誘って出かけると、かつおに代わって、江戸前のにぎり鮨の代表こはだが酢締めになって現れ、前菜の後、稲わらで炙ったかつおは自家製パスタの上に盛られてサービスされたのだった。これが、意表を突く美味しさだった。

まさに、イタリア料理の魚料理の革命とでも呼んでいいような出来事に立ち会ってしまった瞬間だった。

てんぷらの名店の技を取り入れた前菜

そうそう、温かい前菜についても書かなくてはならない。

出てきたのは、あおりいかとあなごのフリット。
といっても、イタリア料理のフリットではなく、まぎれもなく、てんぷらの名店「みかわ」の技を取り入れたフリットである。

衣は軽くカリッと上がっているのだが、あおりいかは半分以上が生で揚げられ柔らかくてとても甘い。あなごは、これまたカリッと狐色にまで揚げられながら、衣の中のあなごは口の中でみるみる溶けてゆくのだった。

魚料理の革命が起こっているイタリア料理店の現場を、ぜひとも訪れてみてほしい。

文 写真 山本益博

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

ダイナースクラブ会員限定特典

  • ●ダイナースカード会員含めご同伴者様へアペリティフ1杯をサービスさせていただきます。

優待期間 : 2014年10月17日(金)~2014年11月21日(金)まで

  • ※ご予約は、お店に直接ご連絡ください。
  • ※ご予約時に必ず「ダイナースカード会員で山本益博さんの記事を見た」ことをお伝えください。

トラットリア・ケ・パッキア
TRATTORIA CHE PACCHIA

〒106-0045
東京都港区麻布十番2-5-1 マニヴィアビル 4F
03-6438-1185

営業時間 18:00~翌1:00ラストオーダー(翌2:00閉店)
定休日 日曜日(祝日の月曜日)
  • ※全席禁煙となります。(テラスは喫煙可)
  • ※定休日および貸切時は特典対象外となります。あらかじめご了承ください。
  • ※お支払いには、ダイナースクラブカードをご利用ください。

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  • 第一回 六本木「イマカツ」
  • 第二回 XEX 愛宕 グリーンヒルズ/サルヴァトーレ クオモ ブロス
  • 第三回 福臨門酒家 銀座店
  • 第四回 神楽坂 東白庵かりべ
  • 第五回 六本木「Restaurant Ryuzu」
  • 第六回 神谷町「ダ オルモ」
  • 第七回 「NINJA AKASAKA」
  • 第八回 日比谷「レ セゾン」
  • 第九回 六本木「厲家菜(レイカサイ)」
  • 第十回 銀座「ESqUISSE(エスキス)」
  • 第十一回 「新ばし笹田」
  • 第十二回 西麻布「レフェルヴェソンス」
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  • 第二十三回 五代目 野田岩 麻布飯倉本店
  • 第二十四回 銀座「馳走啐啄(そったく)」
  • 第二十五回 五反田「ヌキテパ」
  • 第二十六回 日本橋室町「LA BONNE TABLE」
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  • 第三十六回 家全七福酒家 銀座店
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  • 第三十九回 上野・御徒町「ぽん多本家」
  • 第四十回 西麻布「マルゴット・エ・バッチャーレ」
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  • 最終回 丸の内・パレスホテル東京「クラウン」
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