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<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第二十八回 東銀座「ムッチーニ」

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人を桃源郷に誘い込む、妖艶で気品ある香り

今から7、8年前の11月、白トリュフの本場イタリアのアルバへ出かけて行ったことがある。

白トリュフのシーズンは10月から12月までで、その季節の真っ只中に白トリュフの真価を知りたくて出かけて行ったのだった。

ご存知のようにトリュフには「白」と「黒」があり、それまで私はフランス贔屓だったこともあって、フランスの黒いダイヤモンドの虜にはなっても、イタリア特産の白トリュフにはあまり関心がなかった。

当時、日本へ空輸されて来た白トリュフは、どうしても時間が経過してしまったものが多く、「妖艶な香り」が魅力なはずなのに、にんにくの匂いを発散させるものがしばしば見受けられた。

にもかかわらず、「白」は「黒」の何倍もの値段が付けられていたのだった。

ところが、アルバのトリュフ市へ出かけた途端、疑問はたちどころに氷解した。

むせかえるような妖艶さと同時に、淡くて儚い気品に溢れていて、人を桃源郷に誘い込む魔力のある香りだったのである。

何でも、本物の最高に出会うまで、その価値を勝手に決めてはならないことを思い知らされたのだった。

カロリーゼロで優秀食材、だがお値段は…

トリュフはカロリーゼロだから、フォアグラと違い、いくら食べても体の負担にならない。

さらに、食材としては、オードブルからデザートまで使えるので、「トリュフ尽くし」のメニューを組むことも可能である。

違いといえば、「黒トリュフ」が熱を加えると一段とその効果を発揮するのに比べ、「白トリュフ」は過熱するとその価値は半減してしまう。

調理したものの上から、スライサーで薄片に削って添えると、その実力を最大限に発揮する。

たとえば、卵料理やパスタがいい。

この季節、日本のあちこちの高級リストランテで「白トリュフ」がメニューに載っている。

ところが、目の玉が飛び出るほどの、いや想像を絶するとまで言ってよい値段である。

リーズナブルに「白トリュフ」を楽しめる1軒

その中にあって、東銀座の「ムッチーニ」は最もリーズナブルな料金で「白トリュフ」を楽しませてくれる1軒ではなかろうか。

昨年の夏の終わりころ、たまたまこの店の前を通りかかると、鼻先を「アルバの香り」がかすめた。

足を止め、店の中をのぞくと、小さなカウンターがあるのみのリストランテでもトラットリアでもない、軽食の食堂に見えた。

棚には白トリュフ入りの塩やらオリーブオイルを売っている
どうやら、日本初の「白トリュフ」の専門店で、そのデモンストレーションのためのカウンター席らしかった。

聞けば、「ムッチーニ」とはトリュフを扱う、いわばトリュフ請負人その人の名前だった。

さっそく予約を入れ、10月になって出かけて行った。

目玉焼きに白トリュフ、シンプルなリゾットに白トリュフ、わずか6席のみの小さな店内にもかかわらず、妖艶な香りが充満して、素敵な酔い心地だった。

そして、その酔いが決して醒めることのないお勘定書き。

トリュフ好きにはたまらない店で、本当は内緒にしておきたかった!

文 写真 山本益博

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

ダイナースクラブ会員限定特典

  • ●イートインでお食事をされた方でダイナースカード会員含めご同伴者様へ
    ドリンク1杯をサービスさせていただきます。

優待期間 : 2014年11月21日(金)~2014年12月19日(金)まで

  • ※ご予約時には必ず「ダイナースカード会員で山本益博さんの記事をみた」ことをお伝えください。

ムッチーニ イタリア

〒104-0061
東京都中央区銀座3-12-7
03-3542-1086

営業時間 ストア 12:00~20:00、
イートイン 12:00~14:00(L.O.)
18:00~19:30(L.O.)
定休日 日曜・月曜
  • ※全席禁煙(テラス席は喫煙可)
  • ※お支払いには、ダイナースクラブカードをご利用ください。
  • ※定休日および貸切時は特典対象外となります。あらかじめご了承ください。

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  • 第一回 六本木「イマカツ」
  • 第二回 XEX 愛宕 グリーンヒルズ/サルヴァトーレ クオモ ブロス
  • 第三回 福臨門酒家 銀座店
  • 第四回 神楽坂 東白庵かりべ
  • 第五回 六本木「Restaurant Ryuzu」
  • 第六回 神谷町「ダ オルモ」
  • 第七回 「NINJA AKASAKA」
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  • 第二十回 六本木「エディション・コウジ シモムラ」
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  • 第四十二回 根津「釜竹」
  • 最終回 丸の内・パレスホテル東京「クラウン」
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