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<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第三十回 築地「和光」

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開いているのか分からない?究極の隠れ家

この連載始まって以来のユニークな飲食店のご紹介である。

店構えからして、民家にしか見えない。
しかも、半分グレーのシートがかかっていて、店が開いているのか休んでいるのかもよくわからない。
つまり、店を知っている常連客しか扉を開けることがないだろう飲食店なのである。

その扉には「会員制」の札と「Diners Club」の札が貼り付けてある。
主人に聞けば、物見遊山の客を入れない配慮だけで、メンバーオンリーしか迎えない店ではないという。
カードはダイナースクラブカードだけが使え、ダイナースクラブカードをお持ちの方は大歓迎という。

現状維持の快適さを活かし、精いっぱいのおもてなし

玄関の木箱の中に帆立貝の貝殻が立てかけてあり、そこに「築地和光」とある。
「和光」と言えば、銀座4丁目の角にある「和光」を誰しも思い浮かべるだろうが、こちらの「和光」のほうが、歴史が古いらしい。

店の中に「和光」と書かれた扁額があるのだが、「山本五十六元帥」の書だという。
つまり、店主の代々は由緒ある料理屋だったらしい。
当主の丹羽徳多郎さんはいろいろな職を経験して、この店の主におさまった。

設備投資を可能な限りせず、現状維持の快適さを活かし、居心地は多少悪くとも、精いっぱいのもてなしでお客様を迎えようと考えた末の店舗設計だったらしい。

メニューはひたすら貝…他とは一線を画する店

ところで、「和光」は貝焼き専門店である。すぐそこの築地から仕入れたばかりの多種の貝を焼いて出すだけ。
貝によって火の通しはそれぞれだが、調味料による味付けは一切しない。貝の塩気、潮の味のみが調味料なのである。お通しも箸休めもつまみも何もない。

客はひたすら主人が焼く貝を、酒を飲みながらいただくだけである。はまぐり、あさり、つぶ貝、バイ貝、牡蠣に帆立とどこまでも貝尽くし。貝好きには堪らないが、それ以外の客にはまったく受けないかもしれない。
だから、このご案内を読んで出かけたくなった方は、面白半分で出かけるのではなく、主人のペースにはまってしまうことを覚悟して出かけなくてはならない。

なにしろ、主人は飲食店を経営している意識は非常に高いのだが、「貝」以外のコストはできる限り節約しているので、いわゆる食べ物屋の快適さとは一線を画す空気が店の中に流れている。
言ってみれば、主人の経営哲学を聞きながら飲み食いする酒亭と考えればよいだろうか。

貝焼きをいただきながら、この店はいったい、料理屋それとも居酒屋、はたまた酒亭などと思いめぐらせていたところ、主人がこう言ってくれた。「うちは飲食店型流通業です」と。

文 写真 山本益博

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

ダイナースクラブ会員限定特典

  • ●ダイナースクラブカード会員含めご同伴者様へ「あわび食べ比べコース」15,000円を12,000円にディスカウント。

優待期間 : 2015年1月23日(金)~2015年2月20日(金)まで

  • ※ご予約時には必ず「ダイナースクラブカード会員で山本益博さんの記事をみた」ことをお伝えください。

築地 和光 本店

〒104-0045
東京都中央区築地6-2-4

E-mail wakoniwa@ezweb.ne.jp
  • ※ご予約は携帯メールのアドレスのみにて受け付け
営業時間 18:00~24:00(夜10:00以降入店可)
定休日 不定休
  • ※全席禁煙となります(外に喫煙スペースあり)。
  • ※未就学児童(小学生未満)の同伴はご遠慮ください。
  • ※お支払いには、ダイナースクラブカードをご利用ください。
  • ※定休日および貸切時は特典対象外となります。あらかじめご了承ください。

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