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<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第三十二回 神楽坂「山さき」

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東京では数少ない「江戸前料理」を謳う「なべ家」の味を受け継ぐ店

東京には関西割烹を看板に掲げるお店は数多くあるが、江戸前料理を謳う料理店は数えるほどしかない。
大塚の「なべ家」はその数少ない「江戸前料理」を標榜する1軒である。

飲食店の形態に即して言えば、関西の料理屋はおしなべて「総合職」、東京のすし、そば、てんぷら、うなぎなどは「専門職」と言え、徳川時代の江戸では「専門職」の飲食店が圧倒的に多かった。
その伝統が、東京の「江戸前」を掲げる「総合職」の飲食店が少ない理由でもあると言えようか。

葱と鮪が主役…江戸前の伝統料理「ねぎま」

店名にあるように「なべ家」は「なべもの」を売り物にしている。

年中あるのが、寄せ鍋の「蓬莱なべ」だが、春先の季節になると「ねぎまなべ」が登場する。葱と鮪が主役のシンプルな鍋なので「ねぎまなべ」と呼ぶ。

昔は、鮪は赤身を刺身で食べて、脂身、いわゆる「とろ」は鍋に仕立て、脂を落として賞味していた。
ところが、冷蔵設備が発達すると、「とろ」も生でいただくようになって鮨屋の看板ネタに成りあがり、反対に赤身は冷凍の鮪では味気なく、鮨種としては人気が無くなっていってしまった。
その脂ののった鮪を鍋にするのはもったいないと、また高価になりすぎて「ねぎま」は次第に忘れられた存在になってしまった。

それでも「ねぎま」は江戸前の伝統料理だからと、「なべ家」では品書きに載せ続けてきたが、その「なべ家」で修業を重ねたのが神楽坂「山さき」の女主人山崎美香さんである。
したがって、「なべ家」の鍋料理が「山さき」にしっかりと受け継がれているのである。

鍋料理の本当の美味しさを

「江戸前」の濃いめの出汁を張った鍋を沸かし、そこへ「とろ」こそ使えないが、ぶつに切った脂ののった「背とろ」と呼ばれる部分などを入れ、葱も頃合いを見計らって加わえてゆく。
鮪のぶつに出汁の味が染み込み、鮪と相性抜群の葱を一緒に頬ばると、かつての「江戸」の庶民の味が口中にじわじわと広がってゆく。
ここに挽き割り胡椒を添えると鮪の味にアクセントがついて、一段と美味しさが増してゆく。
この「煮えばな」が何より鍋の味を引き立ててくれるのだ。

「山さき」では寄せ鍋でも、初め、鍋の中身は出汁のみで、いきなり具材が鍋一面に盛り込まれているようなことはない。
出汁が沸いてきたら、魚介、野菜を適宜鍋の中へ入れてゆく。
決していっしょくたにはしない。それぞれ火の通し具合が違うからである。

鍋料理の本当の美味しさを知らずにいる方が多いので、「山さき」では各テーブルにインストラクター、いわゆる「なべ奉行」がついてくれる。
ここで、ひとたび鍋料理の作法、流儀を心得れば、あとは鬼に金棒、どこの店に出かけても「なべ」を美味しくいただけること請け合いである。

文 写真 山本益博

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

ダイナースクラブ会員限定特典

  • ●ダイナースクラブカード会員様のテーブルに、山さき特製の梅から作られた「山さき特製の梅塩」を1つご提供します。

優待期間 : 2015年3月20日(金)~4月17日(金)まで

  • ※ご予約は、お店に直接ご連絡ください。
  • ※ご予約時には必ず「ダイナースクラブカード会員で山本益博さんの記事を見た」ことをお伝えください。

山さき

〒162-0825
東京都新宿区神楽坂4-2 福屋ビル201

お問い合わせ番号:03-3267-2310

営業時間 18:00~22:00(最終の入店は20:00まで)
定休日 日曜日・祝日
  • ※全席禁煙となります。
  • ※翌月のご予約は、前月の1日から承ります。(5月のご予約は、4月1日から受付)
  • ※定休日および特別イベント時は特典対象外となります。あらかじめご了承ください。
  • ※お支払いには、ダイナースクラブカードをご利用ください。
  • ※サービス料10%を頂戴します。
  • ※中学生以下のお客様のご入店はお断りしています。

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