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<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第七回 「NINJA AKASAKA」

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その壱 平成二十五年、忍者に遭遇。

「NINJA AKASAKA」はエンタテインメント・レストランである。となると、料理の美味しさよりレストランの内装や仕掛けが話題の店と思いがちだが、この店は例外中の例外、美味しくて楽しい料理がふんだんのレストランである。娘の誕生日をはじめ、我が家の記念日には仲間を誘い、外国から友達がやってくれば、必ずお連れするほど「お気に入り」の店で、皆さんが大喜びで大満足する。出かけるときは、必ず全員一緒に店を訪れること、これがこの店が間違いなく楽しくなる第一条件。

黒塀のエントランスから「NINJA AKASAKA」の物語のプロローグが始まるからなのだ。
ここで種明かしができないのが誠に残念、忍者の里にある席に着くまで、修業の道を歩かせられるとだけ言っておこう。この仕掛けがじつに面白いのだが、同時に、料理への期待はほとんどしぼんでしまうと言ってよい「娯楽」に優れていればいるほど、どうしたって「料理」は二の次になるからだ。

その弐 “見た目”に惑わされるべからず。

ところが、どっこい。メニューは「フェイク」あり「もどき」ありで、ひと癖もふた癖もありながら、料理は見栄えや仕掛けに決して負けていない。たとえば、「冷奴」。豆腐はオマール海老のムースで出来ていて、味は「冷奴」より、間違いなく美味なフランス料理。鰹節も刻んだネギも他の食材で作られたそれは見事なフェイク(偽物)なのである。

導線の火薬で火が入る仕掛けのサザエも、「エスカルゴのブルゴーニュ風」に似せてあるが、「もどき」にしては上出来の味わいで、シャンパンにうってつけの前菜といえようか。

その「フェイク」「もどき」の傑作は、「肉じゃが」だろうか。
注文すると、霜降りのサーロインの牛肉が塊りで現れる。と、ここまで書きながら、あとはやめておこう。どんでん返しがおこる「肉じゃが」となる種明かしをしてしまってはつまらない。ぜひ、注文して、レストランで「肉じゃが」を楽しんでいただきたい。

「鱈の炭火焼き」も近年の傑作と言ってよい。「葉隠れの術」の香草と豆乳のスープも「抜刀の術」の刀を引き抜いた瞬間、グレープフルーツから白煙が噴き出す魚介のジュレも、この店のスぺシャリテで、誰もが楽しく、とても美味しいと言う。デザートの「雨蛙」「盆栽」は外国人に大人気のスぺシャリテ。日本人には「越後屋の付け届け」という傑作デザートがある。

その参 最後まで気を抜くなかれ。

店内は忍者だけに黒がモチーフで、忍者姿のサービスはじめ、どこもかしこも黒づくめ。デザートの頃合いを見計らって、忍者姿のマジシャンが現れる。食事している小部屋でテーブルマジックを披露してくれるのだ。

このテーブルマジックの腕前が、超がつく一流で、子供も大人も一緒になって「なんでだろう、なんでだろう?」と不思議がりながら、忍者マジックに喝采をおくる。

食事の最後に、全員がもうひとつ気持ちが一緒になる素晴らしい演出と言える。東京、京都、ニューヨークと世界に3店だけの稀有なエンタテインメント・レストランである。

 

写真・文 山本益博

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

NINJA AKASAKA

〒100-0014
東京都千代田区永田町2-14-3 赤坂東急プラザ1F
03-5157-3936

営業時間
平日 :17:00~24:00(L.O.23:00、ドアクローズ22:30)
日祝 :17:00~23:00(L.O.22:00、ドアクローズ21:45)
定休日 無し
  • ※平日のお子様連れでのご利用は、17:00~17:30までのご来店で19:30までとなります。
    (土・日・祝日はご利用時間中の制限はありません)
  • ※お子様連れでのご来店希望のお客様は、事前にレストランへご連絡ください。
    お子様のご人数によっては安全上の都合を考え、お断りする場合もございます。
  • ※イベントや貸切時は特典対象外となります。あらかじめご了承ください。

バックナンバー

  • 第一回 六本木「イマカツ」
  • 第二回 XEX 愛宕 グリーンヒルズ/サルヴァトーレ クオモ ブロス
  • 第三回 福臨門酒家 銀座店
  • 第四回 神楽坂 東白庵かりべ
  • 第五回 六本木「Restaurant Ryuzu」
  • 第六回 神谷町「ダ オルモ」
  • 第七回 「NINJA AKASAKA」
  • 第八回 日比谷「レ セゾン」
  • 第九回 六本木「厲家菜(レイカサイ)」
  • 第十回 銀座「ESqUISSE(エスキス)」
  • 第十一回 「新ばし笹田」
  • 第十二回 西麻布「レフェルヴェソンス」
  • 第十三回 「青空」(はるたか)
  • 第十四回 みかわ 是山居(みかわぜざんきょ)
  • 第十五回 フレンチファインダイニング「シグネチャー」
  • 第十六回 アルヴェアーレ
  • 第十七回 すきやばし次郎
  • 第十八回 白金台「TIRPSE(ティルプス)」
  • 第十九回 銀座「流石Le蔵」
  • 第二十回 六本木「エディション・コウジ シモムラ」
  • 第二十一回 南青山「鮨ます田」
  • 第二十二回 広尾「はしづめ」
  • 第二十三回 五代目 野田岩 麻布飯倉本店
  • 第二十四回 銀座「馳走啐啄(そったく)」
  • 第二十五回 五反田「ヌキテパ」
  • 第二十六回 日本橋室町「LA BONNE TABLE」
  • 第二十七回 麻布十番「ケ・パッキア」
  • 第二十八回 東銀座「ムッチーニ」
  • 第二十九回 銀座「ル・ブール・ノワゼット トウキョウ」
  • 第三十回 築地「和光」
  • 第三十一回 銀座「Furuta」
  • 第三十二回 神楽坂「山さき」
  • 第三十三回 銀座「ときとう」
  • 第三十四回 六本木「BLT STEAK ROPPONGI」
  • 第三十五回 麻布台「SUGALABO」
  • 第三十六回 家全七福酒家 銀座店
  • 第三十七回 三田「コート・ドール」
  • 第三十八回 四ッ谷「後楽寿司 やす秀(みつ)」
  • 第三十九回 上野・御徒町「ぽん多本家」
  • 第四十回 西麻布「マルゴット・エ・バッチャーレ」
  • 第四十一回 銀座「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」
  • 第四十二回 根津「釜竹」
  • 最終回 丸の内・パレスホテル東京「クラウン」
  • ※バックナンバーでご紹介しているメニュー、料金、時間などの内容は取材した時点での情報であり、予告なく変更となる場合があります。また店舗の都合により予告なく閉店している場合もありますのであらかじめご了承ください。

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