ホーム > グルメ > 第九回 六本木「厲家菜(レイカサイ)」 <山本益博の料理エッセイ> この店、私のお気に入り

<山本益博の料理エッセイ>この店、私のお気に入り 山本益博

第九回 六本木「厲家菜(レイカサイ)」

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ルーツは"紫禁城"の厨房。

「厲家菜」とは「厲(レイ)家の料理」と言った意味合いで、本店は北京にある。
1985年、「中国家庭料理コンクール」が全国規模で開催された。文化大革命で崩壊してしまった中国の家庭料理を今一度再興しようという狙いで開かれたコンクールで、その大会で優勝したのが「厲家」の次女だった。その優勝をきっかけに紫禁城の裏手の路地、羊房胡同にある自宅を改造して1日1組のレストランを始めたのが「厲家菜」である。

「厲家菜」の主人は厲善麟さんで数学の学者、奥さんは女医で、1998年、私がこの店を初めて訪れたとき、店の方は主人をプロフェッサー、奥方をドクターと呼んでいた。この善麟さんの祖父が清朝の西大后に仕えていた官僚で、西大后の食事を監督する立場にあった。それで、子供の頃には厨房に出入りしては料理の味を覚えていったという。 ただし、コンクールのときは、献立などの資料を1947年の革命のときに処分してしまっていたため、すべて善麟さんの舌と頭の記憶によって料理を再現したとのことである。

前菜の皿数こそ宮廷料理の証。

西大后には126名もの料理人が仕えていて、自然な食材を駆使して、毎日食べても飽きない料理を次々に創作していった。その氷山の一角を窺い知ることができるのが、多種多様の前菜類ではなかろうか。メニューにもよるが、20種もの前菜を堪能できる。

その代表的なものを挙げてみると「白菜の芥子漬け」「セロリと海老子の酢和え」「麻豆腐」「北京風豚バラ肉の燻製」「海老の錦糸玉子揚げ」「鴨肉と海老のすり身の揚げ物」「骨付き豚肉の甘酢味」「いんげんの山椒油和え」「羊肉の焼き物」「翡翠のような豆腐料理」などなど。セロリをはじめとする野菜の丁寧な庖丁仕事には目を瞠るものがあり、仕込みに十分な時間をかけて仕上げたことがよく分かる前菜ばかりで、見てくれは何ともシンプルだが、味わいは穏やかながら奥行きが深い。


厲(レイ)さんの「小さな奇跡」。

主菜での私のお気に入りは「豚肉と白菜の煮込み」。豚肉のロースを長時間かけて風味と味わいを引き出し、それを白菜と合わせて煮込みに仕立ててある。豚肉と白菜が渾然一体、ともに私たちがよく知る普段使いの食材だが、「厲家菜」の手にかかると魔法のような料理に変貌する。それは「小さな奇跡」と言っても過言ではない。スープの滋味を白飯と一緒にいただくときの幸福感といったら、他に例えようもない。

それから「ハタの丸揚げ」。日本料理ではあまり評価されない魚が、中国料理では「鯛」「平目」に匹敵するほどの美味に変身する。身質のしまった魚ならではのうま味が調味料と一体になって、これまた白飯が欲しくなってしまう。最近、「すっぽんの煮込み鍋」という新メニューが加わった。「すっぽん狂」には物足らないが、すっぽん嫌いの方、食べず嫌いの方にはぜひお薦めしたい一皿である。

店には3つの個室しかないので、必ず予約すること、そして、4名以上で食卓を囲むと「厲家菜」の醍醐味が堪能できること請け合いである。

 

写真・文 山本益博

プロフィール

山本益博

1948年(昭和23年)東京・浅草生まれ。料理評論家。
1973年よりフランスへ出かけて料理とレストラン文化を研究、2014年、フランス政府より農事功労章オフィシエを授与される。米国グラムメディア社『Foodie Top 100 Restaurants: Worldwide』の選者の一人。
「人間味という味が、いちばん美味しい」(大和書房)など食に関する著作のほか、「立川談志を聴け」(プレジデント社)、「名人芸の黄金時代 桂文楽の世界」(中公文庫)などオペラや落語、イチローに関する著作も多い。Webサライで「ひと皿の歳時記」ほか、最新の料理情報などを掲載。「美食の世界地図」(竹書房新書)を2014年1月に上梓。2014年9月に小学館より『鮨 すきやばし次郎 JIRO GASTRONOMY』を出版。

ダイナースクラブカード会員限定特典

  • ●ディナーをご利用のダイナースクラブカード会員様とご同伴の方に、ウェルカム シャンパンをサービス。

優待期間 : 2013年4月24日~2013年5月21日ご利用まで

  • ※ご予約時に、ダイナースクラブカード会員である旨をお伝えください。
  • ※ご予約は、前日の午前中までにお店に直接ご連絡ください。ご予約なしでご来店いただいた場合には、ダイナースクラブカードをご提示ください。
  • ※特典はディナータイムのみご利用できます。
  • ※別途サービス料10%をいただきます。
  • ※お支払いにはダイナースクラブカードをご利用ください。

厲家菜(レイカサイ)

〒106-0032
東京都港区六本木6-12-2 六本木ヒルズ けやき坂通り
レジデンスB棟3階
03-5413-9561

営業時間
ランチ 11:30~15:30(ラストウォークイン 14:30)
ディナー 18:00~23:30(ラストウォークイン 20:30)
定休日 水曜日のランチ
  • ※※お子様もご利用になれます。
  • ※イベント等、貸切の際は、特典対象外となります。あらかじめご了承ください。

バックナンバー

  • 第一回 六本木「イマカツ」
  • 第二回 XEX 愛宕 グリーンヒルズ/サルヴァトーレ クオモ ブロス
  • 第三回 福臨門酒家 銀座店
  • 第四回 神楽坂 東白庵かりべ
  • 第五回 六本木「Restaurant Ryuzu」
  • 第六回 神谷町「ダ オルモ」
  • 第七回 「NINJA AKASAKA」
  • 第八回 日比谷「レ セゾン」
  • 第九回 六本木「厲家菜(レイカサイ)」
  • 第十回 銀座「ESqUISSE(エスキス)」
  • 第十一回 「新ばし笹田」
  • 第十二回 西麻布「レフェルヴェソンス」
  • 第十三回 「青空」(はるたか)
  • 第十四回 みかわ 是山居(みかわぜざんきょ)
  • 第十五回 フレンチファインダイニング「シグネチャー」
  • 第十六回 アルヴェアーレ
  • 第十七回 すきやばし次郎
  • 第十八回 白金台「TIRPSE(ティルプス)」
  • 第十九回 銀座「流石Le蔵」
  • 第二十回 六本木「エディション・コウジ シモムラ」
  • 第二十一回 南青山「鮨ます田」
  • 第二十二回 広尾「はしづめ」
  • 第二十三回 五代目 野田岩 麻布飯倉本店
  • 第二十四回 銀座「馳走啐啄(そったく)」
  • 第二十五回 五反田「ヌキテパ」
  • 第二十六回 日本橋室町「LA BONNE TABLE」
  • 第二十七回 麻布十番「ケ・パッキア」
  • 第二十八回 東銀座「ムッチーニ」
  • 第二十九回 銀座「ル・ブール・ノワゼット トウキョウ」
  • 第三十回 築地「和光」
  • 第三十一回 銀座「Furuta」
  • 第三十二回 神楽坂「山さき」
  • 第三十三回 銀座「ときとう」
  • 第三十四回 六本木「BLT STEAK ROPPONGI」
  • 第三十五回 麻布台「SUGALABO」
  • 第三十六回 家全七福酒家 銀座店
  • 第三十七回 三田「コート・ドール」
  • 第三十八回 四ッ谷「後楽寿司 やす秀(みつ)」
  • 第三十九回 上野・御徒町「ぽん多本家」
  • 第四十回 西麻布「マルゴット・エ・バッチャーレ」
  • 第四十一回 銀座「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」
  • 第四十二回 根津「釜竹」
  • 最終回 丸の内・パレスホテル東京「クラウン」
  • ※バックナンバーでご紹介しているメニュー、料金、時間などの内容は取材した時点での情報であり、予告なく変更となる場合があります。また店舗の都合により予告なく閉店している場合もありますのであらかじめご了承ください。

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