「京都の静寂 京の隠れ宿」第三夜

祇園のビルに潜むミシュラン4つ星のデザイナーズホテル 祇園のビルに潜むミシュラン4つ星のデザイナーズホテル

KIZASHI THE SUITE
キザシ ザ スイート

祇園・八坂神社の石段下から、花街を貫き西へと伸びる四条通。京都・東山観光の起点となるこの通りの一画に建つ近代ビルに、まさに「隠れ家」という言葉がふさわしい、全室スイートルームのホテルがあることを知る人は少ない。

文・新家康規(アリカ) 写真・橋本正樹
Text by Yasunori Niiya(Arika Inc.) Photographs by Masaki Hashimoto

金毘羅船々追風(おいて)に帆かけて シュラシュシュシュ……♪。金屏風の前で、地方(じかた)が奏でる三味線に合わせて芸舞妓と遊んだり、艶やかな舞を観賞しながら、古都の地酒を一献。そんなお座敷遊びにひたる夜は、京都・祇園ならではの愉しみだ。そして、華やいだ空間から障子をすっと開ければ、目の前にはシモンズ社の寝台が置かれたゆったりしたベッドルームが……

 ここはお茶屋ではなく、ホテルの一室。祇園の真ん中、ビルの上階に潜むデザイナーズホテル『KIZASHI THE SUITE』である。

15畳の座敷を備える最上級の部屋「大竹」。ここでは、京の花街・祇園甲部や先斗町、上七軒などのお茶屋から芸舞妓を呼ぶことができる。入口に敷かれた釿(ちょうな)の痕を残す、味わい深い「なぐりの床」をはじめ、数寄屋造りの意匠が凝らされた座敷である。すぐ隣にはミニバーが備わる廊下があり、その先には浴室や寝室が続く。100㎡を超える部屋は、繁華街の中心とは思えない静かでラグジュアリーな空間だ。

 ビル最奥にあるエレベーターに乗らなければ辿り着かないというロケーションから、まさに「隠れ家」という言葉がふさわしいホテルだが、2012年の『ミシュランガイド』掲載をきっかけに国内外から訪れるゲストが増えている。4つ星を獲得している現在は、宿泊だけを目当てに古都を訪れる人もいるという。

『キザシ ザ スイート』クリスタルのオブジェ

『キザシ ザ スイート』丸窓障子

『キザシ ザ スイート』「大竹」なぐりの床

『キザシ ザ スイート』「大竹」の浴室

『キザシ ザ スイート』茶室

『キザシ ザ スイート』「桜なでしこ」の玄関

2フロア8室のこのホテルは、「これまでの京都にない宿を」という構想のもと、2009年に開業。当時の京都では珍しかった全室スイートルームを採用した。心地良い泡に包まれるジャグジー、タイ・ヨタカ社のチェア、ミラ・ショーンのアメニティなど、海外のホテルのような最先端の設備・サービスがさりげなく備えられる。一方で、竿縁天井や丸障子など、伝統的な和のエッセンスが品よくあしらわれている。

 「大竹」をはじめ、8室中6室に高野槙風呂を設置。ほのかな槙の香りが漂う浴槽には、血行促進効果があるという炭酸泉が注がれる。自分専用の中庭を大きなガラス越しに眺めながら泡立つ湯につかり日頃の疲れを癒すのは、愉悦のひとときだ。

 ほかにも、4畳半の茶室を備える「つぼ渦」や、待ち合いを模した玄関を持つ「桜なでしこ」など、一つとして同じ設いの部屋はない。遊び心のある空間を楽しみに、「以前と違う部屋で」とリクエストをするリピーターも多いそうだ。

『祇園なん波』の仕出し

『KIZASHI THE SUITE』は、ホテルには付きものとも言えるレストランを「あえて置いていない」。その理由は「祇園には名店が多く、外で食事をしたいとおっしゃるお客様が多いというのも一つですが、心は祇園のお茶屋のしきたりに倣っているつもりです」とマネージャーの小島静哉氏。祇園のお茶屋では、料理を自家で作らず、料亭などから上質の仕出しを取る。したがってこのホテルでも食事を希望するゲストには、信頼する店の仕出し料理を提供しているのだ。

 この日の仕出しは、ほど近くの割烹『祇園 なん波』から。先付に始まり、碗、向付、八寸、炊合、焼物と、目にも美しい品々が続く。季節の素材を繊細な味付けで生かす京料理の真髄を、プライベートな空間でじっくりと……。通常は仕出しを行わない店だが、このホテルの宿泊者に限り特別に京懐石を調製している。

 仕出しは、季節や宿泊日などに応じて、近隣の数店舗に依頼。どんな佳肴との出合いがあるのか、旅のサプライズとして愉しみたい。

『キザシ ザ スイート』レセプション

『キザシ ザ スイート』木村英輝氏の手による「White Tiger」

和と洋がダイナミックに共存するホテルを営むのは、京都で和雑貨の販売から京町家のリノベーションまで手掛ける「くろちく」。館内の意匠には、長年培ってきたその技術やノウハウが生かされている。また、レセプションや各部屋に華やぎを添えるアンティークの調度品は、同社代表で伝統意匠建築家としても活躍する黒竹節人氏がセレクトしたものだ。

 滞在時にはぜひ3階から4階へと繋がる階段を利用してほしい。なぜなら踊り場の壁には、圧倒的な存在感を放つ2頭の白虎が描かれているからだ。これは、青蓮院門跡の襖絵や関西国際空港の壁画でも知られる絵師・木村英輝氏の作品。廊下の紅葉や1階エレベーターホールの蝶なども同じく木村氏の筆で、今をときめくアートを間近に鑑賞することができる。

 数寄屋造りとモダンな寝室、ラグジュアリーな最新設備と骨董の調度品。一見相反するものが競演するホテルを、ひとことで言い表す言葉は見当たらない。しかし「ええもん」を貪欲に取り入れ、互いの個性を生かした独創的な空間づくりは、確かにこのホテルの魅力と言えるだろう。

『キザシ ザ スイート』「大竹」の床の間

『キザシ ザ スイート』ウェルカムサービス

ホテルのコンセプトは?と小島氏に尋ねると「コンセプトがないことがコンセプトです」と禅問答のような答えが返ってきた。その心は、「もてなしは客人に応じて変幻自在」と解けばよいだろうか……。かつて「仮名手本忠臣蔵」にも登場する、歴史あるお茶屋で遊びたいというリクエストを受けて、京都でも有数の「一見さんお断り」のお茶屋への案内をかなえたこともあるという。予約を受けると宿泊を前にゲストとの詳細なやりとりが始まる。旅の目的や嗜好など、あらゆる要望をヒアリングし、各人に応じた様ざまなサービスや提案を行うのは、“ゲストの満足”が絶対の基準であるこのホテルでは、ごく当たり前に行われることだという。

 京都を代表する観光地・祇園。その中心部に建つビルの中には、思いきり贅沢な“非日常感”に包まれる隠れ家がある。

『キザシ ザ スイート』

KIZASHI THE SUITE

京都市東山区祇園町北側275 くろちくビル 3F・4F
1室 68,000円~(2名様ご利用時、食事なし、税・サービス料込)
チェックイン 14:00、チェックアウト 11:00

※『KIZASHI THE SUITE』では、ダイナースクラブカードがお使いいただけます。

ダイナースクラブ会員限定特典

本記事を見てご予約の方に、「兆 KIZASHI 純米大吟醸」もしくは「モエ・エ・シャンドン ブリュット」のどちらか1本をご提供します。

※ご予約の際は、ダイナースクラブ ウェブサイトをご覧の旨、お伝えください。

※お支払いはダイナースクラブカードをご利用ください。

【実施期間】 
2018年3月29日(木)まで

*「京都の静寂 京の隠れ宿」第二夜『元お茶屋の宿で堪能する花街のもてなし 料理旅館 白梅』も併せてご覧ください。

2017.03.28

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