Number 121

今月の一皿

写真・栗林成城 文・下谷友康 
Photographs by Shigeki Kuribayashi 
Text by Tomoyasu Shitaya

超ド級!
ロックなステーキ

那須御用邸へと続く、一本道沿いの人気店。
緑豊かな近隣の牧場で育った和牛の肉を、山のような迫力のサイズで。
忘れがたき味を求め、リピーターが集まる。

 栃木県の那須高原に6つの牧場を有し、約8000頭の牛を育てる『敷島ファーム』直営のレストランがあると聞き、早速向かった。那須塩原駅から車を走らせること約30分、雄大な自然の中、広々とした牧場が見えてくる。聞けば、繁殖から飼育、そして出荷までのすべてを自社牧場だけで一貫生産しているそうで、そこに安心と信頼があるのだと感じさせられる。

 再び街道に戻り、10分ほど走ると緑の中に涼しげに佇むレストランに着く。まず店に入ると、焼いた肉の香りが鼻腔をくすぐる。それもそのはず、エントランスのすぐ目の前の特注の鉄板で、ステーキがジュージューと音を立てて焼かれているのだ。これはもう食欲の針が完全に振り切れるシチュエーションだ。

 店の一番人気で数量限定の「Mt.那須Rock」は、なんと300グラム。躊躇していると、料理長の諏訪靖明さんが「みなさんペロッと食べられますよ。ぜひトライしてみてください」とけしかける。思い切ってオーダーし待つこと約20分、熱々の鉄の皿に載ってみごとな肉の塊がやってきた。ごく表面だけがうすーく焼かれてあり、中は美しいレアの状態だ。

ダイニングキッチン あ・かうはーど 鉄板で焼かれるお肉

赤身肉の芳醇な旨み

 一切れ口に入れると、赤身の旨みがぎゅっと凝縮されているのがわかる。「食感をよくするため、なるべく表面の焼き目を薄くすることにこだわります」と諏訪さん。エントランス付近にあったこのために作った鉄板で、脂を流しながら強火で表面を焼いた後、オーブンで5分、さらにアルミホイルで包んで鉄板の隅に戻し、弱火でじっくり火を入れる。手のかかったステーキだ。諏訪さんが1年間試行錯誤したこの3つの工程が、軟らかくジューシーで赤身特有の旨みを出す秘密だ。

 もちろん300グラム、あっという間に食べてしまった。そのままでも美味しいが、フルールドセルという塩とガーリックチップの組み合わせもおすすめだ。そのほかにも、牧場直営だからこその贅沢なメニュー、サーロインとフィレだけの粗挽きのグランドハンバーグや、高原野菜のバーニャカウダも試してほしい。地元で採れたものを中心とした新鮮な野菜は、青々としていて箸休めにもちょうどいい。

 場所柄、ファミリーで夏休みに、あるいはバカンスのランチで。僕の次回は、ゴルフの帰りに友人とディナーの予定だ。

ダイニングキッチン あ・かうはーど「Mt.那須Rock(300g)」

ダイニングキッチン あ・かうはーど 料理長 諏訪靖明

料理長

諏訪靖明

Yasuaki Suwa

Information

ダイニングキッチン あ・かうはーど

栃木県那須郡那須町大字高久乙593-146
営業時間 ランチ 11:30~15:30(L.O. 15:00)
ディナー 17:00~21:00(L.O. 20:30)
定休日 無休

予約はランチが11:30から、ディナーが17:00からのみ可能。

今月のもう一皿

「お肉屋さんのお寿司」

 さて、「Mt.那須Rock」が焼き上がるまで、ビール片手に何をつまもうか。なにせ300グラムの巨大な塊だ。お目見えするまでに半時(はんとき)はかかる。メニューに目を通すと気になる一品を発見。「お肉屋さんのコロッケ」ならぬ「お肉屋さんのお寿司」(2貫、972円/税込)だ。そのネーミングに敬意を表して「今月のもう一皿」に決定だ。

 上品なお皿に2貫、ほどなくして艶やかに輝く肉の握りが運ばれてきた。美しい刺しの入り具合は、食べる前から口の中でとろけるさまを想像させる。

ダイニングキッチン あ・かうはーど「お肉屋さんのお寿司」

肩ロースのローストビーフの薄切りをネタにした握りには、昆布醤油をはらりとひと塗りしてバーナーで少しだけ炙り、香りを立たせてある。そうすることで、甘みと旨みが増すのだそうだ。「醤油だけだと醤油の味が立ってしまって、肝心の肉のよさを消してしまうのです」と、諏訪料理長。「Mt.那須Rock」の焼き方同様、こちらもかなりの試行錯誤を繰り返したのだとか。

 そっと握りをつまみ、口の中へ。想像したとおり、ほのかな昆布醤油の香りの中で、軟らかな肉はすーっと消えていった。

※内容はすべて掲載時のものです。その後、変更されていることもありますので、あらかじめご了承ください。

*前回取材の「東京・銀座、イタリア料理の王道に『和』のスパイスを加えた新感覚の味」もあわせてご覧ください。

2017.06.20

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