京のグルマンが愛する店

La Biographie…(ラ・ビオグラフィ)

素材の持ち味を引き出す火入れの妙。

折り重なる歴史が紡ぐ、魔法の時間へ

文・坂本 綾(アリカ) 写真・伊藤 信 
Text by Aya Sakamoto(Arika Inc.)
Photographs by Makoto Ito

『La Biographie…』卵 ショー・フロワー 小宇宙 1999

中心街に隠れた密やかな時間と空間

 京都の中心・御池通。市庁舎や大小のホテル、オフィスビルが立ち並ぶ街の活気から少し離れて、衣棚通(ころものたなどおり)を南へ下ると、とたんに「京の日常」とでも言うべき静かな町並みが広がる。そのなかでも控えめな、背の低い町家の格子に緑を這わせ、グレーの煉瓦を貼った外壁にそっと店名を掲げる『La Biographie』。多くのグルマンを虜にし、2014年からはミシュランの一つ星も獲得するレストランでありながら、その佇まいはあくまでも密やかだ。

 ほの暗いエントランスと通路を通り抜けると一転、緑あふれる中庭を囲む明るいダイニングが広がる。オーナーシェフ・滝本将博氏の手になる美しく独創的な料理を愉しみ、そこに潜む驚きや発見に心を遊ばせる時間の始まりだ。

『La Biographie…』甘海老 セジール/エキス 2017

 丁寧な仕事の施された多彩なアペリティフもうれしいが、序盤で心を揺さぶるのは、シェフの「Signature(署名)」とも銘打たれたスペシャリテ「卵 ショー・フロワー 小宇宙 1999」。半熟の卵黄のコクにメープルシロップの甘みや香ばしさ、シェリービネガーの酸味、エピスの香りが絡み合い、ひと匙ごとに変貌していく味わいはとても言葉にできない。

 ほかにもこの日の食卓には、甘味と旨みが凝縮した甘海老のセジールとエキス、清流の香りを封じ込めた鮎のコンフィ、見事なロゼ色に焼き上げられた京都姫牛のグリヤードなどが登場した。

『La Biographie…』鮎 4時間コンフィー塩焼き 2013

「肉の魔術師」を継ぐ火入れの技術

 「素材本来のクリアな香りや性質といかに巡り合い、いかにそれを崩さず前面に出すか。それを常に考えています」と話す滝本シェフ。それぞれの素材が「心地良くなれる温度帯」を見つけ、最適な加熱で繊細な風味を最大限に引き出す。シェフの手で一皿に会した食材は、ただ融け合うのではなく各々の個性を主張しながら響き合い、豊かな味わいを膨らませていく。

 滝本シェフは1987~90年をフランス、スイスの名店で過ごし、多くを学んだ。とりわけ約1年在籍したパリの三つ星レストラン『アルページュ』では、「肉の魔術師」とも呼ばれたオーナーシェフ、アラン・パッサール氏の精緻な火入れの技術に目を開かされたという。

『La Biographie…』京都 姫牛 霜降り 背肉 低温100分グリヤード

 たとえば肉のグリヤードなら、常温で肉質をほどき、手をかざせる程度の低温に熱したグリヤードの上で、中心温度60℃をイメージしながら1時間以上をかけてじっくりと熱を加える。常に転がし、グリヤードに接する面では加熱、別の面では休ませる状態を同時進行しながら全体に肉汁を行き渡らせ、表面には芳ばしい香りと焼き色を与える。その手間暇が、噛むほどに肉の奥から肉汁がこぼれ出すような、これまでにない瑞々しさの肉料理を生み出す。

 自身の技術を惜しげもなく伝えてくれたパッサール氏は、こう話したという。「数百年続くフランス料理の伝統の中で受け継がれてきた技術を、次世代に伝えることもまた料理人の使命だ。今度は君も、身に付けた技術を次世代へ継承していってほしい」。氏はまた、滝本シェフの帰国後も勤務先のホテルを訪れ、師への敬意ゆえに出せないでいた『アルページュ』のルセットを「どんどん出しなさい」と鼓舞してくれた。

『La Biographie…』鮎コンフィ

偉大なシェフの使命を継承する

 その深い思いに打たれた滝本シェフが、自らの店を開いたとき、店名に冠したのが「継承」の意味を持つ「La Biographie」だ。偉大なシェフから引き継いだものは他にもある。帰国当初はフランスそのものの表現にこだわるあまり、空輸野菜を使うような「不自然」な気負いもあったという。それが大原の生産農家との出会いをきっかけに、改めていま居る場所の素晴らしいものを見つけることも自分の仕事と気づいた。

 「考えてみれば、アルベールビルの『ミリオン』でシェフが手がけていたのも、地元の野菜や魚を活かす料理。当時は“フランス料理”という大きなくくりで理解していたものが、その地域でなければできない仕事だったと気づきました」

 一時は週に1~2度は顔を出すほど産地に通い詰めたという滝本シェフ。そのとき築かれた信頼関係により、シェフの厨房には現在も、生産者が手塩にかけた大原産の香り高い野菜が届く。

五感と記憶を刺激するガストロノミー

 できる限り地元産の素材を用い、その性質をよりクリアに引き出す。その的確な技術を基礎に、素材の組み合わせや旅先で出合った日常の風景など、自身の受けた感動をひと皿の上に再構築する――。滝本シェフの仕事は旅人が綴る旅行記にも似て、人の心を遠い世界にまで連れて行く。

 それは、味覚や嗅覚、視覚といった五感ばかりか、これまでに触れた音楽や絵画、訪れた場所、味わったものなど、あらゆる記憶までを心地良く刺激する、大人のための魔法の時間だ。愛する人と、大切な人と……ぜひこの「魔法」を分かち合ってみたい。

『La Biographie…』

『La Biographie…』ダイニング

ダイナースクラブ会員限定特典

ダイナースクラブ会員限定特典 ウェルカムドリンク

お店から《ウェルカムドリンク》を提供。

【実施期間】 2017年10月31日(火)まで

  • ※ご予約の際は、ダイナースクラブ ウェブサイトをご覧の旨、
    お伝えください。
  • ※お支払いはダイナースクラブカードをご利用ください。
La Biographie

京都市中京区衣棚通御池下ル西側長浜町152

営業時間 12:00~13:00(L.O.)
18:00~20:00(L.O.)
定休日 月・火曜
お料理 昼 7,670円、10,030円(税・サービス料込)
夜 17,700円、21,240円~(税・サービス料込)
お席 テーブル12席(4名様席×3)、個室1室

075-231-1669

http://la-biographie.info/

  • ※ご予約の際は、ダイナースクラブ ウェブサイトをご覧の旨、お伝えください。
  • ※お支払いはダイナースクラブカードをご利用ください。

*2017年8月8日公開の「京のグルマンが愛する店」の『阿じろ』もあわせてご覧ください。

2017.09.12

  • 記事に掲載の金額は取材当時の料金です。
  • 掲載記事は更新当時の情報になります。優待・イベント期間が終了している場合や、最新の店舗、価格、在庫状況とは異なることがあります。