SIGNATURE2016年01_02月号
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〝一年の計は元旦に在り〟という。誰が言い出したのかは知らないが、人間のやわらかさ、呑気な性分をよくあらわしているものだ、と私はこの言葉を聞く度に思う。元旦だから、敢えてその一年をどう過ごすかを決めたり、覚悟を確認しなくてはならないほど、その人が悠長に生きているということなのだろう。しかしそれでいいのではないか、とこの頃は思う。しゃかりきになって、自分の人生は大丈夫か、などと一年中毎日考えていては周囲の人も心配するだろうし、第一余裕がなくなる。完璧を求める人は、完璧というものにとらわれて、何ひとつ身に付かないケースの方が多いのではなかろうか。それはゴルフのプレーで例えると、ナイスショット以外は、つまらぬショットと考えるのと同じで、面白味がないし、ゴルフの肝心をいつまで経っても理解できないことになるだろう。失敗をするものだという前提を気持ちの隅に持っていれば、落胆し過ぎて心身がおかしくなることもないし、周囲にも不必要に心配、迷惑をかけなくて済む。今は、日記、日誌を書く人が少なくなったそうだが、私が子供の頃は、年の瀬、文房具店には真新しい日記帳が並んでいた。今年は日記をちゃんとつけて、いい一年にするぞ、と決心して書きは6 Text by Shizuka IjuinIllustrations by Keisuke Nagatomo
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