SIGNATURE2016年01_02月号
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The Poetry of Dversity』i− ..   i  iilhosailhosawwwkatsutanakacom〝Cdade MaravCdade Maravたなかかつよし/写真家。ニューヨーク在住。15年近くにわたり、毎年のようにブラジル、リオデジャネイロを撮影。写真集『BRAZILをブラジルで出版。2014年には『踊る!ブラジル―私たちの知らなかった本当の姿―』(小学館)を出版。ロ。リオに暮らす人々は親愛の情を込めて自らの街をこう呼んでいる。白砂のビーチ、熱帯雨林の山々、サンバの熱狂、そして開放的で享楽的な日常。多彩な魅力にあふれるこの理想郷に惹かれて、私は15年近くにわたって毎年のように撮影を続けてきた。2016年の夏に開催されるオリンピックを前に、現在、街は大きな変貌を見せている。そしてリオが開催都市として選ばれた舞台裏にこそ、実はこの街の魅力が隠されている。2013年9月7日。2020年東京オリンピックの開催がアルゼンチン・ブエノスアイレスのIOC総会で決定した瞬間だ。日本中が歓喜に包まれたことを記憶する人も多いだろう。さらに4年前の2009年の10月。デンマーク・コペンハーゲンのIOC総会でリオデジャネイロは東京やシカゴ、マドリードといった名だたる大都市との激戦の結果、南米大陸での初開催を勝ち取った。コパカバーナビーチに集まった大群衆は、「リオが世界の檜舞台に立つ!」「神がこの街を選んでくれた!」とこの〝奇跡の到来〟に狂喜乱舞した。実は一次予選の段階でリオは5位と大苦戦を強いられ、この勝利は当初の予想を覆す大逆転劇だったと言われている。IOCのメンバーはこの街の将来にかけ、オリンピックを通じて発展途上の都市が変革し、若いエネルギーに満ちた市民生活が創造される、そんな未来図を描いたのだ。未熟なインフラや不安定な財政、治安や環境面での不安などを乗り越え、街は今、急ピッチで準備を進めている。一方、競技の実施やオペレーション面での不安をあげる〟……素晴らしき街、リオデジャネイ人々も多いが、私は異なる見解を持っている。この街は世界最大の祭典「リオのカーニバル」を毎年のように開催してきた。その規模たるや数万人の参加者と数十万人の観衆に及ぶ。同時期におこなわれる「ストリート・カーニバル」と呼ばれる市民参加型の祭りを加えれば、それは破格の規模に膨れ上がる。こうした〝カオス〟を彼らは統括し、演出し、世界に向けて発信し続けてきた。その卓越したプロデュース能力は、おそらく世界でもトップクラスだろう。オリンピックという巨大なイベントさえも、彼らの手にかかれば一つの祭りにすぎないのだ。街の装いが大きく変貌するなかで、美しい景観を守る取り組みも進んでいる。そのきっかけは2012年にユネスコによってリオが世界遺産に登録されたことだ。グアナバラ湾やキリスト像の立つコルコバードの丘、コパカバーナビーチやリオ植物園など、市内7つの景観が保護対象として選ばれた。特筆すべきは、これらが自然遺産ではなく文化遺産である点だ。街の類い稀なる自然美に加え、これらの自然と人々が共生する〝文化的な景観〟こそが、リオデジャネイロの最大の魅力として評価されたのだ。私がこの街を訪れる際に決まって最初に立ち寄る場所がある。それは夕暮れ時のイパネマビーチだ。陽が暮れるまで人々は水辺に戯れ、そこには甘く切ない光景が広がっている。背後に迫る山々は黄金色に染まり、波に砕けた飛沫が霧となって辺りを包む。感傷的なその光景を目にすると、またあの一言が思い起こされる。〝き街、リオデジャネイロ。〟……素晴らしリオの原風景を見つめ続けて文・田中克佳36世界遺産のイグアスの滝から、2016年夏のオリンピック開催を控えるリオデジャネイロへ。世界中の注目を集めるこの街をよく知る3人の日本人が、それぞれの想いを語るエッセイ。この街を流れる時間が、この一年で大きく変わる。リオデジャネイロへのまなざしRio de Janeiro

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