SIGNATURE2016年01_02月号
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Cartier 19世紀末、ダイヤモンドジュエリーの歴史はカルティエにより大きく変わった。オープンワークのデザインに、ダイヤモンドの輝きが際立つジュエリーの誕生だった。ダイヤモンドとそこに添えられた宝石は、外側からは見えないセッティングで豪華で清楚なレース模様を描き、ティアラやネックレスとなって女性たちに優雅な気品のオーラを降り注いでいた。それは強靭で輝きを損なわず繊細な加工が可能なプラチナを、カルティエが初めてジュエリーに採用することで実現。後にガーランドスタイルと呼ばれる革新的スタイルだった。次の革新は20世紀を迎えたばかりの頃。幾何模様のジュエリーの考案だった。具象から抽象へ、アールヌーボーからアールデコへ、アートもデザインも変わろうとしていた、そんな時代に先駆けての挑戦だった。直線と曲線とが織りなす構築的デザインは、かつてどんなジュエラーも創作したことのない完璧なモダンデザイン。自然や神話や物語から影響を受けず、純粋なクリエイティビティが生み出した画期的なジュエリーだった。 さらに時代が進み、カルティエのアイコン、パンテールが登場。それまでの動物や植物をモチーフにしたジュエリーも加わり、どれもが立体的かつ洗練されたデザインに形づくられていく。ダイヤモンドで埋め尽くされた動物やフラワーモチーフのジュエリーもまた、カルティエの豊かな創造力が生み出す自由なデザインと、それを可能にする卓越した技術によって実現している。 これら過去に創作されたダイヤモンドジュエリーは、時代を超えるモダンさを持ち、現代の私たちの誰もがうっとりと見入る魅力を放っている。Horst P HorstⒸConde Nast Publications Inc./corbis右と中:「マイヨン パンテール ドゥ カルティエ」から、ブレスレット。28,300,000円(18KPG、ダイヤモンド)、リング1,590,000円(18KYG、ダイヤモンド)。*共に税抜。左:ミステリーダイヤモンドのヘアアクセサリー。1934年9月『ヴォーグ』掲載。カルティエのジュエリーに刻み込まれた永遠という価値。これはダイヤモンドを知りつくし、さらなる高みへと導くために工房が守り抜いた理念の賜物。世界で最も傑出したダイヤモンドのほとんどが、この工房を通っていったという。 1989年、カルティエが制作した最大のネックレスはマハラジャ、プピンドラ・シンの依頼によるもの。234.69カラットを中心に、2930個、総数1000カラットのダイヤモンドで構成されていた。歴史上、数々の悲劇を生んだホープダイヤモンドは、巡り巡ってカルティエのもとに届き、1910年に周囲をダイヤモンドで取り囲むネックレスの中央にセッティングされている。1969年にカルティエが当時のダイヤモンド史上最高値で購入した69.42カラットのペアシェイプ ダイヤモンドは、その2日後、俳優のリチャード・バートンがカルティエを説得し、妻のエリザベス・テーラーに贈り、「カルティエ バートン テイラー」として知られることに。オールナット、タイガーピアーズ、アガ・カーン、ジュビリー……と、多くの類いまれなダイヤモンドがカルティエのもとから巣立っている。 1956年、モナコ大公・レーニエ3世がグレース・ケリーに贈った10.48カラットのエメラルドカットダイヤモンドの婚約指輪。グレース・ケリーはこのシンプルな指輪を、映画『上流階級』で身に着け出演し、女優への別れを告げた。 王侯貴族も時代のヒロインたちも魅せられ、信頼をおくカルティエのダイヤモンド。卓越性、真正性、創造性……メゾンの歴史に根づいたこの倫理観が、最も美しい貴石に唯一無二の芸術的価値をも与え、未来へと輝きのストーリーを繋いでいる。「魅惑」がテーマの最新作「ガラントリー ドゥ カルティエ」のネックレスとリング。ネックレス785,260円〜、リング5,715,000円〜(18KWG、ダイヤモンド、リングにはブラックラッカーも)*共に税抜。50カルティエ、ダイヤモンドレジェンド
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