SIGNATURE2016年01_02月号
47/70

Photographs by Masaya Abe Text by Jun Nemotovol.0261安藤勝己 KATSUMI ANDOあんどう かつみ/1960年3月生まれ。1976年地方競馬の笠松競馬場で初騎乗。2003年に中央競馬に移籍。天皇賞、ダービー、オークス……G1だけでも22勝を記録し、有馬記念は08年にダイワスカーレットで優勝。通算4464勝、JRAで1111勝。「アンカツ」の愛称で親しまれ、天才肌のジョッキーとして人気を博した。13年1月に騎手を引退。現在は競馬評論家として活躍中。※デジタル版シグネチャーでは、対談の続きを掲載する予定です(2016年2月1日公開)。鈴木淑子 YOSHIKO SUZUKIすずき よしこ/大手企業のOLを経て、ラジオやテレビのキャスター、パーソナリティとして活躍。競馬との関わりは1983年にフジテレビの競馬中継の司会をすることからスタート。競馬に関しては全くの素人だったが、名馬、名騎手、名レース、名ドラマとの出会いの中で競馬に魅了され競馬パーソナリティの道へ。多彩な帽子姿もトレードマークで、この日も大人モードなコーディネートを披露。レースの向こう側のストーリー競馬を深く知るための、一昨年はオルフェーヴルが有終の美を飾る、衝撃の8馬身差の圧勝劇。愛すべきグランプリレースの魅力と行方を、女性競馬パーソナリティの鈴木淑子さんナビゲートのもと、元・騎手の安藤勝己さんが語った。鈴木淑子さん(以下敬称略):いよいよ今年の競馬の総決算、有馬記念が迫ってきました。安藤さんは2008年にダイワスカーレットに騎乗して勝利されていますが(37年ぶりの牝馬による制覇)、やはり有馬記念の勝利は特別なものですか?安藤勝己さん(以下敬称略):地方競馬の頃から有馬記念はいつもテレビで観ていました。ダービーよりも注目していました。ただ当時は憧れどころか、全くの別世界の出来事と思っていましたが(笑)。でもダイワスカーレットで勝ってあの大歓声に包まれた時は感動しました。彼女は燃えすぎる気性で2500メートルの距離に不安を持っていたのですが、前年の有馬記念で2着(1着マツリダゴッホ)となり、これがいい契機と自信になりました。08年は前走の天皇賞(秋)が惜しい2着だったので、有馬記念はぜひとも勝ちたい、勝たせたい、と期して挑みました。鈴木:天皇賞はウオッカ(牝馬ながら日本ダービーに勝った女傑)とのハナ差の大接戦でしたね。それも女の子同士の決着という、天皇賞の歴史の中でも語り継がれる名勝負で、接戦だけでなくタイムもレコード決着!安藤:実は天皇賞はダイワスカーレットにとって不本意なレースでした。激しい気性のためにまともに調教することができず、レース当日の本馬場へ向かう地下一年の競馬を締めくくる「有馬記念」。ファン投票で選ばれた人気のスターホースが、暮れの中山競馬場2500メートルを舞台にいくつもの名ドラマを生んできた。馬道でも振り落とされるような興奮状態。レースでもその前向きになり過ぎる気持ちを抑えることができず、やむなく先頭に立ったのです。それでいてあのハナ差の決着でしたから、負けはしましたが、彼女の力を改めて実感しました。鈴木:写真判定も長かったですものね。安藤:15分ぐらいかかったのではないですか。それほど際どいのならばもう同着にしてくれればいいのに(笑)。でも、レースを1つ経たことでダイワスカーレットは気持ちが落ち着き、有馬記念は満足のいく仕上げで迎えることができました。結局、また先頭で逃げてそのまま押し切って勝つのですが、正直、逃げは好きでなく、自信はありましたが道中はドキドキでした(笑)。どんな状態でも崩れることのないすごい馬でした(12戦8勝、2着4回)。鈴木:安藤さんには珍しく、ゴール前でガッツポーズされてましたね。有馬記念といえば、あのオグリキャップの笠松競馬場時代に乗っていたのも安藤さん。安藤:はい、私も途中から引き続いだのですが(7回騎乗で全勝)、成長力のある強い馬で、芝レースへの適性も中京競馬場で勝っていたので問題ないことはわかっていましたが(1200メートルでの勝利)、有馬記念2勝をはじめ、あのような伝説的な活躍をするとは。写真・阿部昌也 文・根本 淳鈴木:それでは安藤さんの今年の有馬記念の注目馬はズバリ、どの馬でしょうか?安藤:やっぱりゴールドシップじゃないですか。あの馬はおもしろいというか、本当にわからない。ゲートの出遅れは馬が遊んでやっていることですから。鈴木:本当にゴールドシップは個性あふれる馬ですね。それだけに負けてもファンが多い。今年の有馬記念は彼のラストラン。それを本人もわかっているような気がするので、最後はしっかり締めてくれるのではないかと私も期待しています。安藤:そうですね。気持ち次第でしょうが、コース、コンデションともに、暮れの中山が一番合っていることは間違いありません。とにかく熱くなれるレースが見たいですね。今年のグランプリはどんな感動の物語が待っている?

元のページ  ../index.html#47

このブックを見る