SIGNATURE2016年03月号
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ヌードルアーティストのこだわり麺目立たない入口、細い階段を上っていくと、おもしろい店がある。名だたる有名店やホテルに麺を卸して製麺』直営の中華料理店だ。麺にこだわりがあり、楽しくてわくわくの店だが、僕にとっては一人とか二人で食べられる中華であることがうれしい。すべてのメニューが小さなポーションで出されるので、少人数でもいろいろと味わえるからだ。カウンター席もあるし、まさに僕好みの店だ。食事が進み、シメの麺となった時が『はしづめ』の真骨頂。この日は色鮮やかな麺が5種、目の前に運ばれてきた。ごぼう、ゆず、モロヘイヤ、中華麺、山椒と、これだけたくさんの種類から好みの麺を選ぶのは初めてだ。すべて〝ヌードルアーティスト〟なる橋爪さんのアイデア。試行錯誤のうえ、香りや食感、見た目を考え、日々研究しているという。選んだ麺は、スープと具を組み合わせてもらう。今日は「ゆず×蒸し鶏のねぎ油がけ温麺」にする。麺だと普通はスープを先に一口というのが一般的だが、ここはこだわり麺の店。まずは麺から味わいたい。熱々のスープから麺を一箸すくい上げて口に運ぶと、ゆずのほのかな香りがする。素材を練りこんだ麺は、ともすればコシを失いがちだが、もっちりかつしっかりとしたここの麺は、とてもバランスがいい。別盛りの蒸し鶏を合わせると、とろけそうな鶏とねぎ油がからみ、さらに麺が引き立つ。以前にいただいた「山椒×担々麺」もよかったが、しばらくゆずがお気に入りになりそうだ。麺だけではない。四川料理を長らく経験した増山料理長が考案した和出汁を使った四川料理は、お腹に優しい。和出汁で作る「陳麻婆豆腐」は辛すぎず、山椒がほどよく効いている。麺よし、コースよし、アラカルトよし、しばらく通いたくなる店である。14ヌードルアーティスト65年以上、創業1949年の『橋爪住所:東京都港区南麻布5-16-10 カルチェブラン広尾2F電話:03-6277-2183営業時間:ランチ11:30〜15:00(L.O.14:30)、 ディナー18:00〜23:00(L.O.22:00)定休日:日曜・祝日広尾はしづめ和出汁ベースのスープに蒸し鶏とねぎ油が絶妙にからむ「蒸し鶏のねぎ油がけ温麺」は、1,400円。「豚肉と竹の子の酸辣湯麺」(1,300円)や「たっぷりフカヒレのとろみ」(2,800円)などバリエーションも豊富。「陳麻婆豆腐」(1,800円)など、お馴染みの中華メニューも。これからの季節は、「たっぷり春野菜とホタテのXO醤炒め」(3,200円)もお薦めだ。*価格はすべて税抜です。NumberPhotographs by Masahiro Okamura(Crossover) Text by Tomoyasu ShitayaToshiyuki Hashizume橋爪利幸今月の一皿107
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