SIGNATURE2016年03月号
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2   18はしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)などがある。単なる無名性ではなく、「見どころ」をつくろうとするつくり手の作為がどこにもない、「無事の美」「無碍の美」こそ、無上の美と結ばれていると、柳は考えていた。巨大な伽藍とは関係のない、民衆の信仰に寄り添った質朴な仏教美術に顕れた美から、柳の思想を遡行する。会期:2016年3月21日(月・祝)まで開館時間:10:00〜17:00※入館は閉館の30分前まで休館日:月曜※祝日の場合は開館し、翌日振替休館会場:日本民藝館 (東京都目黒区駒場4-3-33)公式サイト www.mingeikan.or.jp/お問い合わせ 03-3467-4527会期:2016年4月10日(日)まで※会期中、一部作品の展示替があります開場時間:9:30〜17:30※土曜は19:30まで、入館は閉館の30分前まで休館日:月曜(ただし3月21日・28日は開館、22日は休館)会場:江戸東京博物館(東京都墨田区横網1-4-1)公式サイト www.davinci2016.jp/お問い合わせ 03-3626-9974本展のテーマは「見えない世界を探る」。神が創造し、人間の原罪によって不完全なものとなってしまった世界から、神の真理を探し出そうとする営みが、ダ・ヴィンチにとっての自然観察だ。直筆ノート『鳥の飛翔に関する手稿』はダ・ヴィンチの目に映った世界の真理なのである。特別展天才の挑戦むねよしたっけいColumnSignatureText by Mari HashimotoExhibition InformationExhibition Information《大津絵 阿弥陀如来》紙本着色 江戸時代 17世紀 縦32.0㎝ 日本民藝館蔵《自刻像》木喰明満 江戸時代 1801年 像高75.5cm日本民藝館蔵《白掛鉄絵蓋物》磁州窯 明時代 16世紀 26.0×27.0cm日本民藝館蔵レオナルド・ダ・ヴィンチ《羊飼いの礼拝のための研究》1478-1480年、紙、金属尖筆、ペンと褐色インク、7.4×9.8cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室Su concessione del Ministero per i Beni e le Attività Culturali-Venezia Gallerie dell'Accademia日本美術の冒険 第21回文・橋本麻里レオナルド・ダ・ヴィンチ《糸巻きの聖母》1501年頃、油彩・板、48.3×36.8cm、バクルー・リビング・ヘリテージ・トラスト©The Buccleuch Living Heritage Trust 芸術と信仰にはさまざまな関わり方がある。特定の宗教に奉仕するためにつくられた作品もあれば、そうした作為のありようもない「道具」に、鑑賞者の側が何らかの宗教性を見出すこともある。 日本民藝館で開催される「美の法門─柳宗悦の美思想」で紹介されるのは、1929年、民衆的工芸品の美を称揚するために「民藝」の新語をつくり、民藝運動を先導した柳宗悦が、1948年に『大無量寿経』から啓示を得て到達した、晩年の思想に由来する作品や資料などだ。「真に美しいもの、無上に美しいものは、美とか醜とかいう二元から解放されたもの」であり、「自由になることなくして真の美しさはない」とし、全てに仏の美を読み取り感受することこそが美の世界へ通じる、と喝破した柳が、私家本として刊行した『美の法門』をテーマに、この展覧会では仏教と縁の深い所蔵品や、柳の書や著作・原稿などを展示する。 一方、教会(教皇庁)をはじめとする宗教権力や、権門からの注文によって、聖母像や磔刑像、あるいは新約・旧約聖書の物語をモチーフに、宗教絵画の傑作を次々生み出したのが、ルネサンス時代の画家たちだ。日本とイタリアの国交樹立150周年を記念して開催される特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の挑戦」では、ダ・ヴィンチの故郷イタリア、そして現在作品のあるイギリス以外の場所では初めて出品される《糸巻きの聖母》が注目されている。 イギリスの貴族バクルー公爵家が所蔵し、一般公開そのものが2009年という、まさに「秘蔵」の逸品で、赤外線調査で明らかになった籠の輪郭線などから、1501年、《糸巻きの聖母》に言及した書簡の描写と一致するとして、真筆であることが確定するという、ドラマティックな経緯・科学調査の結果も含めて、紹介される。美の法門─柳宗悦の美思想レオナルド・ダ・ヴィンチArt美思想のトビラと、ダ・ヴィンチの聖母

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