SIGNATURE2016年03月号
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中部イタリアにあるウンブリアは、緑豊かで美しい州だ。アッシジ、ペルージャ、オルヴィエートなど歴史ある街々が丘の上に並び、けがれなき自然を求めて観光客が押し寄せる。清貧と平和の聖人、アッシジのフランチェスコを生んだウンブリアの清らかな自然を眺めると心洗われる思いがする。中世の美しい街トルジャーノにウンブリア州を代表する『ルンガロッティ』がある。1950年創業の家族経営ワイナリーで、この州のワイン造りをリードしてきた名門だ。ワイン博物館、5つ星ホテル、レストランも所有し、多角的に地元のワイン食文化の普及に貢献している。ルンガロッティが誇る単一畑ワインがルベスコ・ヴィーニャ・モンティッキオ・トルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァだ。しっかりとした美しいルビー色で、フレッシュな赤い果実の香りに、ほのかにスパイシーなニュアンスが混ざり、とても優美だ。口当たりはシルクのように繊細で、酸がみずみずしい。厳格な味わいだが、調和のとれた中部イタリアらしい古典的な赤ワインだ。今回の一皿は西麻布にある名店『アルポルト』の「パッパルデッレタルディーボと鴨のラグー」。片岡護シェフは少量ずついろいろな       みやじまいさお|ワインジャーナリスト。京都生まれ。イタリアと日本でワインと食について執筆活動を行う。イタリアでは2006年から『ガンベロ・ロッソ・レストランガイド』の執筆スタッフを務め(日本経済新聞出版社)が好評。る。新著『最後はなぜかうまくいくイタリア人』料理が楽しめる懐石風イタリアンを提案し、日本人ならではの感性が溢れる、美しく繊細な料理を生みだしてきた。選び抜かれた食材が醸し出す絶妙なハーモニーは、まさに芸術品である。鴨の旨み、トマトの酸味、タルディーボのほのかな苦みが一体となった深みのあるソースが、薄めに打ったパスタのデリケートな味わいを包み込む。最後に添えられた黒トリュフが、華やかさを添えると同時に冬の静寂を想起させる。ウンブリアの厳しい冬に思いを馳せながら、日本ならではの繊細なイタリア料理と優美なワインとの出合いを楽しむ。冬の夜の心躍る喜びの時間である。21life withIsao Miyajima’s “Buona Italia!”Vol.15UmbriaAbbinamentoText by Isao MiyajimaPhotograph by Daisuke Akita手打ち麺パッパルデッレは薄めでデリケート。赤ワインとポート酒で2〜3時間、鴨を煮込み、炒めたタルディーボとトマトソースを加えたソース。黒トリュフを添えて。サンジョヴェーゼ70%にカナイオーロ30%という固有品種のブレンド。フレンチオークのバリック小樽で1年間熟成させ、その後3年半瓶熟成。時間をかけて深みある味わいを生む。Ristoranteリストランテ アルポルト東京都港区西麻布3-24-9 上田ビルB1FTEL:03-3403-2916営業時間:ランチ 11:30〜15:00(L.O.13:30) ディナー 17:30〜23:00(L.O.21:30)定休日:月曜・第1火曜www.alporto.jp第15回文・宮嶋 勲 写真・秋田大輔パッパルデッレ タルディーボと鴨のラグールンガロッティ ルベスコ・ヴィーニャ・モンティッキオ トルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァ 2005デジタル版バックナンバーも併せてお楽しみください。http://www.diners.co.jp/ja/sig/388/※QRコードまたは上記URLからのアクセスで 30日間ログイン不要でご覧いただけます。宮嶋勲の“おいしい”イタリアウンブリアパッパルデッレ タルディーボと鴨のラグーדルベスコ・ヴィーニャ・モンティッキオ”

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