SIGNATURE2016年03月号
42/74
りゅうばん2015年の4月に開館した『大分県立美術館』(通称OPAM)のコンセプトは「五感で楽しめること」「出会いのある場になること」「自宅のリビングにいるような寛ぎと開放感を感じてもらえること」「県民と一緒に成長すること」。設計を手がけたのは、建築界のノーベル賞ともされるプリツカー賞受賞歴を有する坂茂氏。陽光を取り込むガラス張りの1階ファサードは、折り戸による開閉式が採られ、コンセプトそのままの〝開かれた空間〟をもたらしている。館長を務めるのは、多岐におよぶアートの分野を研究領域としている新見隆氏。教鞭を執る東京(武蔵野美術大学)と、大分とを空路頻繁に往復しながら、OPAMを「唯一無二の芸術体験と創造の場にしたい。自然豊かで、古くから異国の文化を吸収し、それを地元の風土や風習と融合させてきた歴史を持つ大分県ならば、その可能性は無限大」と言葉に力を込める。 「オープン以前に大分の街を散歩した時に、この街の女性、それも30代以上と思われる女性の方々のファッションが、想像していたよりも遙かにお洒落だなと感じました。美意識が高い証しなんです。他者との関係性を大切にし、見る、見られるという意識も高い。そういった一定の層が暮らしている都市であれば、美術館は息づき、活気づくと確信しました。日常と非日常の間に横たわっているリラックスした時間と空間を潜在的に求めている。自由で、大らかで、美しいものを見て美しいと感じられる心さえあればいいんです。美術館を敷居の高い場所ととらえる必要はまったくありません」2018年には大分県で「国民文化祭」が催される。それを前に、新見館長が推し進めているのが「大分ビーナス計画」。「大分県全体が芸術の生涯学習の場」と位置付け、「県民全員がアーティスト」という考え方を浸透させていきたいという。 「難しいことじゃないんですよ。人は、生きていること自体が自己表現、すなわちアートなんですから」生きていること自体が芸術だ44大分県立美術館住所:大分市寿町2番1号 TEL:097-533-4500開館時間:10:00〜19:00(最終入館18:30)金・土曜は20:00まで(最終入館19:30)展示室以外の部分は無料。そこには「毎日でも気軽に足を運んでほしい」とのメッセージが込められている。ショップも充実。遊び心とアートマインドに満ちたグッズが並ぶ。2階のカフェには、期間限定の展覧会特別メニューも用意される。大分名物りゅうきゅうを使ったパスタなど、地産地消の多彩な料理が味わえる。 OitaCalm Waters Run DeepSpecial FeatureOPAM大分県立美術館
元のページ
../index.html#42