SIGNATURE2016年03月号
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シャングリ・ラのヤク5764   にむら じゅんこ/ライター、翻訳家、比較文化研究者。パリ第四大学留学後、長年のフランス暮らし、3年間の上海暮らしを経て、東京大学総合文化研究科博士課程在籍。近著に『クスクスの謎』(平凡社新書)などがある。ーちゃんは軽いアトピーもあるという理由もあって、「消化」を第一に献立を組むようにしているそうだ。エミリーちゃんが好きな「奶糊」というのは、中国ではよく離乳食として食べられているものだが、シャオジェさんは、市販されているインスタントのものではなく、自分で選んだ信頼できる米をミキサーで粉状にする。牛乳を沸かし、米粉を少しずつ加えながら撹拌してできる糊状の甘くないミルク粥だ。これに、山芋、白菜、ニンジンなどの小さく切った季節の野菜を入れる。たんぱく源は、豆腐などの大豆由来のものが中心。だが、シャングリ・ラに住んでいた夫妻が時に与えているのがヤクの肉。彼らの店の、知る人ぞ知る裏メニューでもある。標高3000メートル以上の高地で草を食べて暮らしているヤクは、昔ながらの方法で放牧されている。ホルモン剤や抗生物質などを一切投与されていなければ、公害とも無関係。極めてクリーンな環境で育ったヤクの肉は軟らかく、臭みもなく、栄養価も高く、美味で、理想的なたんぱく源。保護動物で流通が限られているだけに値段は張るが、安心して子供に与えられるたんぱく源だ。ヤク鍋には、雲南の特産物のきのこを添えて。雲南の山岳部で採れた天然きのこは、子供の成長に欠かせないビタミンB2 が豊富なのだ。number29Photos & Coordination by Yuji Enomoto1.奶糊を食べるエミリーちゃん。2.手作りの米粉で作った新鮮な奶糊。3.エミリーちゃんとシャオジェさん。4.新鮮なヤクの肉。赤身が多く軟らかく、臭みはほとんどない。5.レストラン『幸福厨房』の外観。6.お店の人気裏メニュー、ヤク鍋。スープは、チベットサフラン入りの豚骨味。まるで九州ラーメンの汁のようなこってり味。雲南名物のきのこを添えて。7.家庭的なリラックスしたムードの店内。ランチやディナータイムは学生と外国人客で一杯に。47Yunnan China

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