SIGNATURE2016年03月号
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      名だたるジュエリーメゾンで経験を積み、2009年にロジェ・デュブイのプロダクトデザインディレクターに就任したリオネル・ファーヴル氏。ファインジュエリーのデザインで培ったノウハウをメンズ、レディス両ラインに注ぎ込み、ロジェ・デュブイをさらに洗練の極みへと導く。それは時計の精度だけを重んじるのではなく、外観の美しさを大切にするロジェ・デュブイの軸足を、さらに強固なものとしているようだ。そんなファーヴル氏に、新作「ブロッサムベルベットブルー」のデザインコンセプトや製作過程の秘話を伺った。 「1940年ごろ、上流階級の女性たちは、パウダーケースをジュエラーにオーダーしていました。職人たちは女性たちを喜ばせるために、宝石やエナメルを使った優美な花々でケースを装飾しました。この新しい『ブロッサムベルベットブルー』のデザインは、そんな古き良き時代に想を得ています」このコンセプトを実現するためにファーヴル氏が選んだ素材は、ガラスのように透明度の高いエナメル素材。さらに最大限の光を文字盤に集めて女性の腕元を輝かせるために、ファーヴル氏はエナメルに彫刻を施すことにした。 「エナメルはとても脆い素材です。そのエナメルに彫刻をするには、非常に高い技術が必要でした。そこで私はジュネーブ在住のエナメル職人のもとを訪れて製作を依頼したのです。彼は世界一の技術を持つといわれるエナメル職人ですが、そんな彼でさえ『エナメルを彫刻するなんて!』と最初は難色を示しました。でも、結果的にはこんなに可憐な花々を咲かせてくれました。彼は後に『エナメルの表現力を高めるいい経験になった』と言ってくれましたよ」エナメルを彫刻することで生まれた立体的な花々は、ダイヤモンドがセットされた軸で文字盤に埋め込まれた。その花々をマザー・オブ・パールとダイヤモンド、鏡面仕上げの枠がまばゆく輝かせている。まさに女神のような神々しさだ。もともとジュエリーの世界でクリエイティビティを発揮していたファーヴ 「もちろん最初は戸惑いましたよ。で 「時計は着ける人の個性を引き出すもル氏。時計という非常に限られた面積の中でデザインをすることに窮屈さを感じないか尋ねたところ、こんな答えが戻ってきた。も、漏斗を通る水が勢いをぐっと増すように、制約は私の創造性をさらに高めてくれたと思っています」の。ぜひあなたの個性を輝かせるための時計選びをしてほしい」と語るファーヴル氏。高度な技術によるユニークな「ブロッサムベルベットブルー」を身に着ける女性は、きっと聡明でエレガントな個性を放つに違いない。ロジェ・デュブイは、唯一無二の女性の輝きを演出してくれるブランドなのだ。じょうご521969年生まれ、ジュネーブの装飾美術学校でジュエリー・メーキングを専攻し、1990年に同校卒業。その後パリの国際デザイン学校に進み、ファインジュエリーを専門とする。パリとジュネーブの一流有名店で働いた後、2009年3月にロジェ・デュブイに入社。現在、プロダクトデザインディレクターとして時計のニューデザインラインを手がける。上:ファーヴル氏が描いたデザイン画。ブルーのほかに「ブロッサム ベルベット ピンク」もある。下:フェミニンな印象のケースの中には、ロジェ・デュブイの自社製ムーブメントが内蔵されている。正確性という時計本来の大切な要素も、ロジェ・デュブイは忘れてはいない。リオネル・ファーヴルプロダクトデザイナー、リオネル・ファーヴル氏が語る新作「ブロッサム ベルベット ブルー」

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