SIGNATURE2016年05月号
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かんじょうれきめいしゅうおうしょうぎょうじょ18ColumnSignatureText by Mari HashimotoExhibition InformationExhibition Informationはしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。会期:2016年4月9日(土)〜5月22日(日)開館時間:9:30〜17:00※4月29日以降の毎週金曜は19:00まで※入館はいずれも閉館の30分前まで休館日:月曜(ただし5/2は開館)会場:奈良国立博物館 東新館・西新館(奈良市登大路町50)公式サイト www.narahaku.go.jp/お問い合わせ 050-5542-8600(ハローダイヤル)会期:2016年4月12日(火)〜5月22日(日)※会期中展示替えあり開館時間:9:30〜17:00(※入館は閉館の30分前まで)休館日:月曜会場:大阪市立美術館(天王寺公園内)公式サイト www.osaka-art-museum.jp/お問い合わせ 06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)命蓮が托鉢のために法力で飛ばした鉢が、山崎の長者の米倉をのせ、信貴山まで運んでしまう。命蓮は米俵だけを返すことを約し、鉢に載せた米俵が空を飛んで長者の家の庭に落ちた、とするエピソードを描いた。出展作の中には平安時代初期に施入された金銅鉢(重文)も。王羲之の真筆は現在地上に1点も存在しない。残っているのは拓本や模写だけだが、その中でも本来の筆致をよく伝えるとされるもののひとつが、『集王聖教序』。長安の弘福寺の僧懐仁が王羲之の書を集め、7世紀に碑に刻したものから取った拓本が本作である。国宝《信貴山縁起絵巻 山崎長者巻》(部分)奈良・朝護孫子寺蔵《集王聖教序》王羲之 唐・咸亨3年(672年)兵庫・黒川古文化研究所蔵日本美術の冒険 第23回文・橋本麻里国宝《信貴山縁起絵巻 山崎長者巻》(部分)奈良・朝護孫子寺蔵国宝《灌頂歴名》空海 平安・弘仁3年(812年)京都・神護寺蔵(※展示期間 4月12日〜24日)特別展―朝護孫子寺と毘沙門天王信仰の至宝―特別展―日中の名筆 漢字とかなの競演 『源氏物語絵巻』『伴大納言絵巻』『鳥獣人物戯画』とともに、四大絵巻(すべて国宝)のひとつに数えられるのが『信貴山縁起絵巻』だ。『鳥獣人物戯画』と『源氏物語絵巻』は昨年公開されたが、今年は『信貴山縁起絵巻』のターン。朝護孫子寺(奈良県生駒郡)、俗に「信貴の毘沙門さん」と呼ばれるこの寺は、平安時代にはすでに衰微していた。それを中興した命蓮上人にまつわる奇跡譚──鉢が空を飛び、米俵は舞い上がり、剣を手にした護法童子が空を駆けるという不思議な物語が、山崎長者巻、延喜加持巻、尼公巻の全3巻にわたって展開する。今展はこの3巻すべてを、全会期を通じて同時公開する史上初めての展覧会。ほかにも同時代に制作された『粉河寺縁起絵巻』(国宝)や『辟邪絵』(国宝)、朝護孫子寺の毘沙門天信仰に関わる仏像など、寺外の名品も同時に公開される。 絵巻が平安時代末期の作品であるのに対して、空海の書は平安時代初期。日中で書聖と崇められる王羲之はさらに遡り、4世紀(東晋)に生きた政治家だ。甲骨文に始まる中国の文字は当初、神のものとして骨や金属に刻まれ、やがて始皇帝の時代に皇帝の命を石に彫るようになり、王羲之に至って個人の感情を、より自由な紙に筆で書いて伝える存在となった。以降の欧陽詢ら初唐の三大家、蘇軾ら宋の四大家を経て、明末清初の王鐸らに至る中国の書作品約90件、篆刻約20件、日本からは平安古筆の名作を経て江戸時代に至る約120件など、国宝・重文を多数含む約230件を通じて、中国から日本へ筆法がリレーされ、独自の発展を遂げていく様を俯瞰することで、「書とは何か」が見えてくるはずだ。しぎさんえんぎえまきちょうごそんしじみょうれんあまぎみのまきこかわでらえんぎえまきへきじゃえそしょくおうようじゅんArt2国宝 信貴山縁起絵巻王羲之から空海へ国宝4大絵巻物の一つと日中書聖の名筆の競演

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