SIGNATURE2016年05月号
37/74
43Column 3Column 1Column 2Tomie Ohtake Untitled, 1966Oil on canvas 136×130 cmPhoto Jeremy Haik, Courtesy of Tina Kim Gallery左:Sculpture Garden, The Noguchi Museum, NY. © The Noguchi Museum. Photo: George Hirose右:Installation View, The Noguchi Museum, NY. © The Noguchi Museum. Photo: Elizabeth FelicellaTomie Ohtake Untitled, 1962Oil on canvas 60×120 cmInstallation ViewPhoto:Jeremy Haik, Courtesy of Tina Kim Gallery 世界的に知られる彫刻家・画家・プロダクトデザイナー、イサム・ノグチ。そんな彼が自身の作品のために生前に設立しデザインを手がけたことで知られるのが、ニューヨーク・クイーンズ地区にある『ザ・ノグチミュージアム』(旧称・イサムノグチ庭園美術館)だ。もともとは写真印刷工場だった建物を改装した館内には、ノグチの業績の核をなす北米最大規模のコレクションが展示され、学生や美術ファン、研究者が国内外を問わず訪れる。 幼少時は日本で過ごし、日系アメリカ人だった彼が禅にインスパイアされたのは京都の禅寺だったという。美とミニマリズムと調和を追求した数々の作品と静謐な空間、苔むす石庭公園。大都市ニューヨークの片隅で、静寂が織りなす禅の世界をたっぷりと堪能することができる。しじまベッカー・クラフラ著『One Zentangle A Day』Quarry Books刊日本語版『ゼンタングル 瞑想アートを描く』ガイアブックス刊 禅の精神を1850キロ離れた南米で追い続けた画家がいる。日系ブラジル人アーティストの大竹富江だ。1913年に京都に生まれ、1936年に移民としてサンパウロへ。現地で結婚、家事と育児に追われ、「絵の具の混ぜ方もわからなかった」という彼女が創作活動を始めたのは30代後半のこと。はじめは抽象画を、のちに版画や彫刻でも名だたる作品を残し、2015年に101歳で亡くなるまで創作活動を続けていた。 ブラジルの近代アート史では抽象画の巨匠として知られる大竹だが、その作品からは力強いタッチの中に潜むミニマルな美を通じ、故郷を想い、異国で禅や書に心を通わせ続けた画家の強い精神がうかがえる。この3月には約20年ぶりの北米個展がニューヨークのティナ・キム・ギャラリーで開催。1950年代から2010年にかけて描かれた17点が展示され、禅ブームの渦中にある現地で好評を博した。 ここ数年、欧米で大ブームになっているのが大人向けの塗り絵。電子書籍の台頭によって減少した書籍の売り上げすら、この大人塗り絵のセールスによって盛り返すほどの勢いなのだという。その核の一つが「ゼンタングル」(禅+Tangle=絡み合う)という名のパターンアート。動植物や風景をモチーフにしたモノクロの細かなパターンに、ひたすら色鉛筆やマーカーで色を塗り重ねていくのだが、そのさまは、まるで写経そのもの。日々の煩悩から心を解き放ち、瞑想のごとく無心で色を塗る。マインドフルネス(心のエクササイズ)の手段として誰でも楽しめる「禅」アート。禅はいまや人々のライフスタイルにさまざまな形で溶け込んでいるのだ。Tina Kim Gallery525 West 21st Street, New York, NY 10011TEL: +1 212 716 1100 http://tinakimgallery.comThe Noguchi Museumザ・ノグチ・ミュージアム9-01 33rd Road (at Vernon Boulevard), Long Island City, NY 11106開館日:水〜金曜 10:00〜17:00/土・日曜 11:00〜18:00/月・火曜休TEL: +1 718 204 7088 www.noguchi.org/「禅とは生活の技術である」̶̶イサム・ノグチ101歳の画家が見た禅のかたち̶̶大竹富江の画業新感覚パターンアートとマインドフルネス
元のページ
../index.html#37