SIGNATURE2016年05月号
41/74

「やむちん」でいただく郷土料理しんまんにむら大学留学後、長年のフランス暮らし、3年間の上海暮らしを経て、現在、鹿児島大学常勤講師。近著に『クスクスの謎』(平凡社新書)などがある。に栄養と癒しを与えてくれるものを表す言葉だとい1   う。食べ物は命の薬であるという彼らの食文化には、単なる栄養成分やカロリーなどの数字にはけっして還元されることがない、東洋思想の深遠な生命観が宿っていることが理解できる。芽瑠ちゃんが住んでいる読谷村は、沖縄本島中部の西海岸に広がるのどかな村。焼物や織物などの伝統工芸が根づいており、やむちん(焼き物)の里として知られている。この村の村営保育園では、36年前からこの村で焼かれた焼き物を給食に使用しているという。幼い頃から子供たちに本物に触れる機会を与えたいという願いからだが、幼児たちの手には焼き物は重くて割れやすい。だが、割れやすいからこそ、両手で大切に扱うという心を育てることに繋がっていることも事実である。大量生産されたプラスティックや樹脂ではなく、ぽってりとした素朴なフォルムに、南国らしい鮮やかな色合いのやむちんでいただく「ヌチグスイ(命の薬)」。土から生まれ、いつかは土に還るやむちんだからこそ、自然との一体感を肌で体感できる。実は、芽瑠ちゃんのおじいちゃんは、沖縄を代表する陶芸家の山田真萬さん。大自然の息吹が感じられるおじいちゃんの器を、物心つく前から使っている芽瑠ちゃんが羨ましい。じゅんこ/ライター、翻訳家、比較文化研究者。パリ第四47Photographs by Koji Takanashi Coordination by Mizuho Takanashinumber30Okinawa

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る