SIGNATURE2016年06月号
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気の遠くなるような年月を経てもなお、創造の手を止めぬ大地。アメリカ西部、グランドサークルと呼ばれるこの一帯は、地殻変動による隆起と沈下を繰り返し、さらに風雨とコロラド川による浸食により、世界に比類のない驚異の原風景を今に残すに至っている。そのほぼ中心、荒涼とした大地の中に不思議なコンクリートの建造物が並ぶ。それは一見、アメリカに端を発した「ミニマルアート」の作品のようでもあり、周囲の自然と一体化しながらも自らの主張を怠らない。それが『アマンギリ』だ。そもそも『アマンギリ』は、近郊のレイクパウエル付近に建設が予定されていたという。それを白紙にし、現在の地へと導いたのが、アマン創始者のエイドリアン・ゼッカ氏である。彼は近隣の景勝地・ホースシューベンドからインスピレーションを受け、同形の天然岩が迫り出すこの地へとリゾート計画を移したのだ。その天然岩こそ、現在も『アマンギリ』のシンボルとして屋外プールの中央に君臨する特別な場所となっている。迫り出した岩を囲むプールに浮かんでいると、母なる大地に優しく抱かれているような安堵感に満たされる。特別なのはそれだけではない。リゾートに到着して、最初に目を奪われるのがエントランスラウンジでの光景だ。ガラスのない窓枠の向こうに広がる青空と海のような砂漠、雪山のようにも見えるメサ(卓状台地)の、一見無機質で不思議なランドスケープが、ゲストに平穏と静けさをもたらしてくれる。 『アマンギリ』はサンスクリット語で「平和なる山」を意味する。リゾートは、途方もなく広大な敷地を2億年もの年月を経て造形されたメサが囲っている。客室は砂漠を見渡す「デザート・ビュー・スイート」と、奇岩が迫る「メサ・ビュー・スイート」に分かれているが、どちらも周囲の環境に溶け込むようなシンプルかつ高潔なつくり。ベッドからもソファからも、バスタブからも、一日何度も光と影が変化する大自然の景観を楽しめるように工夫がされている。また、アマン随一の敷地面積を誇るスパ内の屋外ウォーターパビリオンでは、間近に迫るダイナミックな地形と手つかずの自然が心身を浄化し、パワーをゆっくりと高めてくれる。朝日を浴びて金色に輝く岩山を眺めながらの朝食、「星を探す部屋」と呼ばれるテラスで、時間とともに刻々と移りゆくドラマチックな夕景、そして夜空を埋め尽くす星の下で楽しむディナー。すべてが記憶に長く残ることだろう。右:メサの上から見るとリゾートは巨大な渓谷の中に佇んでいるのがわかる。左上:国道沿いにある全米屈指の絶景ポイント「ホースシューベンド」。コロラド川の浸食によって200万年かけて垂直に削り取られた約300mの断崖絶壁。左下:リゾート近郊の町・ペイジ近くにある赤い砂岩の渓谷「アンテロープキャニオン」。わずかな隙間から差し込む光が織り成す色彩と陰影が神秘的な表情を見せてくれる。     Hotel Information38アマンギリ1 Kayenta Road, Canyon Point Utah. 84741-0285, USATel: (1) 435 675 3999日本語対応フリーダイヤル0120-951-125(平日10:00〜19:00)E-mail: amangiri@amanresorts.comwww.aman.com

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