SIGNATURE2016年06月号
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の場所は、朝食と夕食のタイミングに限り、2階にある2室のスイートルームのみが独占できる指定座席となる。部屋数はたったの4室。それだけで  温泉に浸かってご馳走を食べて――どこか選ばれし者の特別感を味わうには充分だが、より格別な雰囲気を醸し出しているのは、ここが6年前に宿として生まれ変わる以前、とある企業の迎賓館として存在していたことにも理由があるだろう。千住博氏の絵画がさりげなく飾られ、壁の大理石の模様は緻密に合わせられている。その説明を聞くより先に、上質な趣向が訪れる者を包み込んでしまうのだ。それは、火山の国である日本が享受してきた幸福である。予約至難で知られる宿、『ふふ』の系列宿でもあるここが、食の期待を裏切ることは無論ない。けれど、この場所でここにしかない〝眺め〟に浸りきってみたならば、温泉の幸福も、その設定によって、染み入る度合いが異なることを実感することになる。さて次は、眺めのいい熱海の奥座敷へ。獲れたての地魚が供されることはもちろん、デザートまで全7皿で構成される夕食は、味の起伏に満ちてストーリーを展開する。この宿の温泉は地下の大浴場のみであるが、部屋ごとに予約制の貸し切りとなるため、存分に湯を堪能し、そしてゆるりと食を楽しむことができる。Hotel Information43ATAMI 海峯楼静岡県熱海市春日町8-33TEL: 0557-86-5050http://www.atamikaihourou.jp/

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