SIGNATURE2016年06月号
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まず彼らが取り組んだのが、窯元同士が協力し合うようにすること。有田には150もの窯があるが、実は隣同士の窯でも交流がないのは普通のことだったのだそうだ。そこで柳原は、難しいデザインを形にするためのアイデアの交換や、外国人デザイナーのアテンドなど、窯元同士が助け合わなくては前に進めない状況をつくることで、10の窯をひとつにまとめることに成功した。また、カースティ・ヴァン・ノートのように世界的には無名の若手から、スウェーデンを代表するガラス・陶芸デザイナーのインゲヤード・ローマンのようなベテランまで、年齢も国籍も多様なデザイナーたちの選定にあたっては、「作り手とコミュニケーションがとれる人」を判断基準のひとつとしたことが功を奏し、職人とデザイナーの間には、お互いのレベルを引き上げ合うような信頼関係が生まれていたという。こうして作られた17のコレクションは、いずれも従来の有田のイメージにはとらわれない、しかし確実に有田ならではの技術力が反映された、ハイクオリティのものばかり。華やかな装飾で知られる『香蘭社』や、青白磁で有名な『藤巻製陶』なども、意外な表現で新たな可能性を切り拓いている。日本国内ではこの秋の世界一斉販売開始に合わせ、まず有田で、そしてデザインウィークの時は東京でもお披露目イベントを考えているそうだ。今後は「2016/」をきっかけにして、有田を世界のクリエイターが訪れる場所にするべく、クリエイティブなプラットフォームを築いていくというから楽しみだ。上:ずらりと並んだ17のコレクション(15スタンダードと2エディション)。日常使いのテーブルウェアから花瓶などのインテリアアイテム、アクセサリーまで、見て美しく、使ってうれしいプロダクトが揃った。右下:伊万里鍋島焼窯元『畑萬陶苑』と組み、過去のアーカイブから手描きの絵付け技術の発見と再構築に挑戦したショルテン&バーイングス。作品はエディション。2016株式会社 佐賀県西松浦郡有田町赤坂有田焼卸団地電話 0955-42-2016www.2016arita.com/*2016年5月現在、商品の取扱先は未定写真・シェルテンス&アベネス 60Photographs by Scheltens & Abbenes2016/ Collection世界に広がる有田焼の美〜2016/ コレクション
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