SIGNATURE2016年06月号
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「Hands on Design統技術を継いだ手仕事、顔の見える職人たち、産地の風土を伝える素材――プロダクトデザインの世界においても〝ストーリーのあるもの作り〟の重要性が謳われるようになって久しい。手間隙をかけて作られたものを日常使いする豊かさに、幅広い層が気づいてきたということだろう。世界的に広がる、いわば工芸回帰の風潮のなかで、ミラノを拠点にするシイナ+ナルディ・デザインが2015年に立ち上げたのが」。職人と、世界を舞台に活動するデザイナーとを出会わせ、多くの文化に共通する「普遍」を形にして暮らしに新しい体験や価値観を提供し、伝統工芸の技術を未来へと繋いでいこうというのがブランド設立の趣旨だという。2年目となる今年のミラノサローネでは、20名のデザイナーとイタリア、キルギス、日本の15の工房とのコラボレーションによる31シリーズを発表した。ガラス、漆、木工、茶筒、金網など多彩な工房が参加するなか、陶磁器工房としては肥前吉田焼の『224ポーセリン』と、有田焼の『李荘窯』の2工房が参加。前者はヴェネツィアの建築事務所、カンツ・アルキテッティと、ロッテルダムを拠点とするデザインデュオ、ミナーレ&マエダ、後者は同じくカンツ・アルキテッティと、ヴェラーノ・ブリアンツァで活動する若手デザイナーのロベルト・シローニと組んだ。こうした試みで歴史ある工房が新たな視点を発見し、デザイナーたちにとっては大きな学びの場になる。自由な発想とそれをかたちにする技術力のコンビネーション、今後の展開にも注目していきたい。様式にとらわれないイタリア発の多国籍ブランド224 shop+saryo佐賀県嬉野市嬉野町下宿乙909電話 0954-43-1220 www.224porcelain.com/李荘窯業所佐賀県西松浦郡有田町白川1-4-20電話 0955-42-2438 www.risogama.jp上:ミナーレ&マエダが手がけたテーブルウェアシリーズ「CADCAM」。ジャグ(L)4,500円、ジャグ(ミルク)2,500円、カップ 2,875円、シュガーボウル 8,750円(すべて税抜)224ポーセリンは有田や波佐見の下請け産地だった肥後吉田(佐賀県嬉野市)で生まれた新しい磁器ブランド。左:物事の背景にある事象を大切にした詩的なデザインが特徴のロベルト・シローニと組んだボウルのセット「Tanka」。卓越した技術と発想力で知られる李荘窯は料理人からの信頼も厚い。  伝61for Hands on Design224 porcelainfor Hands on Design李荘窯

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