SIGNATURE2016年08_09月号
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が今も暮らしているが、より肌の色が黒いウロ族は、古代民族として位置づけられている。しかし時代とともにアイマラ族やケチュア族との混血が進み、現在純血のウロ族はいなくなってしまったという。それでもウロ族特有の浮島生活は今も継承されている。浮島はトトラ(カヤツリグサ科)と呼ばれる、ティティカカ湖に自生する水草を何層にも重ねて造られる。上陸すると、ふわふわして足元が多少心もとないが、厚さは4メートルほどある。300人以上が生活する大きな島や、学校や教会のある島もある。浮島は風で流されることがあるので特定の住所は持たない。また家族が増えて面積を広げたりつなげたり、独立する際は切り離したりと自由自在だ。さらにウロ族はトトラ一つで何でも作る。浮島のほかにも、船も家もベッドも帽子もトトラで編む。さらに炊事の燃料もお茶もトトラだ。茎の部分はヨウ素を含むため食料ともなるという。たった1種類の植物で生活のほとんどをまかなってしまうのだ。また、浮島では鶏やブタなどの家畜を飼育し、腐食したトトラを土代わりにした畑でジャガイモまで栽培している。まさに究極の地産地消だ。しかし伝統的な生活様式を営む彼らにも、現代文明の波は少しずつ押し寄せてきている。近年はペルー政府の援助により、屋根にソーラー発電が設置され、テレビや電話のある近代的な生活を送っているウロ族も少なくない。トトラの島々が浮かぶ、太陽に一番近い湖TITICACA■e Golden Lake Floating in the Skyトトラは成長すると丈が4メートルにもなる。刈り取ったトトラを束ねて1か月ほど乾燥させる。束をばらして上に敷き詰めれば島の完成。腐ってきたらまた上から新しいトトラを補充する。島の寿命は10〜15年。島に上陸すると懐っこい笑顔で出迎えてくれ、家の中や調理の様子などを見せてくれる。57  

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