SIGNATURE2016年10月号
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年の秋で6年目を迎え、毎年恒例となった美食の祭典「ダイナースクラブフランスレストランウィーク」。フランス料理を身近に感じる機会として回を重ねるごとに充実したイベントへと成長している。イベントの提唱者のひとりである巨匠アラン・デュカス氏は今年、ひとつのテーマを掲げた。それは「ディシープル(=継承者)」。アラン・デュカス氏をはじめとする世界的に著名な日仏のグランシェフ5人が、自らの料理哲学を受け継ぐ若手シェフをそれぞれ3〜4人推薦し、活躍の場を与えるというものだ。ディシープルに推薦された若い世代のシェフたちは、「フランスレストランウィーク」の期間中、さまざまなイベントに参加する。師から学んだ料理を自らのスタイルに高めた彼らは、素材も表現もさまざまなその料理を通して、同世代の心に響くフレッシュなフランス料理を印象づけることだろう。さらにアラン・デュカス氏に選ばれたディシープルの言葉に耳を傾ければ、彼らが受け継いだ料理に対する姿勢、日々実行する仕事の流儀が見えてくる。 「私がデュカス氏から学んだこと、それは、〝引き算の料理〟です。何を引くべきなのかを考えなさいと、言われ続けました」。そう語るのは大阪のフレンチレストラン『エッサンシエル』のオーナーシェフである大東和彦氏。大東シェフは24歳でパリに渡り、『プラザ アテネ』内のレストラン『ルレ・プラザ』で、8年弱の間、デュカス氏に師事した。自らのレストランを「エッサンシエル」(=本質)と名づけたのも、食材と真摯に   今 I         対峙し、その本質を引き出すデュカス氏の料理のエスプリからだ。デュカス氏は、大東シェフが日本の食材、地元の旬の食材を使い、日本でしか味わえないフランス料理を作っていることを心から賞賛し、自らの料理哲学の継承者としてディシープルに任命した。その手法はまさに食材を最大限に生かす「引き算の料理」だ。デュカス氏からディシープルに任命されたことに対して、大東シェフは責任を感じつつも、「フランス料理が日常の食事の選択肢になるよい機会」と、自らの店でメニューづくりに取り組んでいる。大東シェフが日本の食材を用い、「フランスにはないフランス料理」を作る一方で、もうひとりのディシープル、『デルス』の関根拓シェフは、自由なパリの雰囲気の中で育まれる「フランスでもユニークなフランス料理」を提唱している。それはカクテルと料理のペアリングコースという大胆な試みだ。 『デルス』が、パリでも注目の店としてレストランガイド『FOODグ)』2016年版「ベストテーブル」に選ばれた頃、デュカス氏は関根シェフを訪ね、突然ふらりと店に現れたという。 「君の挑戦はロジカルで、料理の技術もレベルが高い。私の料理の要素も感じるが、全く異なる表現に昇華させたことが素晴らしい」。7、8年ぶりに交わした師との会話は、関根シェフの料理に対する賞賛の言葉であふれていた。継承者とは、教えを守るだけではなく、進化させながら次代へと紡ぐ人のことを言うのかもしれない。 『ベージュアラン・デュカス東京』のオープニングスタッフだった関根シェフが10年NG(フーディン余りの歳月を経て今思い出すのは、毛蟹のスープや、ポム・スフレといった「基本のき、」、クラシックな料理をデュカス氏に褒められたこと。基本技術習得の大切さはこのときしっかりと受け継がれた。さらにデュカス氏が繰り返し言っていた「習得し、実行し、伝える」、つまり「学んだら教える立場になる」というチームの成長の仕方が、自らの心の中にいつまでも刻まれていると続ける関根シェフは、料理以外、つまり仕事との向き合い方についてもデュカス氏の影響を受けている。 「フランスレストランウィーク」のために凱旋帰国する関根シェフ。東京・大阪の2都市で開催される限定特別レストラン「ラ・ターブル・ドゥ・ダイナースクラブ」でどのような料理を披露してくれるのだろうか。 「自分の料理はいわゆるフランス料理から離れているかもしれません。ただ、それを多様性のひとつとして温かく受け入れてくださるパリの方々のおかげで今の自分が存在しています。そんな自由で食べて楽しくなる料理を、故郷日本の食材でしっかりと表現できれば、と今から楽しみにしています」夏の力強い太陽を浴びた秋の恵みが実る頃、「ダイナースクラブフランスレストランウィーク」は始まる。継承された巨匠の味を確かめに、未来のフランス料理を予見する楽しみとともにフレンチレストランへ足を運ぼう。さらに秋が深まり、風が冷たく感じられる頃、美食の祭典は 『ベージュアラン・デュカス東京』、『ビストロブノワ』へと舞台を移し、シャンパーニュに彩られたフィナーレを迎える。【クリスマスディナーイベント】ビストロ ブノワ「秘密のカーヴ」テーマ:シャンパーニュ開催日 : 2016年12月9日(金)世界中のワインを知り尽くすジェラール・マルジョン氏をお迎えしてのレクチャー付き、人気のディナーイベント。今回のテーマはクリスマスらしくシャンパーニュです。まるでパリで過ごすクリスマスのようなひとときをお楽しみください。本イベントはシグネチャー11月号で告知の予定です。【会員限定会食会】ベージュ アラン・デュカス 東京での特別な一夜 イタリア アルバ産白トリュフと ドン ペリニヨンのマリアージュ開催日 : 2016年11月5日(土)「アルバ産の最高級トリュフ」を前菜からデザートまでふんだんに使った豪華ディナーと、ドン ペリニヨンのマリアージュをお楽しみください。本イベントの詳細は本誌85ページをご覧ください。14

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