SIGNATURE2016年10月号
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魅せる進化系チャイニーズ 「江戸中華」。今まで聞いたことのない言葉がついた店名は、食べる前からワクワクする。ちょうど1年前に、銀座のド真ん中に誕生した新しい店だ。インパクトのある名前のこの店のコンセプトは、ここ「江戸」と、日本の四季折々の食材を中華料理で味わうこと。和食の繊細さと中華料理の贅沢さをいっぺんに味わえるわけだ。オーナーシェフの山野辺仁さんは、「中華の世界を、日本の四季折々の素材でつくる贅沢さを味わってほしい」と言う。まだ若いシェフのつくる料理は、どれも繊細かつクリエイティブ。今後がとても楽しみである。上品な前菜でスタートするが、どれもこれもひと工夫がある。コースの合間にちょっと入れてもらったシュウマイは、〝国産の黒豚〟にこだわり、自家製のマスタードを玉ねぎとバターで練り込んだソースと和える。独創的で抜群の点心だ。よだれ鶏から発想した定番の「よだれ牛」は、尾崎牛に甜醤油を使い、蓮根やピーマンと合わせてある。肉の旨みとソースの甘い香りがほのかに残る。これではお酒が進んでしまうわけだ。「黄酒」と言われる中国米を醸造した紹興酒などがいくつもあり、この日は上海で最も親しまれているという「石庫門12年」をいただく。独特のコクと香りは身体に優しいそうだ。カウンターに陣取り、物静かなシ ェフの腕前を見ながら、時折こだわりの話を聞くのが楽しい。コースの最後の締めの一皿は、「担々麺」を選ぶ。麺は店のコンセプトどおりの稲庭中華麺だ。干すことで増す旨みとなめらかな舌触りは独特なものだ。爽やかなぶどう山椒と痺れのある四川山椒、そして隠し味に燻りがっこ、表面を金胡麻で仕上げた担々麺は、辛さの中にふわっとしたまろやかさを感じさせ、癖になること間違いなしだ。定番チャーハンも、我慢できなくなってお願いしたが、山野辺さんは快く笑顔でハーフサイズをつくってくれた。昼も夜もおまかせコースだけなのに、こんなちょっとしたフレキシブルなお店の気配りで、僕はいつも喜んでしまうのだ。こうなると、もうひとつの中華の住所:東京都中央区銀座8-4-21 保坂ビルB1F電話:03-3569-2520営業時間:12:00〜14:00(L.O.)*ランチは4名以上での予約のみ。 定休日:日曜・祝日16:30〜22:00(L.O.)*土曜日は予約のみ。銀座やまの辺 江戸中華稲庭中華麺で和の薫りを取り入れた「担担麺」、オリジナルの「よだれ牛」は、コースの中の一皿。おまかせコースは10,000円と15,000円の2種類。バターが香るシュウマイは、1個300円。*価格はすべて税抜です。オーナーシェフNumberPhotographs by Masaya Abe Text by Tomoyasu ShitayaHitoshi Yamanobe16今月の一皿山野辺 仁113
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