SIGNATURE2016年10月号
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センスの良いカレンダーにめぐり逢い、それを一ヶ月が過ぎる度にめくって、新しい月のページを眺めるいっときの時間が、私は好きである。これからはじまる新しい一ヶ月で何か良いことと出逢うような気持ちさえして来る。仙台の私の家に、今年はお気に入りのカレンダーが届いた。アンリ・マティスの作品を月毎に鑑賞できるカレンダーである。それぞれの作品の選択がいい上に、このカレンダーにはちょっとした工夫がしてある。カレンダーとともに作品の解説が一作一作入っている小冊子が添えられてあり、その対のページが真っ白になっている。そこに一ヶ月眺めたマティスの作品をはぎ取り、糊付けできるようになっている。一年が終れば、手元に一冊のマティスの画帖が残ることになる。丁寧に企画をしたものである。この手のものがこれまでなかったわけではないが、印刷の上がり、紙の選び方がこれほど上品なものは、これが初めてである。私の先輩のTさんの会社から贈られたカレンダーである。Tさんの会社は動物の医薬品の製造、販売をしている。世界でも優秀な企業だが、ヒヒーン、モーとか、ワンワンとかのオクスリの会社がマティスと言うのが微笑ましいし、センスがイイナと思った。自宅には部屋ごとに、いくつかのカレンダーが掛けてある。家族に犬6 がいるので、当然、犬の写真のカレンダーもあるし、私が海外へ美術館Text by Shizuka IjuinIllustrations by Keisuke Nagatomo
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