SIGNATURE2016年10月号
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写真・阿部昌也(山本氏ポートレート) 文・山下シオン1980年代から料理評論家として活躍し、『すきやばし次郎』の小野二郎さんをはじめとした築地の達人との親交もある山本益博さん。浅草に生まれ育ったという山本さんが、築地と出会ったきっかけは何だったのだろう。 「今から40年前、浅草の『弁天山美家古寿司』の本を書くことになったとき、先代の親方(内田榮一氏)に連れていっていただきました。僕は浅草出身ですが家が料理店だったわけでもないので、築地に行く機会なんてありません。マグロの選び方や、季節によってどのくらい味が違うのかなどについて教わりたかった。そのとき知ったのは、魚の選び方など魚に関する知識だけではなく、築地と料理人との間に絶対的な信頼関係があるということ。気候の変動や交通事情などで、時に   ぜざんきょ めとうそは高騰したり、安価になったりしますが、料理人たちは必要なものは値段を聞かずに買います。何よりも品質が第一なんです。売り手もそれがわかっているから、料理人の求めているものをちゃんと探してくれていて、目的に応じたものを買うことができるんです。また、どんな料理人も最初は先輩に魚河岸へつれていってもらって、一から教わり、選別できる目を養います。自分が主になれば、行きつけの店だけでなく、もっといいものを求めて他の店に移ることもできる。とにかく店の軒数が多くて、最高級品から大衆向けのものまで幅広い品揃えがあるところが、築地のすごいところですね」主人いしずえ  築地とは、一つのものを極める職人を育て上げる食文化の礎なのです。ナビゲーター  揚げるというのは、蒸すのと焼くのを同時にできることなんです。みかわ是山居早乙女哲哉〝世界唯一〟 の築地の旬を味わう山本益博やまもと ますひろ|1948年、東京・浅草生まれ。料理人の料理への技巧を「仕事」と表現した、料理評論のパイオニア。「ダイナースクラブ 銀座マスヒロ塾」では会食会のナビゲーターを務める。Masuhiro YamamotoSpecial FeatureTSUKIJI,The World-famous Fish Market and Beyond42

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