SIGNATURE2016年10月号
46/79
じねん眉という言葉が、典雅の中の典雅を意味するのであれば、「ドンペリニヨンP2|1998」こそ、シャンパンの白眉と言えるのではなかろうか。ドン ペリニヨンが、葡萄の当たり年にしか造られない、最高級のシャンパンであることは、ワイン通なら常識だ。最低でも8年以上の熟成期間を経てリリースされるのが常であるが、このP2は16年もの熟成をかけた特別な一本であるという。まさに、ドンペリニヨンの中の、ドンペリニヨンがP2なのである。先ごろ、P2をテーマにしたシークレットレストランが期間限定でオープンした。なんと、饗されるワインはP2のみ。それをコース料理で堪能しようという趣向である。ドンペリニヨンがこの企画に指名したのが、『NARISAWA』のオーナーシェフ、成澤由浩氏だ。成澤氏は、日本の地方風土が 白234 1 人者。ドンペリニヨン醸造最育む〝自然〟の精神を料理で表現する、革新的な「里山キュイジーヌ」で世界を魅了する第一高責任者リシャール・ジェフロワ氏によって成澤氏に白羽の矢が立ったのは、まさにそのクリエーション魂にある。そもそもP2の本質とは、自然から与えられた大地の恵みを、長時間の熟成をかけて、内なるエネルギーを爆発させる、その一点に集約される。それは、成澤氏の料理のスタイルに共鳴すると、ジェフロワ氏は語る。その想いに、成澤氏は5皿の特別料理で応えた。たとえば、1皿目は、成澤氏のスペシャリテのひとつ、土のスープをベースにした「大地」。P2のテロワールを存分に感じることができた。ジェフロワ氏と成澤氏は、P2のためのオリジナルの料理を創作するだけでなく、5つの皿それぞれにP2の温度を変えて、その多面的な奥行き(味わい)を段階ごとに引き出すというアイデアを盛り込んだ。それは非凡な試みだ。結果的に、コースを通じて実に多面的なるP2の潜在的な魅力を引き出すことに成功したのであった。白眉のP2と天才がスパークするダイニング。典雅ここに極まった瞬間である。EVENT REPORT2016年6月20日〜7月3日開催 P2.究極のドン ペリニヨン エクスペリエンス文・中村孝則(コラムニスト)ドン ペリニヨン醸造最高責任者のリシャール・ジェフロワ氏は、1954年のシャンパーニュ生まれ。医学博士号を持つシャンパン界の奇才だ。お問い合わせ MHD モエ ヘネシー ディアジオ 電話03-5217-97321.今年の「世界ベストレストラン50」で、アジア最高の8位を2年連続で獲得した、『NARISAWA』の成澤由浩シェフ。2.1皿目の中の「畑」。3.5皿目は、サフランとグレープフルーツのヌーヴェを添えたチーズのデザート。10度に冷えたP2との相性も抜群。4.16年の熟成から覚醒したP2の典雅な香りが漂う。52P2. MEET THE ULTIMATE DOM PÉRIGNONP2とNARISAWA、交差する2つのアート
元のページ
../index.html#46