SIGNATURE2016年10月号
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 i  日 I123456本酒の価値と魅力を発信する舞台として、その認知度も高まっている「SAKECOMPETTON」。2016年は、世界最多となる1483点から、厳格な審査を経て選ばれた受賞者の表彰式が行われた。回を重ねるたびに参加蔵数も増え、その品質や温度管理のレベルも確実に向上している。従来からある〈純米酒〉〈純米吟醸〉〈純米大吟醸〉〈吟醸〉4部門に加え、高価格帯で技術や味を競い合う〈Super Premum部門〉が今年から新設された。各部門の順位を発表することで、一般消費者にとってより実用性が高まる。こうして「おいしい日本酒の新たな基準」を目指すこの競技会の目的が、着実に広まりつつあるのだ。また、今年は協賛社による〈ダイナースクラブ若手奨励賞〉と〈JAL賞〉という新たな賞が創設された。ダイナースクラブによる若手奨励賞は35歳以下の最上位受賞の酒蔵に贈られる賞。日本の食文化の担い手となる若手を応援する「日本の食文化応援プロジェクト」の一環としてスタートした。この栄誉を手にしたのは、〈純米酒部門〉GOLD2位を受賞した松崎酒造店「廣戸川」の醸造責任者、松崎祐行さんである。まだ32歳の杜氏が辿った経歴について尋ねた。 「杜氏になったのは、僕が小さい頃から松崎酒造店の酒を造っていただいていた南部杜氏の方が震災後に過労で倒れ、現場復帰ができなくなったためです。僕も杜氏のもとでお手伝いはしていたので未経験ではなかったのですが、ノウハウは『福島県清酒アカデミー』という酒造りのひろとがわひろゆき 「米由来の甘みは大事にし、それでいて 「福島はもともと軟水といわれているん学校で3年間かけて教わりました。実践的な部分に関しては、現場で杜氏から学び、アカデミーを終えてからは自分が造りたいお酒に取り組むようになりました。今回受賞したのは5年前に初めて造ったお酒で、それから工夫を重ねてきました。蔵の基礎になる〝特別純米〟というお酒が賞をいただいたということは、すごくうれしいです。これが蔵の信頼につながっていけばよいなと思います」市販酒の中でも純米酒は日本酒の基本で、コストパフォーマンスに優れた、幅広い飲用温度帯で楽しめる日本酒が数多く存在するお酒。そのカテゴリーで選ばれた「廣戸川」の味には、どのような特徴があるのだろうか。ふくよかさと、香りは口の中に含んだ瞬間に広がるようなふくらみのあるお酒という部分を意識しています。そのまま召し上がっていただいてもいいですし、料理にも合う。常温でも冷やでも、もちろんお燗でもおすすめです」松崎酒造店は良質な水と米に恵まれた福島県岩瀬郡天栄村にある蔵元。若き杜氏は今後についても語った。ですが、うちの蔵は中硬水なので味わいもあります。ただし温度も会津よりはちょっと高く、すごく発酵しやすい環境なので、それをいかに抑えて低温でじっくり造るか、が一つの課題ではあります。このコンペティションは、日本酒のおいしさ、酒質を上げていくために、今後も挑戦すべき舞台だと思っています」1.各部門上位入賞者のうち、最も若い蔵元に与えられる〈ダイナースクラブ若手奨励賞〉を受賞した松崎酒造店醸造責任者の松崎祐行さんは、1984年生まれの32歳。2.松崎さんには、野原幸二・三井住友トラストクラブ代表取締役社長から賞状と副賞の目録が授与された。3.〈純米酒部門〉GOLD受賞上位3本。左から「あたごのまつ 特別純米」(宮城)、「廣戸川 特別純米」(福島)、「華鳩 杜氏自ら育てた米で醸した特別純米酒」(広島)。4.5.表彰式に続き同会場で開催された受賞パーティでは、各部門受賞者による受賞酒の紹介が行われた。会場には受賞酒の試飲ができる日本酒バーも登場。6.主要5部門のGOLD1位受賞酒。左から〈純米酒〉〈純米吟醸〉〈純米大吟醸〉〈吟醸〉〈Super Premium〉部門。70

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