SIGNATURE2016年11月号
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勝歴林史院をの塔有す頭る寺宝院泉と院し。て8大0原0の年山の々を借景にして造られた盤桓園は、立ち去り難い庭という意味を持つ庭だ。書院の柱や鴨居によって、風景を絵画のように切り取って観賞できることから「額縁庭園」の名でも親しまれている。江戸時代初期に再建された客殿で、緋毛氈の上に座り、都度点てられる抹茶と菓子をいただきながら庭を眺める。まずその迫力に圧倒されるのが、正面にそびえる五葉の松だ。枝が扇状に広がる姿は近江富士をかたどったと伝えられる樹齢700年の古木。俳人・高浜虚子はこの松を前に「大原や無住の寺の五葉の松」という句を残している。かつて勝林院にあった数十僧坊の筆頭たっちゅうばんかんえん た  格とされた古寺は、鎌倉時代の創建以来、勝林院歴代の長老の住房として使われていた。しかし時代は下り、高浜虚子が句を詠んだ昭和初期には約10年間、無住寺となっていた。その後、先代住職が寺に入り、庭や建物を修繕。昭和30年代に寺院を一般公開し、当時では珍しい抹茶と菓子で客をもてなす拝観方法を採用した。「目だけではなく、耳や舌などを用いて五感で大原の自然に触れ、自分と向き合う穏やかな時間を過ごしてほしい」と住職の藤井宏全氏。晩秋の夕暮れ、竹林の影が室内に入り込み、葉を揺らす風の音が心持ち寂しげに聞こえてくる。街の喧噪から遠く離れた山里には、1000年前から変わらない静寂が広がっている。宝泉院かつて勝林院の住坊だった小寺には、大原の自然を五感で愉しめる名園が残されている。立ち去り難き額縁庭園、800年の時を重ねる僧坊りちふにHosen-in Templeinformation京都市左京区大原勝林院町187電話:075-744-2409拝観時間:9:00〜17:00(受付終了16:30) www.hosenin.net/37庭に植えられているのは、竹林をはじめ四季折々の草花。秋は紅葉のほか、桔梗や曼殊沙華、秋海棠などが訪れる人の目を楽しませてくれる。また、庭には「理智不二」と名づけられた2連式の水琴窟が設けられ、竹筒に耳を寄せれば、甕に共鳴する水音に、しばし時を忘れるだろう。四季折々に豊かな表情を見せる庭園。住職の藤井氏は、紅葉に彩られた晩秋の夕刻が最も美しいと教えてくれた。

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