SIGNATURE2016年11月号
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写真・石塚定人 文・編集部 築 地市場をテーマにしたこの秋話題のドキュメンタリー映画『築地ワンダーランド』のプレミア試写会が、全国公開に先立ち開催された。移転が取り沙汰される話題の場所の映画とあってか、会場は上映前から静かな熱気に包まれていた。野原幸二・三井住友トラストクラブ代表取締役社長が「この映画が、日本の食文化を日本の国内外に広げていく、ひとつのレガシーとなることを祈念いたします」という言葉で締めくくったスピーチに続き、このひと足早い特別試写会に格段の花を添えたのは、江戸時代から魚河岸とゆかりの深い歌舞伎界からの〝粋〟なエピソードだった。築地市場内にある波除稲荷神社での成功祈願や魚河岸からの祝い幕など、歌舞伎と魚河岸は深い縁で結ばれている。その繋がりをよどみのない語り口で紹介してくれたのが、2か月という長丁場の襲名披露公演を控える中村橋之助改め八代目中村芝翫そのひと。 「私も10月から八代目中村芝翫。映画も10月全国公開ですから、なにかご縁があるような気がします。そして、私どもの歌舞伎座は木挽町、こちらの映画は築地。木挽町も築地もたいへん近うございます。含めて銀座ですけれども、やはりここが元気になってくれると華やかになるんではないでしょうか。また、私どもの歌舞伎もそうですけど、古くから人に支えられ、人の心のやさしさであったり厳しさであったり、またそれに繋がる伝統というものが、すべてこの映画に含まれていると思います」という挨拶ひとつで会場の耳目を一気に惹きつけるあたり、すでに千両役者の風格が漂う。築地の魅力について聞かれ、「築地の面白いところは、歩く歩幅ですよね。ひと足先に行くと、先取りし過ぎちゃなみよけいなり美食都市・東京を支えた築地魚市場の人びとの情熱̶̶。話題の映画『築地ワンダーランド』のダイナースクラブ主催によるプレミア試写会が、2016年9月3日、東京・有楽町の丸の内ピカデリー2で開催された。招待客で埋まった550席の会場。このひと足早い特別試写会に格段の花を添えたのは、江戸時代から魚河岸とゆかりの深い歌舞伎界からの粋なエピソードだった。築地市場に残る江戸っ子の心意気をさらりと語る達者な話芸で会場を沸かせた。野原幸二・三井住友トラストクラブ代表取締役社長(左)と、自分の本名の幸二が同じ漢字であるご縁を明かし会場の笑いを誘った橋之助丈。日本の食文化を応援します。84プレミア試写会築地と木挽町、映画と歌舞伎が、銀座でクロスする映画『築地ワンダーランド』Event Report半歩先行く築地の“粋”
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