SIGNATURE2017年01_02月号
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、いつもおびえているんです。超〝ビビリ〟なんですよ」と目の前の美女が言う。はにかんだ微笑は空気に溶け込むような透明感があり、華奢な肩は和服も自然と着こなせそうだ。シャーロット・ケイト・フォックスさんが日本を初めて訪れたのは2014年。NHKの連続テレビ小説『マッサン』で、ニッカウヰスキー創始者の妻・竹鶴リタをモデルにしたヒロインを演じ、一躍、時の人に。 「日本がどういう国なのかほとんど知らずに、オーディションを受けるために飛行機に乗りました。自分はどこへ行くんだろうと不思議な気分でした……」。300人近い応募者の中からエリー役に抜擢され、ドラマでは流暢な日本語も話題になった。 「日本語はまだまだ勉強中です。なぜ自分がエリー役に選ばれたのかはわかりませんが、おそらく、他の人を脅かすような雰囲気がなかったからだと思います」こうした謙虚さや、控え目なところがエリー役と響き合ったのだろうか? 「うーん……。私はすごくノーマル。普通の人間なんです(笑)。もしかしたらその普通さがよかったのかもしれません」生まれたのはニューメキシコ州の小さな           なれるんだと教えてくれました」村で、自然に囲まれて育った。 「子どもの頃は、何にでもなれた。宇宙飛行士にも憧れたし、お医者さんにもなりたかった……。その全部をかなえてくれるのが〝演じる〟ということだったんですね。両親は自由な精神の人たちで、どんな宗教や家庭環境でも、子どもはなりたいものに 「マッサンのエリー」として知られる彼女が、米国の大学で演劇専攻の修士号を取得していることはあまり知られていない。 「日本では不思議なことに、俳優になるために大学で演技を学ぶことがあまりないのですよね。大学院では演技指導の資格も取り、学びながら演技を教えていました」大学院の3年間は夏休みのたびに舞台女優として活動し、その活動が認められて米国俳優協会の会員になることができた。 「しっかり演技の勉強をしようと思ったのは15歳のときに、あるエージェントの女性からこう訊かれたからなんです。『あなたはメリル・ストリープになりたいの?それともメラニー・グリフィス?』と。しっかりした演技派女優か、可愛くてセクシーな女優かという意味だったんですが、私は、そこではっきり進むべき道を自覚したんです。子どもの頃にメリル・ストリープの『ソフィーの選択』を観て、衝撃を受けました。こんなことができる女優がいるんだ……と。彼女は演じるたびに進化を続けているすごい人。スーザン・サランドンも、70歳になるのにゴージャスで、たくさん好きな映画があります。シャーリーズ・セロンも素晴らしいですし、ヒラリー・スワンクも尊敬しています。『ボーイズ・ドント・クライ』での演技は本当にすごいと思う」 「アメリカの女優であるあなたが」 と質問しかけると、彼女がこうさえぎった。 「私はアメリカの女優ではなく日本の女優です。プロの女優になったのは日本でのことなのです。『マッサン』を収録していた日々は、何もかも初めての体験。文字どおり『未知との遭遇』の世界でした(笑)」2015年には、ブロードウェイ・ミュージカル『シカゴ』に出演。主役の一人であるロキシーを演じ、それまでの「おしとやかなエリー」のイメージとは違うもうひとつの顔を見せてくれた。 「私が演じたロキシー役は、ハシゴを下りて登場するのですが、その瞬間緊張しすぎて、照明がまぶしくて、目の前が真っ白になって、『私はもう死んだんだわ……』と思った瞬間、音楽が聞こえてきて。歌いだしたら正気が戻ってきました。死ななくてよかった!(笑)。ミュージカルに挑戦したことは大きな冒険でしたが、自分の殻を破るいい経験だったと思います。でも今では、落ち着いて、人生で美しいものをつくっていきたい……そうすることで、幸せになることを願っています」ストレートプレイ、ミュージカル、ドラマと多彩なジャンルを経験してきたが、最終的にフォーカスしていきたいのは、「フィルムの仕事=映画女優」だという。 「そのためには役を作り上げなくては……。日本が好きなので、今後も日本で活動を続け、アメリカと日本をつなぐ橋渡しになれればいいなと思います」日本の視聴者に愛される「ふつう」の女優は、連続テレビ小説『べっぴんさん』にも再登場し、スタッフとの再会を果たした。 「収録では、顔見知りの方々がたくさんいて実家に戻ってきたような気分でした。共演させていただいたすみれ役の芳根京子さんは、素晴らしい才能を持った方。現場では、みんなが彼女に恋していました。実力派の女優さんとしてこれからますます輝いていく方だと思います」真っ先に共演者を褒めるところも、すっかり日本人? 子〟のシャーロットさん。ほっそりとした首には、やはり和服が似合いそうだ。努力家で芯の強い〝大和撫「私16NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」に登場する靴店『あさや』のセットの一部再現と、番組で実際に使用した小道具や衣装、写真パネルなどでドラマの世界を紹介(一部展示替えあり)しています。(主催:NHKサービスセンター)会期:2017年5月7日(日)まで 11:00〜20:00会場:三宮ゼロゲート(仮称)神戸市中央区三宮町2-11-3 3階 入場無料 ※お休みは施設に準じますNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』展Information

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