SIGNATURE2017年01_02月号
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しゅんおくそうえんろくろてづく22はしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。 永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』 (集英社クリエイティブ)。明治時代までの七宝の釉薬は濁っているのが普通だったが、並河靖之は透明釉薬をはじめ、さまざまな色の釉薬を開発している。中でも色鮮やかな花鳥を引き立てる、独特の黒い背景を作り出した「黒色透明釉薬」は、並河作品のトレードマークとなった。会期:2017年1月14日(土)〜4月9日(日)開館時間:10:00〜18:00*3月24日〜26日、4月1日・2日・7日〜9日は夜間開館20:00まで(※入館はいずれも閉館の30分前まで)休館日:第2・第4水曜 会場:東京都庭園美術館(本館・新館)公式サイト www.teien-art-museum.ne.jpお問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)(1月25日、2月8日・22日、3月8日・22日)初代長次郎から当代まで、樂茶碗は轆轤を使わず、「手捏ね」によって制作され、へらによって土をそぎ落とすという彫刻的な手法で成形した後、ふいごで火を調整しながら1点ずつ焼成する。また今展では、樂家と関係が深かった本阿弥光悦が、樂家の窯で焼かせていた茶碗も出展される。会期:2016年12月17日(土)〜2017年2月12日(日)開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)休館日:月曜および12月28日(水)〜1月2日(月)、1月10日(火) 会場:京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町)公式サイト http://raku2016-17.jp/お問い合わせ 075-761-4111※【東京展】2017年3月14日(火)〜5月21日(日)、東京国立近代美術館に巡回*ただし、1月9日(月・祝)は開館《焼貫黒樂茶碗 銘 暘谷》十五代 樂吉左衞門|平成元年(1989年)|個人蔵《千利休像》春屋宗園賛 長谷川等伯筆|文禄4年(1595年)|重要文化財|表千家不審菴蔵※展示期間:京都会場のみ並河靖之《菊紋付蝶唐草模様花瓶 一対》(部分)泉涌寺蔵並河靖之《藤草花文花瓶》(部分)並河靖之七宝記念館蔵日本美術の冒険 第30回文・橋本麻里 金沢21世紀美術館の「工芸未来派」展が明らかにした現代美術と工芸の接近、そして三井記念美術館から各館を巡回した「超絶技巧! 明治工芸の粋」展で周知された、明治工芸の技術の高さなど、いま「工芸」という領域が新たに美術ファンの注目を集めている。 だが、素材や技法の重要さもさることながら、450年前の日本には強固なコンセプトに従ってつくられる、現代美術的な工芸作品が出現していた。中国、朝鮮半島の茶碗、あるいは雑器を茶碗に見立てて使うのではなく、日本で千利休が大成した「わび茶」のコンセプトを中核に創造された、樂茶碗である。利休の創意を受けて初代・長次郎が生み出した、すべてを削ぎ落とした静謐さと、内へ内へと沈潜し凝集する力を感じさせる究極の茶碗から、現・当主の樂吉左衞門まで15代。利休のコンセプトにどのようなかたちを与えるべきか、《大黒》《無一物》《ムキ栗》など、長次郎の名作をはじめ、それぞれの代の「回答」が一堂に会する、空前の展覧会が、京都と東京で開かれる。 一方、明治の超絶技巧工芸は、これまでさまざまな技法の作品・作家を集めた「グループ展」中心だったが、その中から個人の名が立ち上がりつつある。とりわけ注目したいのが、没後90年を迎える有線七宝の名手・並河靖之の、初の回顧展だ。伝統技法に新しい技術を加味した並河独自の七宝は、限りなく高度な技法とあふれるような色彩とで緻密に装飾の限りを尽くすという明治工芸の典型であり、輸出用美術工芸として大変な人気を博した。若冲人気にも通じる装飾への志向は、その対極にある「ワビサビ」を超えるのか? 工芸ブームの深層にあるものに、今後も注目していきたい。しっぽうすいColumnSignatureText by Mari HashimotoExhibition InformationExhibition Information並河靖之七宝展明治七宝の誘惑―透明な黒の感性茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術Art2一子相伝の黒樂と、透明な黒の感性

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