SIGNATURE2017年03月号
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2❶❷ColumnCSignature19花森安治の仕事 ―デザインする手、編集長の眼会期 : 2017年2月11日(土)~4月9日(日)会場 : 世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)開館時間 : 10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで休館日 : 月曜(祝日の場合はその翌日)公式ウェブサイト www.setagayaartmuseum.or.jp〈衣・食・住〉を基本にすえつつ、もののない時代には〈工夫とアイデア〉による豊かな暮らしを提案。30年間にわたり一切広告を入れず発行部数100万部に迫るまでに成長させた雑誌『暮しの手帖』を舞台に、表紙画からカット、レイアウト、新聞広告や中吊り広告まで、取材や執筆はもとより、制作から宣伝まで、すべてを手がけ、生涯を一編集者として生き抜いた花森安治の全貌を俯瞰する初の展覧会。はしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。 永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。 日本美術の冒険 第31回文・橋本麻里 NHKの連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の放送をきっかけに、あらためて脚光を浴びることになった花森安治は、昭和中期の、編集者にして文筆家、エディトリアルデザイナー、イラストレーターまで兼ねた、カリスマ的な出版人。 ドラマに登場したヒロイン小橋常子のモデルとなった雑誌編集者・大橋鎭子と共に、先駆的な生活家庭雑誌『暮しの手帖』を創刊したことで知られている。毎号の表紙イラストから、記事の企画、執筆、レイアウト、挿画、見出し文字のレタリングまでこなし、一貫した強固なスタイル、美学を雑誌に与える才能は、次の世代にマガジンハウスで活躍した天才的なエディトリアルデザイナー・堀内誠一とよく似ている。❶ 表紙原画、画:花森安治、『暮しの手帖』 (1世紀19号、1953年3月1日刊)に掲載、世田谷美術館蔵❷ 花森安治、東麻布の暮しの手帖研究室にて、1967年9月、写真提供:暮しの手帖社 花森が『暮しの手帖』を創刊したのは、終戦後間もない1948年9月。当初の誌名を『美しい暮しの手帖』と名乗ったこの雑誌は、まだまだ生活のための物資も十分に行き渡らない中、ただ生きるために生きる生活ではなく、工夫とアイディアを凝らした、美しく、豊かな暮らしを提案することで、窮乏から立ち上がろうとしていた人々を勇気づけた。 高度経済成長期のヒット企画だった徹底的な「商品テスト」では、トースターなら一家族が年間に食べる枚数の食パンを焼き、ベビーカーなら100キロを走行する、といった伝説的なテストを実施。果ては築15年の一軒家を購入し、ふすまやカーペット、台所に火を放ち、何秒でどのくらい燃え広がるか、どんな消し方がよいのかまで、徹底的に調べ尽くすなど、消費者・生活者の側に立った編集姿勢が支持され、一切広告を掲載することなく、100万部に迫る発行部数を記録。花森の死後も、現在にいたるまで刊行が続けられている。 展覧会ではこの『暮しの手帖』での仕事を中心に、学生新聞の編集に携わった東京帝国大学時代の活動、戦時中の大政翼賛会と関わる仕事、他社での単行本の装幀まで、『暮しの手帖社』の全面的な協力のもと、花森安治が遺した多数の貴重な資料等約750点を通じて、花森の思想と美意識を紹介する。Text by Mari HASHIMOTO雑誌から生まれた美しい暮らしArt

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