もし現代の世に龍馬夫妻在りせば、霧島ではこの宿にも滞在したのではないか。『忘れの里雅叙苑』。創業は1970年(昭和45年)。近隣で取り壊す予定のあった茅葺き古民家を譲り受け、ていねいに解体して敷地内に運んだ。それを組み立て、補修をほどこし、徐々にその数を増やしていった。現在は10棟(10室)がほどよい間隔で立ち、ひとつの「村」景色を形成している。 苑内には、数羽のニワトリが放し飼いにされている。スタッフが通ろうが宿泊客が近寄ろうが、おもねるでもなく、威嚇するでもない。われ関せずと歩を進め、水鉢にくちばしを突っ込んで喉を潤し、また気まぐれに歩き去る。 水屋(台所)も独立した棟になっており、その棚にはカブやキャベツ、ネギなどの新鮮な野菜が並べられている。スタッフは湧き水で野菜を洗う。水は見るからに清冽で、キンと冷えているのがわかる。木漏れ日がそこに差し込み、水は光を受けていっそう透き通った輝きを見せている。 使われる食材は90パーセント以上が自給自足で、野菜は無論、有機&無農薬栽培。そのため、人が食べる分としては収穫した3割ほどしか得られない。虫食いなどでやられてしまうからだ。人の口に入らない野菜は、自社が運営する「ニワトリ牧場」で鶏たちの餌と『忘れの里 雅叙苑』にて。 大切なものだけは忘れない 38野菜一つ一つに生気がみなぎっている。それを噛みしめ、胃の腑に収めることで、食べた側にもふつふつとエネルギーが湧いてくる。究極のオープンキッチンでもある水屋からは、焼き立ての料理も供される。左は、系列の宿泊施設『天空の森』の敷地内にある自家の畑。ここから収穫された野菜が『忘れの里 雅叙苑』にも運ばれてくる。右が、本文中に記したニワトリ。今年は酉年でもあるから、訪れた人に幸せをもたらしてくれるよう祈りたい。Special FeatureThe Towns and Times of Ryoma忘れの里 雅叙苑 霧島市牧園町宿窪田4230 電話0995-77-2114霧島
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